目次Contents
この記事のサマリー
・「以下」は基準を含み、それより下の範囲を指す。
・「校長以下社員一同」「以下略」など、総称や省略を表す意味もある。
・「以内」は基準を含む内側の範囲のこと、「未満」は基準を含まず少ない数である。
ビジネスシーンで頻繁に目にする「以下」という言葉。会議の資料、契約書、料金の案内など、あらゆる場面で目にしますよね。そのたびに「あれ?この数字は含まれる?」と迷ってしまうことはありませんか?
この記事を読めば、「以下」の基本を押さえることができるので、もう使い方に迷うことはありません。正しい意味を分かりやすく解説し、混同しやすい「未満」や「以内」との違いも整理しましょう。これで、ビジネス文書やメールでも安心して「以下」を使えるようになりますよ。
「以下」の基本をチェック|意味を整理
「以下」という言葉は、私たちの日常からビジネスシーンまで、幅広い場面で使う言葉です。いくつかの意味があり、場面によって使い分ける必要があります。
「以下」の基本定義
辞書の情報をもとに、基本的な意味を確かめましょう。
い‐か【以下/×已下】
1 数量・程度・優劣などの比較で、それより下の範囲であること。数量では、基準を含んでそれより下をいい、その基準を含まないときは「未満」を使う。「室温を一八度―に保つ」「六歳―は無料」「待遇は世間並み―だ」「あいつの理解力は小学生―だ」⇔以上。
2 それより後に述べること。下記。「―省略」⇔以上。
3 代表となるものを含んで、それに関連するすべてのもの。「校長―教職員一同」
4 「御目見(おめみえ)以下」の略。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
まずは基本として、「以下」とは、基準となるものを含み、それよりも下を指す言葉だと覚えておきましょう。

「以下」に含まれる多様な意味
ここからは、辞書の内容を、さらにわかりやすく整理します。
「以下」とは、大きく分けて3つの意味があります。
1. 数量や程度の範囲
「20歳以下」「100円以下」のように、基準となる数値や程度を含んで、それよりも小さい範囲を示す。
2. 代表を含む集合
「校長以下教職員一同」のように、ある代表者を含み、それに付随する全体を指す。
3. 文書や記載の参照
「詳細は以下をご覧ください」「以下の通りです」のように、この後に続く文章や内容を示す。
さらに歴史的には、「御目見(おめみえ)以下」の略として用いた例もあります。江戸時代には、将軍に直接謁見できる身分の武士を「御目見以上(おめみえいじょう)」、謁見の資格がない武士を「御目見以下(おめみえいか)」と呼んで区別していました。「以下」を身分の境界を示す言葉として使っていたのです。
現在、この意味で「以下」を使うことは少ないため、主に数値や文章、総称を表す、3つの用法が中心となります。
記号で正確に表す「≦」
数値の範囲を数式で示すときは、「≦」を使います。読み方は「小なりイコール」です。こちらも、辞書で内容を確認しましょう。
しょうなり‐イコール〔セウなり〕【小なりイコール】
数学で、左辺の値が右辺の値以下であること、すなわち等しいか、より小さいことを表す不等号。日本の学校教育ではふつう「≦」という記号を用いる。→大なりイコール
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
記号「≦」の意味は、「左辺が右辺以下であること、つまり等しいか小さいこと」です。例えば、「x≦10」と表記すれば、x が10以下であることを明確に示せます。
例文で確認!「以下」の具体的な使い方
実際の文章や会話の中で「以下」をどのように使うのか、例文をとおして確認しましょう。
ビジネスシーンでの「以下」の使い方
ビジネスメールや資料では、「以下」が頻繁に登場します。
「この製品の売上が全体の10%以下にならないよう改善を続ける」
この場合、「10%」という基準を含んで、それよりも少ない範囲を指します。数値の報告や目標設定でよく使う、代表的な使い方ですね。
「これ以下は問題にしない」
一方で、この例文のように、優劣・程度を比較する際にも「以下」は使うことができます。数量の場合は基準を含みますが、優劣や程度の比較では基準を含まないことが多いです。したがって、この例文の場合も、「これ」は含みません。
日常会話・文章での「以下」の使い方
「以下」は、話し言葉や文章でも頻繁に登場します。具体的な例文で確認しましょう。
「それ以上でもそれ以下でもない」
この表現は、「特別に優れているわけでもないけれど、かといって悪いわけでもない」という、ちょうど中間の状態を伝える場合に便利な表現です。
「この件については、以下のとおりです」
文章で何かを説明するときは、「以下のとおり」と続けて、その後に具体的な内容を述べます。これは、メールや案内文などで文書の流れを整理し、読み手に「ここから詳細が始まりますよ」と示す役割を果たします。
「以下略」
長く続く文章や列挙を省略したいときには「以下略」という表現を使います。これ以上詳細を書き連ねる必要がないことを明確に伝える、便利な表現ですね。
「社長以下社員一同」
代表者(この場合は社長)を含めた関係者全員をまとめて表すときに「以下」を用いた例です。挨拶文や案内状などで、組織全体として感謝や決意を伝える際に使われます。

「以下」「以内」「未満」の違いをすっきり整理
「以下」と混同しやすい「以内」「未満」という言葉についても、確認していきましょう。
「以下」との違いは、「基準の数を含むかどうか」に注目してください。特に、契約書や規約など誤解が許されない場面では、正確な理解が欠かせません。
「以下」と「以内」の違い
「以下」と「以内」は、どちらも基準の数を含みます。まずは「以内」の意味を辞書で確認しましょう。
い‐ない【以内】
1 ある範囲の内側。「境界線―」⇔以外。
2 時間・距離・数量・順位などで、ある基準を含んでそれよりも小さい範囲。「一〇日―には帰る」「一万円―の買物」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「以下」は基準となる数値や程度を含み、それより下を表します。英語だと“under”です。
例:「10以下」=10を含めて、それより小さい数(10、9、8、…)。
一方、「以内」はある基準の内側に収まる範囲を指します。英語だと“within”です。
例:「10分以内」=10分を含めて、それより短い時間(10分、9分…0分)。
「以下」と「未満」の違い
「未満」は基準の数を含まないため、「以下」とは決定的に内容が異なります。辞書で内容を見てみましょう
み‐まん【未満】
ある数に達していないこと。ある数を境に、ある数そのものは含めず、それより少ない数であること。「一〇円―は切り捨てる」「一八歳―の者」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
年齢制限や金額など、具体的な数値条件で「未満」の意味を間違えると、対象範囲が大きく変わってしまうので注意しましょう。
「18歳以下」
「18歳を含み、それより下の年齢」を指します。
「18歳未満」
「18歳は含まれず、17歳までの年齢」を指します。
実務で混乱しやすいケース
ここまで見てきたように、契契約条項や試験条件では、「基準を含むかどうか」で混乱しやすく、注意が必要です。
例えば「売上が100万円以下の事業者」と「100万円未満の事業者」では、100万円ちょうどの事業者が対象に入るかどうかが変わります。わずかな違いですが、制度の適用や合否判定に直結するため、見逃せません。
このような場面では、必ず正式な表記を確認し、思い込みで判断しないことが大切です。
参考:『類語例解辞典』(小学館)

「以下」に関するFAQ
ここでは、「以下」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「以下」は基準を含みますか?
A. はい。
数量を示すときは基準を含みます。ただし、優劣を比較する文脈では含まないニュアンスで使うこともあるため、文脈に応じて判断が必要です。
Q2. 「以下」と「以内」は同じ意味ですか?
A. いいえ。
どちらも基準を含みますが、「以下」は基準線より下、「以内」は基準の内側の範囲を指します。
Q3. 「以下」と「未満」の違いは?
A. 「以下」は基準を含みますが、「未満」は含みません。
例えば「18歳以下」は18歳を含みますが、「18歳未満」は17歳までを指します。年齢制限や試験条件では混同しないことが大切です。
最後に
「以下」は、数値の範囲から文章の省略まで、幅広く使う言葉です。しかし、「以内」や「未満」との違いを理解していないと、誤解を招くことがあります。
特に、契約書や公的な文書では、「基準を含むか」どうかが重要です。迷った時は、必ず辞書や正式な表記を確認しましょう。言葉を理解し、正確に使うことで、あなたの信頼性は高まります。記事の学びを、ぜひ日々の言葉づかいに生かしてくださいね。
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