「天涯孤独」とは?意味と正しい使い方
何となく寂しいイメージのある「天涯孤独」という言葉。耳にすることは多いものの、きちんとした意味や正しい使い方まで理解できているでしょうか?
「天涯孤独」の意味
「天涯孤独」とは、「身寄りがひとりもいない状況」を指す言葉です。この場合の「身寄り」は肉親や兄弟、親戚など血縁関係のこと。
「天涯孤独」は本来、「頼れる血縁のいない状況で孤独に生きる」という意味として使われてきました。ただ、最近では意味の幅が広がり、血縁に限らず友人や親友を含め、「頼れる存在がまったくいない」状況を表す言葉として使われるようになりました。
「天涯」には「地上から遠く離れた土地・異郷」という意味もあるため、ただ単にひとりで生きるのではなく、「故郷から遠く離れた土地で孤独に暮らす」というニュアンスも含まれています。
「天涯孤独」の正しい使い方
(1)あの人は天涯孤独の身の上だから優しく接してあげるんだよ。
(2)天涯孤独の人は一見すると陰があるが、人を惹きつける不思議な魅力がある。
(3)正義のヒーローには天涯孤独の境遇が多い。
「天涯孤独」の類義語は?
「天涯孤独」のように、身寄りがなく孤独に生きるといった意味の言葉を2つご紹介します。
ひとりぼっち
「ひとりぼっち」は「天涯孤独」よりもややフランクなニュアンスがあります。「ひとりぼっち」の語源は「ひとり法師(ぼうし)」で、法師とは僧侶や僧侶のように徳が高い人を表しています。
例文:彼は身寄りがなく、ひとりぼっちだ。
根無し草
「根無し草」とは文字通り、根の張っていない草のようにあちこちに流される生き方や、そうした生き方の人を表す言葉です。「根無し草」は本来、不安定な生き方を表す言葉であり、孤独というニュアンスはあまり強くありません。ただ、「根無し草」は人とのつながりを短期間で断ち切っていく生き方であることから、「天涯孤独」の類義語としても使われています。
例文:あの人は根無し草だから、あまり思い入れを持つと寂しい思いをするよ。
「天涯孤独」の対義語はある?
「天涯孤独」の意味を裏返すと、「人との縁に恵まれている様子」、「人とのつながりを積極的に持とうとしている人」になります。「天涯孤独」の意味を踏まえ、対義語を2つご紹介します。
比翼連理(ひよくれんり)
「比翼連理」は、運命で結ばれたかのように仲の良い男女(またはパートナー関係)を表す言葉です。中国の故事に伝わる「比翼の鳥」が語源で、互いに目と翼をひとつしか持っておらず、互いを補い合うように翼をぴったり合わせて連なって飛ぶことからこの四字熟語が生まれました。
例文:彼と私は比翼連理の運命だと感じたから結婚を決めたのよ。
八方美人
「天涯孤独」の意味を「人とのつながりを持たない生き方」とするなら、対義語としては「八方美人」があてはまります。「八方美人」には「誰にでもとにかくいい顔をする」というニュアンスがあり、現代ではネガティブな意味で使われることのほうが多いかもしれません。ただ、本来は「誰からも好かれる素質がある人」という意味の言葉であり、もともとはポジティブな意味で使われていました。
例文:彼女は八方美人だと言われているけれど、人を振り向かせる才能は見習うべきだと思うよ。
天涯孤独は寂しい?どう生きればいい?
身寄りがなく孤独に生きるという意味の「天涯孤独」という言葉。「天涯孤独にはなりたくない!」と感じる方も多いかもしれませんが、今、家族や友人に恵まれている人でも何らかのアクシデントによって天涯孤独になってしまうことは考えられます。
やむを得ぬ事情で「天涯孤独」になってしまった場合、どのように生きていけばいいのでしょうか。
病気や事故、老後の生活が心配
「天涯孤独」の身の上でまず心配となるのが病気や事故、老後です。身寄りがいない状況では、病気や事故で動けなかったとしても面倒を見てくれる人がいないので、暮らしそのものに支障をきたします。
また、病院や介護施設に入る際もハードルがあります。病院では手術の際、親権者や配偶者の同意が求められますし、多くの介護施設では入居時・退去時に保証人が必要です。さらに、賃貸物件によっては保証人なしでは入居できないところもあります。
保証人問題を解消するため、最近では民間企業による「保証人代行サービス」などが増えています。病気や事故だけでなく、いざという時の備えとしてこうしたサービスについて調べておくのもひとつの方法です。
趣味や興味のあるものを探す
人とのつながりを深めるのがもともと苦手な性格なら、ひとりでの生き方を充実させるのもひとつ。子どもの頃に好きだった趣味をあらためて始めたり、まったく新しい分野を開拓してみたり……自分ひとりで楽しめるものがあれば人生そのものも潤います。
趣味を通して新たな交友関係が生まれ、たとえ血縁関係がいなくなったとしても、心身ともに頼れる存在ができるかも。
保険や貯蓄などを見直す
直接的な言い方になってしまいますが、やはりお金はいくらあっても困ることはありません。将来頼れる人がいなくなったときでも、ある程度の貯蓄があれば精神的のも安心できますし、余裕を持って医療や福祉サービスを受けることができます。
今入っている保険を貯蓄型のものに変えたり、積み立て投資などで無理なく老後の資金を貯めておくなど、お金のことを見直してみるのもいいかもしれません。
まとめ
「天涯孤独」というと少し大げさなイメージかもしれませんが、ふとしたきっかけで人とのつながりが切れてしまうことは誰にでも起こり得ます。大きな病気や事故など、万が一のときには不安になってしまいますよね。
「何があってもおかしくない」と考え、無理なくできることから将来に備えておくのも良いかもしれません。
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コマツマヨ
WEBサイトライティングをメインに、インタビュー、コラムニスト、WEBディレクション、都内広報誌編集、文章セミナー講師など幅広く活動。