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この記事のサマリー
・「時節柄ご自愛ください」は、季節や社会状況をふまえて相手を気づかう表現です。
・「季節柄」の違いは、「時節柄」は時期だけでなく状況も含む点です。
・メールの締めくくりにも、ふさわしい表現です。
ビジネスメールや手紙で見かける「時節柄」。使い慣れない人にとってはどこか難しい感じがして、不安を感じることもあるでしょう。
この記事では、辞書に基づいた情報をもとに、「時節柄」の意味・使い方・言い換え表現をわかりやすく整理していきます。
「時節柄」の読み方と意味を確認
まずは辞書に基づいて、「時節柄」の意味や、語の成り立ちを確認していきましょう。
「時節柄」読み方と意味
「時節柄」は「じせつがら」と読みます。辞書の記載を確認しましょう。
じせつ‐がら【時節柄】
一[名]時節にふさわしいこと。時分柄。
「―の新茶は香(かおり)は高くとも」〈藤村・夜明け前〉
二[副]時節が時節なので。時分柄。「―早めにお召し上がり下さい」「―おからだを大切に」
「時節柄」は、時期や状況にあっていることを意味。「時節柄、お体を大切に」のように、相手を気づかう言い回しとして用います。
「時節柄」の使い分け
「時節柄」は名詞としても副詞としても使うことができます。
「時節柄」を名詞として使う場合は、「その時節にふさわしいこと」を指します。
例えば、「時節柄の新茶」という表現は、「春に摘まれた、その年最初のお茶」のように、その季節ならではの品物を意味します。
一方、副詞としての使い方は、「時節柄〜」と文頭に置き、その時期特有の条件や状況を添える形で用います。例えば、「時節柄、お茶がおいしいですね」といった表現は、「この季節だからこそ、お茶がおいしく感じられる」というように、時期がもたらす点に焦点があたります。
類語「季節柄」との違い
「時節柄」の類語に「季節柄」があります。
「季節柄」も「時節柄」と同様に、副詞として「こういう季節だから」という意味で使う言葉です。四季に応じた自然の影響に焦点をあてる特徴があります。
一方「時節柄」は、季節に加え、その時期特有の社会的な背景や世情を含む場合にも使うことができる点が異なります。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』(小学館)

「時節柄」の使い方
「時節柄」は、相手の体調や健康を気づかう場面でよく用いられます。なかでも「時節柄ご自愛ください」は、手紙やメールで頻繁に使い、相手に対する配慮を示す一文として定着しています。
ここでは、「ご自愛」の意味を確認し、言い換え表現とともに、使い方を紹介します。
「時節柄ご自愛ください」の意味
「ご自愛」は、「自分の健康を大切にすること」を意味し、「時節柄」と組み合わせることで「このような季節・状況ですので、どうぞお体を大切に」という相手への配慮を表わす文になります。
例:「寒さが一段と厳しくなってまいりました。時節柄どうぞご自愛ください」
「時節柄、ご自愛くださいませ」の言い換え例
「時節柄ご自愛ください」の代わりに、以下のような言い回しもあります。参考にしてください。
・「時節柄、風邪などひかぬよう、お気をつけください」
・「時節柄、お体を大切になさってください」
どちらも手紙やメールの結びの言葉として使いやすく、相手への気づかいを表現することができます。
参考:『日本国語大辞典』、『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)

「時節柄」の実用的な例文集
「時節柄」を交えた文章は、相手への心づかいを示し、さまざまな場面で活用できます。ここでは、実際にビジネスメールなどで使え例文を見ていきましょう。
「時節柄、体調を崩しやすい頃かと存じます。どうぞお気をつけくださいませ」
この表現は、季節の変わり目や、気温・湿度の変化が大きい時期に合わせて、以下のような具体的な表現に展開して使うこともできます。
【冬】「時節柄、お風邪など召しませぬようお過ごしください」
【夏】「時節柄、熱中症などにご注意のうえ、ご自愛ください」
「このたびは温かいお心遣いを賜り、誠にありがとうございました。時節柄、お体を大事になさってください」
感謝の言葉に添えて使うことで、相手を気づかう温かい印象のやり取りができます。社内や親しい取引先には、より具体的な言葉を加えることで、結びの挨拶として心配りが伝わります。
改まった手紙では「ご自愛専一に」という表現を用いることも
特に改まった書簡では、「ご自愛専一(せんいつ)に」という結び文を用いる場合があります。
「専一」とは、「他を顧みず、ある物事だけに力を注ぐこと」を意味します。
そのため「ご自愛専一に」は、「健康を第一にしてお過ごしください」という意味の言い回しになります。
例文:「時節柄、どうぞご自愛専一にてお願い申し上げます」
参考:『デジタル大辞泉』、『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)
英語表現|「時節柄ご自愛ください」は英語でどう言う?
“Take care of yourself.” が「お大事に」という意味にあたります。季節の変わり目や健康を気づかうメールの結びなどに適していますよ。
また、相手への配慮をこめる場合は、以下のような表現も使うことができます。
例:
“It’s getting colder these days. Take care of yourself.”
(最近寒くなってきましたね。どうぞご自愛ください。)
“I heard you’ve been busy at work. Take care of yourself and don’t overdo it.”
(お仕事が忙しいと聞きました。無理なさらず、ご自愛ください。)
“Take care of yourself until we meet again.”
(またお会いする日まで、お元気でお過ごしください。)
特に「時節柄」を伝えたい場合は、”during” を用いて季節や状況を具体的に示すことができます。
“during” は「(特定の期間の)間中」「…の間に」を意味し、体調を気づかう場面でもよく用います。
例文
“Take care of yourself during this cold season.”
(寒い時期、ご自愛ください。)
“Wishing you good health during this season.”
(この季節、どうか健やかにお過ごしになれますように。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』、『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)

「時節柄」に関するFAQ
ここでは、「時節柄」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1.「時節柄ご自愛ください」は目上の人にも使えますか?
A. 丁寧な言い回しであるため、ビジネスシーンや改まった手紙でも目上の人に対して問題なく使うことができます。
Q2.「時節柄」の代わりに使える言い換え表現はありますか?
A. 「季節柄」「この時期」「寒暖差の激しい折」などに言い換えることができます。
Q3.「ご自愛ください」はメールだけでなく口頭でも使えますか?
A. 口頭でも使うことができます。
ただし、ややあらたまった響きがあるため、ビジネスの別れ際や目上の人との挨拶で使うのがいいでしょう。
最後に
「時節柄、ご自愛ください」は、相手を思いやる気持ちを伝えることができる挨拶の表現です。季節の変わり目や体調を崩しやすい時期に、手紙やメールにこの一言を添えることで、形式的なやり取りの中にも、温かみを添えることができますよ。
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