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バッファとは? 言葉の意味を確認
ビジネス用語として、「バッファを持たせる」「バッファを設ける」という言葉を聞くことがありませんか? 仕事で使う言葉は、意味を知ったうえで使いこなしたいですよね。
バッファとはもともとはコンピュータ業界で使われていた言葉で、データを一時的に保管する「保存領域」という意味で使われます。これは、英語の「buffer(衝撃を減らす、和らげる、緩和する)」に由来。「バッファー」という言い方もありますが、同じ言葉です。
ビジネスの場では、予期せぬ事態に備える「余裕」や衝撃を和らげる「緩衝」ということから、「時間・資源的なゆとり、余裕」という意味で使われます。
仕事をするうえで「バッファを持たせる」ことのメリットは?
バッファは、ビジネスを円滑に進めるために重要な要素です。バッファを持たせることで、予期せぬ事態に対応できたり、業務効率を高めたりすることができます。
これまで、5万人のキャリアサポートをし、成果を上げる仕事術などのセミナーを実施しているキャリアコーチの菊池啓子(きくち・ひろこ)さんに、ビジネスにおいてのバッファの大切さについてお話を伺いました。
「仕事をするときには、計画を立てたり、事前準備を怠らないようにしますよね。とはいえ、思い通りにいかないということも多々あります。もしかしたら起こるかもしれない、予期せぬ事態に対応できるように、時間や資源(予算や人員など成果を上げるために必要なもの)に余裕を持たせることは大事なこと。この余裕のことをバッファと呼びます。
バッファは、仕事のスケジュールや予算に設けたり、在庫や人員などの物理的なものに持たせたりします。すべてのことをギリギリで進めていくと、気持ちの余裕もなくなり、せっかくの実力も発揮できないという残念なことが起こる可能性も…。バッファがあれば、遅延やトラブルに対処できたり、業務効率を高めたりすることができます」(キャリアコーチ・菊池さん)
ビジネスシーンで「バッファ」はどのように使われる?
ビジネスにおいて「バッファ」という言葉が使われるときは、次の3つの事案があげられます。例文で紹介しますね。
1:スケジュールや予算
スケジュールや予算に余裕を持たせるために「バッファ」が使われることもあります。
<例文>
「納期に間に合うよう、あらかじめスケジュールにバッファを持たせておきました」
「予算はバッファを含めた金額にしてあります」
2:在庫や人員などの物理的なもの
在庫管理や人員計画でも「バッファ」が登場します。
<例文>
「在庫管理では、発注量の急な変動に備えてバッファを確保する」
「人員計画にバッファを持たせていたおかげで、欠員によるダメージがなかった」
3:仲介やサポートなどの役割
「緩和する」という意味から派生して、仲介役やサポートなどの役割を指すこともあります。
<例文>
「このプロジェクトは多くの部署との提携が必要なので、バッファになって進めてください」
「彼女はリーダーとして、上司と部下の間のバッファとして機能している」
仕事でバッファを設けるときに注意すること
バッファは、仕事を効率的かつ効果的に進めるために役立つ要素ですが、適切な量と管理方法が必要です。仕事でバッファを持たせるときに注意する3つのポイントを解説します。
1:バッファを持たせすぎない
バッファは、予期せぬ事態に対応できる余裕の時間や資源のことですが、持たせすぎると無駄が生じる可能性があります。バッファを持たせるときは、過去の経験やデータを参考にして、必要最低限にすることが大切です。
2:バッファを有効活用する
バッファは、単に余裕を持つためだけではなく、仕事の質や効果を高めるためにも活用できます。例えば、スケジュールにバッファを持たせていると、作業内容の見直しや改善、追加の提案などが可能です。また、時間に余裕があるので、自己研鑽やチーム内で目線合わせを綿密に行うことで、スキルアップやコミュニケーション力の向上にもつながります。
3:バッファを一元的に管理する
多くの人が関わるプロジェクトでは、バッファはプロジェクト全体や各工程の最後に設けるのが効果的です。バッファをそれぞれの作業に分散させて設けると、その分だけ作業時間が長くなり、プロジェクト全体の効率が低下するかもしれません。バッファは一元的に管理し、どれだけ残っているかを定期的に確認することで、プロジェクトの進捗状況や納期に対する危険度を把握できます。
バッファを有効活用するための手法「CCPM」とは?
バッファを持たせすぎると、無駄が生じる可能性があります。そこで、バッファを有効活用するために、「CCPM」という手法が有効です。CCPMとは、「Critical Chain Project Management」(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)という英語の頭文字をとったものです。
CCPMの特徴は、仕事の各タスクの所要時間を見積もったうえで、その時間から少し削ってスケジュールを立てておく手法です。ガントチャートなどの表を使って管理をし、削った時間をバッファとして、仕事全体や各工程の最後に設けます。これにより、余裕をもって動くことができ、不測の事態も対応できるので、仕事やプロジェクトの目標達成率を高めることにつながるわけです 。
CCPMのメリット
CCPMを使うことのメリットを解説します。
●スケジュールを可視化できる
作業時間の見積もりをガントチャートなどの表などでまとめておき、バッファ(時間の余裕)をプロジェクト全体や各工程の最後に設けます。バッファの残量を明確に提示することで、進捗や納期の危険度を把握できますよ。
●作業の優先順位を判断できる
プロジェクト運営や個別の作業においても、最も時間がかかるタスクの流れに注意を払います。この流れを見ながら、バッファが減ったときには、リソースを集中させたり、他と協力したりして対策するわけです。
CCPMを仕事に活用する3ステップ
仕事に活用するために、ガントチャートなどの表で可視化・明確化をしつつ、次の3ステップを意識しましょう。
●ステップ1:仕事全体の各タスクの所要時間を見積もり、バッファを割り当てる
●ステップ2:進捗状況とバッファの残量を定期的に確認する
●ステップ3:バッファが減少した場合は、優先順位の高いタスクにリソースを集中させたり、他部署や他のメンバーと協力するなどの対策を講じる
おわりに
バッファは変動するものです。よりよい成果を上げるためにも、常に確認をして柔軟な対応をしていきましょう。
TOP画像/(c) Adobe Stock
キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン