この記事のサマリー
・「一視同仁」は、すべての人を差別なく平等に愛する意味です。
・読み方は「いっしどうじん」で、韓愈の文章に由来します。
・座右の銘にした場合、誰に対しても誠実に向き合う姿勢を表せます。
「一視同仁」という四字熟語を、座右の銘やスピーチで見かけたことはありませんか? 漢字からは何となく徳を感じさせる言葉ですが、実際にどんな場面で使えばいいのか迷う人は少なくないはずです。
似た言葉との違いや、使うときに気をつけたい表現まで知ると、この言葉の印象は少し変わります。意味や由来、例文を通して、日常や仕事での自然な使い方を見ていきましょう。
「一視同仁」とは?
まずは、意味から確認します。
意味
座右の銘として選ばれることもある「一視同仁」。読み方は「いっしどうじん」です。
「一視」は同じように見ること、「同仁」は同じように人を思いやることを表します。つまり「一視同仁」とは、すべての人を差別なく平等に愛すること。相手の立場や関係性によって態度を変えず、分け隔てなく接する姿勢を表す言葉です。
座右の銘として使う場合は、「誰に対しても誠実に向き合いたい」という自分の姿勢を示す表現になります。
辞書では次のように説明されていますよ。
いっし‐どうじん【一視同仁】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《韓愈「原人」から》すべての人を差別なく平等に愛すること。
由来
由来は、中国・唐代の文学者であり思想家でもあった韓愈(かんゆ)の文章『原人』にある一節とされます。
「一視」は同じように見ること、「同仁」は同じように思いやること。そこから、「人を分け隔てなく見て、平等に思いやる」という意味で使われるようになりました。
韓愈は唐宋八家の一人に数えられ、儒教を重んじた人物としても知られています。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)

使い方を例文でチェック!
「一視同仁」は、座右の銘や行動指針として使われることもある言葉です。では、日常ではどのように用いればいいのでしょうか? 身近な人間関係から、国籍や文化の違いを意識する場面まで、例文で確認していきましょう。
「先生は、どの生徒にも一視同仁の態度で接してくれます」
生徒に接するとき、特定の人だけをひいきしたり、反対に距離を置いたりしない姿勢を表す例文です。偏見なく一人一人に向き合う先生は、生徒からも信頼されやすい存在といえるでしょう。
「人を評価するときこそ、一視同仁に見ることが大切です」
勤務実績や成績、研究成果などを評価する場面では、相手との関係性や先入観に左右されない姿勢が求められます。「一視同仁に見る」は、誰かを特別扱いしたり、不当に低く見たりせず、同じ目線で向き合うという意味で使うと自然です。
「マナーをわきまえつつ、彼女は誰に対しても態度が変わらない。一視同仁をモットーにしているそうだ」
国籍や性別、立場、背景にかかわらず、一人ひとりに分け隔てなく接する姿勢が伝わる例文です。「一視同仁をモットーにしている」とすることで、誰に対しても誠実に向き合おうとする考え方を表せます。
「リーダーとして重要なのは、一視同仁の考え方だ」
リーダーには、特定の人だけを優遇せず、メンバー一人ひとりに分け隔てなく向き合う姿勢が求められる場面があります。「一視同仁の考え方」は、公平さだけでなく、相手を同じ目線で尊重する姿勢を表す言葉として使えます。

「私の夢は、一視同仁の心で世界中の人と仲良くすることです」
国籍や文化の違いを越えて、多くの人を分け隔てなく尊重したいという思いを表す例文です。改まった場面では、「一視同仁の心で、世界中の人と向き合いたい」と言い換えると、言葉の意味により近くなります。
類語や言い換え表現は?
「一視同仁」に近い表現には、すべての人を平等に見る、分け隔てなく接する、広く人を思いやる、といった意味を持つ言葉があります。ただし、語によって重点は少しずつ異なります。代表的な表現を見ていきましょう。
怨親平等(おんしんびょうどう)
仏教の言葉で、自分に害をなす者と、自分に親しみを示す者とを差別しないことを表します。敵味方を分けずに供養する場面などで用いられる語です。「一視同仁」と同じく、相手によって見方を変えない点で近い表現といえます。
兼愛説(けんあいせつ)
中国戦国時代の思想家・墨子(ぼくし)の「兼愛思想」に通じる表現です。「兼愛説」は、自他の区別なく広く人を愛すること。「一視同仁」と同じく、相手によって愛情や態度を変えない考え方に近い言葉です。
公平(こうへい)
「公平」は、判断や行動、扱いが一方に偏っていないことを表します。「一視同仁」のように「平等に愛する」という意味までは含みませんが、えこひいきせず、誰に対しても同じ基準で向き合うという点では近い表現です。
「公平無私(こうへいむし)」は、公平で、個人的な利益や感情を交えないことを意味します。評価や判断の場面では、「一視同仁」とあわせて覚えておきたい言葉です。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)

対義語は?
最もぴったりくるのは、「依怙贔屓(えこひいき)」でしょう。日常でもよく使われますね。意味は、「自分のお気に入りの者や関係者だけの肩を持つこと」。
よく「贔屓」だけでも使われますが、これは「気に入った者を特に引き立てること」で、悪い意味ばかりではありません。
例えば、「先生はあの生徒ばかり贔屓にする」は、「あの生徒ばかりを引き立てようとするので、公平ではない」というよくない意味になり、「私はあの店を贔屓にしている」なら、「私はあの店がとても気に入ってよく行っている」という応援の意味になります。
「依怙」が付くことで、いい印象はなくなり、「一視同仁」とは正反対の言葉になるわけです。そこを理解して使い分けるようにしましょう。
英語表現は?
では、「一視同仁」は英語でどのように表現できるのでしょうか?
思想や信条としての「一視同仁」に近い表現には、“universal brotherhood” があります。「人類みな兄弟」という考え方に近く、広く人を愛する姿勢を表したいときに使いやすい表現です。
(例文)
He is an advocate of universal brotherhood.
(彼は人類みな兄弟であると説いている=彼は一視同仁の考え方を大切にしている。)
一方、評価や判断の場面で「偏りがないこと」「公平であること」を表したい場合は、impartiality が自然です。
(例文)
He showed impartiality.
(彼は公平性を示した。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
「一視同仁」に関するFAQ
ここでは、「一視同仁」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q. 「一視同仁」とは、どんな意味ですか?
A. 「一視同仁」は、すべての人を差別なく平等に愛することを意味します。相手の立場や関係性によって態度を変えず、分け隔てなく接する姿勢を表す四字熟語です。
Q. 「一視同仁」の読み方は?
A. 読み方は「いっしどうじん」です。
Q. 「一視同仁」は座右の銘として使えますか?
A. 使えます。座右の銘として使う場合は、「誰に対しても誠実に向き合いたい」「相手によって態度を変えたくない」という姿勢を表せます。
最後に
「一視同仁」は、相手を決めつけず、分け隔てなく向き合う姿勢を思い出させてくれる言葉です。とはいえ、いつも完璧でいようと身構える必要はありません。
家族や友人、同僚との何気ない会話の中で、少しだけ同じ目線に立ってみる。そんな小さな心がけから、人との距離はやわらかく変わっていくのかもしれませんね。
TOP・アイキャッチ画像/(c) Adobe Stock



