「人を呪わば穴二つ」ということわざの意味や由来は?
◆人を呪わば穴二つの意味
「人を呪わば穴二つ」。このことわざを聞いたことがある人は多いと思います。「呪い」という言葉が含まれるため、「暗い」「怖い」というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか?
「人を呪わば穴二つ」の意味は「人を呪えば自分も破滅する」。より詳しく言うと「他人を陥れようとしたり、その人の身に不幸が訪れるように願ったりするなど、他人に害を与えれば自分にも同じ報いが訪れる」です。そこから、「むやみに人を傷つけてはいけない」という教訓、戒めを与えることわざとなりました。
「人を呪わば穴二つ」の「穴」とは、死者を葬るために掘られる「墓穴」のこと。人を呪うという行為には「存在そのものを否定し、この世から消えてほしい」と願うほど、強い憎しみを持っていることを意味します。
「人を呪わば穴二つ」とは、そのように強力なマイナスの想いは自分自身にも何らかの影響を及ぼすことになるから覚悟しろ、と警告するためのことわざなのです。また、「人を呪わば穴二つ」は文語的な表現となります。そのため、「人を呪えば穴二つ」という言い回しがされることもありますよ。意味はどちらも同じです。
◆人を呪わば穴二つの由来
「人を呪わば穴二つ」は、ある役職に由来しています。それは古代から近代、特に平安時代に活躍したとされる「陰陽師」。「陰陽師」といえば、「妖怪退治」というイメージを持った人も多いかもしれませんね。
「陰陽師」とは元々、天文学や暦学に精通した占い師でした。やがて怨霊を鎮める呪術師として、地位を獲得した「陰陽師」。平安時代には時の権力者に依頼され、敵対者を呪殺する仕事も請け負うようになりました。
呪殺のリスクは大きく、相手側の「陰陽師」によって「呪い返し」を受ける可能性が存在します。この「呪い返し」を受けると、呪殺を請け負った「陰陽師」自身が命を落とす可能性がありました。そのため、呪殺の仕事を請け負った「陰陽師」は「呪い返し」で命を落とした時のために、自分用の墓穴を用意させたそうです。
呪殺が成功して相手が命を落とし、「呪い返し」によって「陰陽師」が命を落とせば死者は2人になります。その場合、墓穴が2つ必要になりますよね。ここから「人を呪わば穴二つ」という言葉が生まれたとされています。
人を呪わば穴二つの使い方を例文でチェック
「人を呪わば穴二つという言葉があるように、憎しみは不幸を生み出すだけだよ」
「人を呪わば穴二つ」はこのように、例えとして挙げられることが多いです。「人を呪わば穴二つ」の意味に「自身の身を滅ぼす」という意味があることから、「相手を思うからこそ止めたい」という時に例として挙げられやすい表現となります。
「あいつが憎くてたまらない。人を呪わば穴二つなんて言われても、それぐらいの覚悟はしている」
こちらも例えとして用いられていますが、先程とは異なり「自身が破滅することもいとわない」ほどの「覚悟の度合い」を表しています。このように「人を呪わば穴二つ」は「相手へ警告をするための例」以外にも、「覚悟の度合い」を表すことができるなど、様々な例えに使うことができますよ。
人を呪わば穴二つの類語は?
「剣を執る者は剣で亡ぶ」
この「剣を執る者は剣で亡ぶ」という言葉は、「マタイによる福音書26章52節」に載っている言葉です。「剣を使う者は敵を倒すことも多いが、いずれは剣によって倒される時が来る」という意味になります。
「自身が向けた感情はいずれ相手によって返されるため、武器ではなく感謝などの気持ちを向けるべき」という教えを伝えるための表現です。
「人を謀れば人に謀らる」
「人を謀れば人に謀らる」はその文字面からもわかるように、「人を貶めようとすれば、自分も人によって貶められる、ひどい目に遭う」という意味を持つ言葉。これらの表現は「反面教師」として用いられることが多いです。
「因果応報」
「因果応報」は類語であるものの、正確な意味は少々異なります。因果応報は「人は原因に応じた結果を受ける」という意味を持つ仏教の言葉です。「因果応報」という言葉には良い作用、悪い作用のどちらも含まれており、良い作用を「善因善果」、悪い作用を「悪因悪果」と表現します。
「人を呪わば穴二つ」は自身の呪いによって身を滅ぼすため、「因果応報」の中の「悪因悪果」に当てはまります。そのため、「因果応報」に含まれる「悪因悪果」の例が「人を呪わば穴二つ」の意味とイコールです。
人を呪わば穴二つの対義語は?
「目には目を、歯には歯を」
「目には目を、歯には歯を」とは、古代バビロニアを統治したハンムラビ王が発布した「ハンムラビ法典」の報復律を表す例えです。「誰かを傷つけた場合、誰かを傷つけたものと同等の罰を受けるか、相当の代価を受け取る必要がある」という意味を持ちます。
「人を呪わば穴二つ」に含まれる解釈で最も重要なのは、「むやみに人を害してはならないこと」です。そのため、「同等の復讐を行う」という「目には目を、歯には歯を」は対義語となります。
「肉を切らせて骨を断つ」
「肉を切らせて骨を断つ」とは、「自分の肉を切らせておいて、相手の骨を断つ」という「強敵を倒すための極意」として使われる言葉です。「少しの損害に対して致命傷で返す」という意味があるため、「人を呪わば穴二つ」と相対する言葉となります。
最後に
「人を呪わば穴二つ」について理解できたでしょうか? 意味を知らなければ怖いイメージを与えることわざですが、実際には「人を傷つけてはいけない」という戒めの言葉でした。
人に嫌なことをされたとき、同じ目に遭わせたいと思うことがあるかもしれません。そんな時は「人を呪わば穴二つ」の言葉を思い出しましょう。
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