社会人として働いていると、たとえこちらに非がなくても、立場上謝らなくてはならない場面があります。そうした時、「理不尽だな‥」と感じることもあるのではないでしょうか? 日常生活で当たり前に使われている言葉ですが、そもそもどんな意味を持つ言葉なのでしょう。そこで本記事では、「理不尽」の意味や使い方、類語、英語表現などを解説します。
理不尽とは?
まずは「理不尽(りふじん)」の意味を、一緒に確認していきましょう。
道理をつくさないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
辞書で調べると、「理不尽」は「道理に合わないこと」という意味になります。「道理」とは、「物事の正しい筋道」「筋が通っていること」。人としてこうあるべき、という正しい道のことを指します。つまり、「理不尽」とは、物事の常識や道理から外れた態度や行動のことと言えるでしょう。
理不尽なケースを例文でチェック!
「理不尽」は、自分自身に対して思うこともあれば、他人を見て「あの人は理不尽だな」と感じることもしばしば。ここでは、日常生活でよくある「理不尽なケース」とともに、例文を紹介しましょう。
1:今日は同僚のミスを自分のせいにされて、理不尽な目に遭ったよ。
こちらには非がないにも関わらず、怒られたり非難された経験はありませんか? 自分が起こした問題ならまだしも、そうでないなら「なぜ、私が?」と不満をもつこともあるでしょう。このように、他人のせいで自分まで害を被った時にも「理不尽」は使われます。
2:長時間にわたる上司からの説教は、あまりにも理不尽だった。
高い地位を持つ人や権力者が、立場の弱い人物を非難する時にも「理不尽」を使います。身近な例で言えば、上司が部下に対して強引な命令や指示を出したり、筋が通らない主張を押し付けたりすることもこれにあたるでしょう。このような不当な扱いは、パワハラとも言えるかもしれませんね。
3:気立のいい兄ではなく、イケメンの弟ばかりがモテるなんて、理不尽な世の中だな…。
恋愛において、無意識に他人と容姿や性格を比べてしまうことはありませんか? 特に若いうちは、見た目の華やかさや服装のセンスなどに気をとられて、モテる人とそうでない人との間に差が出てきてしまいがち。そのため、この例文のように、「世の中不公平だな…」と感じることもあるでしょう。
類語や言い換え表現とは?
「理不尽」と同じように「道理に合わないこと」を表す言葉には、「不条理」「不合理」「筋違い」などがあります。意味は同じですが、使う対象やニュアンスが異なりますので、正しく使い分けましょう。
1:不条理
「不条理(ふじょうり)」の意味は、以下の通りです。
1 筋道が通らないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。「―な話」
2 実存主義の用語。人生に何の意義も見いだせない人間存在の絶望的状況。カミュの不条理の哲学によって知られる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
罪のない人が罰せられたり、疫病で多くの人が亡くなるなど、世の中の道理と合わないことを「不条理」と言います。天災などの人間の力ではどうしようもない問題に直面し、絶望しているような状況です。「理不尽」が個人的な体験に使われるのに対して、不条理は世界情勢などの社会的なことに使われる傾向があるようでしょう。
(例文)
・その作家は、生涯を通じて世の中の不条理をテーマに小説を書いた。
・その王様は不条理なことをしもべに言いつけた。
2:不合理
「不合理(ふごうり)」の意味は、以下の通りです。
道理・理屈に合っていないこと。筋の通らないこと。また、そのさま。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「不合理」も、「道理や理屈に合っていないこと」を表します。「合理」とは、「論理的に正当であること」なので、論理的に矛盾があることを「不合理」と呼べるでしょう。一般的には、制度や規則に対して使われることが多いようです。
(例文)
・これを機に、そのような不合理な制度は撤廃するべきだ。
・その議員は、給与体系の不合理を是正した。
3:筋違い
「筋違い(すじちがい)」の意味は、以下の通りです。
1 ある物に対して斜めの方向に位置すること。すじかい。
2 道理にはずれた言動をするさま。
3 見当違い。おかど違い。
4 急激に無理な動きをして筋肉を痛めること。すじちがえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「筋違い」には、いろいろな意味がありますが、「理不尽」の類語としては2の意味が当てはまるでしょう。常識はずれのことを言ったり、一般的な常識からは外れた行動をとったりすることも「筋違い」と言えますね。
(例文)
・他社の商品をPRしてほしいと、筋違いな要求をされた。
・そんな苦情をこちらに持ち込むなんて、筋違いと言えるだろう。
英語表現
「理不尽」の直訳の英語は、「unreasonable」です。しかし、文脈や伝えたい気持ちによっては、別の単語を使ってみても良いでしょう。以下の英文を参考にしてみてください。
「unreasonable」は、「不当な、不合理な」「理不尽な」などの意味を持つ単語。値段などが法外で、道理に合わない場合などに使うことがポイントです。「I was offended by unreasonable demands from my supervisor. (上司から理不尽な要求をされて不快になった)」
また、自分だけが不当な扱いを受けていて理不尽だ… と感じる場合には、「不公平」を意味する「unfair」を使ってみても良いでしょう。日本語でも「その契約はアンフェアだ」と言ったりますよね。「It’s unfair that a woman can’t get a managerial position just because she’s a woman.(女性だからといって、管理職に就けないなんて不公平だ)」
最後に
日常生活を送っていると上司から叱られたり、恋人から八つ当たりされるなど「理不尽だな」と感じることもあるはず。もし客観的に見ても、理不尽な扱いを受けていると感じられることが多ければ、然るべきところに相談してみるのも良いでしょう。理不尽な環境から抜け出して、毎日を気持ちよく過ごせたら良いですね。
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