四字熟語「牽強付会」の意味・読み方と語源
「牽強付会」という文字面を見て、正確な読み方がわかる人はどれだけいるでしょうか? ましてや意味ともなると、正確に把握している方は少ないでしょう。まずは正しく意味を理解しましょう。気になる語源とともに解説します。
「牽強付会」は相手を批判的するときの言葉
「牽強付会」は「けんきょうふかい」と読み、「牽強附会」と書かれることもあります。意味は、「道理に合わないことを、自分の都合のいいように無理にこじつけること。またはその様子」です。漢字や読み、意味もちょっと難しいですが、要は自分勝手な主張ばかりをする、事実を曲げてでも自分の都合のいいようにする、ということで、ポジティブなイメージはあまりありません。
主に相手のやり方や考え方を批判したり、反省を求めたいときに使われる四字熟語です。
語源は? 出典は朱子の『朱子語録』
「牽強付会」の出典は、中国・宋の時代の儒学者・朱子(しゅし)の著作『朱子語録』六十七章。牛を紐で縛ってむりやりに動かそうとしている描写で、「牽強付会」が使われています。そんなことをしても道理に合わないのに、強引に行なおうとする様子を表しているのです。
ちなみに、「牽強」は道理に合わないことを無理にこじつけること、「付会」には無理に関係づけることやつなぎ合わせること、という意味があります。漢字の意味を知ると、「牽強付会」がいかに道理に合わないことを、強引に通そうとする状況かがよくわかりますね。
使い方を例文でチェック!
意味や語源を理解したなら、次は正しい使い方をマスターしましょう。気をつけたいのは、いい意味で使われることはないということを知っておくこと。その上で、相手を批判したり反省を促す場面で使う言葉です。そのいくつかのパターンを紹介しましょう。
1:「その主張は牽強付会というものですよ」
あなたの言っていることは道理に合わない、筋が通らないですよ、と指摘する表現です。
2:「牽強付会ばかりしていると、人から敬遠されるよ」
事実をゆがめたり、例文1のようなことばかりしていると人から敬遠されるよ、という意味です。相手に反省をしてほしいときに使うといいですね。
3:「いつもながら、あの政治家の牽強付会の説にはホトホトあきれるね」
あきれるほど自分に都合のいいことばかりを述べている様子です。この例文のように、牽強付会を形容詞として使うこともでき、例文1を「牽強付会の主張」とすることもできますよ。
4:牽強付会が得意な〇〇さんに悩まされています
ビジネスでもプライベートでも、何でも自分の都合のいいように理屈をつける人が周囲にいると本当に悩まされすね。
類語や言い換え表現は?
いいイメージのない、「牽強付会」を言い換えるとしたらどのような言葉になるのでしょうか。代表的なものは2つです。ただし、「牽強付会」とはニュアンスが異なりますので、その違いをしっかりとわかった上で使い分けるようにしましょう。
1:我田引水(がでんいんすい)
漢字の通り、自分の田に水を引く、ということから、「自分の都合のいいように言ったりやったりすること」。我が田に水を引く、ともいいます。
「牽強付会」が、自分のいいように無理にでもこじつけたりすることなのに対して、「我田引水」は、他人のことは考えず、意図的に自分の都合のいいように言ったりやったりする、自己中心的、というイメージです。
(例文)
「その理屈は我田引水ではないでしょうか」
その理屈は自己中心的なものなので、(相手のことも考えて)反省してほしい、再検討してほしいときの例文です。「我田引水はよくないよ」と戒めにも使えます。
「我田引水ではありますが、市場調査のデータに基づいて戦略を練りましょう」
何かを行なったり新しく作り上げるときに、前例やすでにあるデータを参考にする場合、都合のいいやり方ではあるけれど、という前提で提案をすることがあります。このように「我田引水」はケースバイケースで、必ずしも悪いイメージだけで使われる言葉ではありません。
2:漱石枕流(そうせきちんりゅう)
見てわかるとおり、夏目漱石のペンネームはここから付けられました。言葉の意味は、「負け惜しみの強いこと」「自分の失敗を認めず言い逃れをすること」。石に漱ぎ(くちすすぎ)流れに枕す、ともいいます。漱石は頑固者や意地っ張りのイメージで、これをペンネームにしたようです。
ちなみに「牽強付会」が、筋が通らないことでも無理に通そうとすることなのに対して、「漱石枕流」は、負けを認めたくないためにあれこれ言い逃れをするという点が違っています。
(例文)
「試合に負けたのをアウェイだったからというのは漱石枕流だよ」
試合に負けたのを自分たちの実力不足と認めず、相手に地の利があった、相手への大声援に気後れした、など環境のせいにするのも負け惜しみですよね。つまり「漱石枕流」といえます。
「漱石枕流するのではなく、まずは間違いを認めようよ」
間違いを認めず聞き苦しい言い訳や言い逃ればかりしている人を戒める例文です。
対義語は?
「牽強付会」に明確な対義語は見当たりません。こじつける、という意味で考えると「正論」がそれにあたるでしょうか。「正論」とは、「道理に合った正しい意見や論議」ですから、「道理に合わない」の対にもなりますね。
「あなたの言っていることは牽強付会です」を反対の言葉にすると、「あなたの言っていることはまさに正論です」となります。
反対の意味を持つ言葉としては、シンプルに「道理に合う(かなう)」「筋道が通っている」などがあげられます。人の行ないや物事の道理が正しいという意味ですね。
最後に
「牽強付会」が使われる場面は、相手の言動を批判的にとらえて指摘するときや、戒めたいとき。また、この言葉を理解している相手でないと伝わらないため、使える場面はかなり限定的と言えるでしょう。ここぞ、というときのため知識のひとつとして覚えてみてくださいね。
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