「仁義を切る」とは?
「仁義を切る」という言葉を聞いたことはありますか? なんだか時代劇や仁侠映画に出てきそうな物々しい響きがありますね。とはいえ、割とビジネスシーンなどではよく使われる言葉です。
本記事では、「仁義を切る」の意味や類語表現などを解説します。また、使い方を例文と一緒に紹介するので、この機会にぜひマスターして使ってみてくださいね!
「仁義を切る」の意味
かつては、ばくち打ちや香具師などの間で特有の形式に則って交わす、初対面のあいさつのことをさす言葉でした。
そこから転じて、現在では、「業界独特のあいさつを交わすこと」「先任者や関連部署などにあいさつをしておくこと」などという意味で使われています。
そもそも「仁義」とは?
「仁義なき戦い」という言葉は、映画のタイトルでもあり、わりと馴染みがあるかもしれませんね。したがって、仁義のニュアンスは何となくご存知だという方も少なくないはず。せっかくなので、仁義の辞書的な意味合いもおさらいしておきましょう。
じつは、「仁義」という言葉だけでも「仁義を切る」と同じようにばくち打ちや香具師などの仲間内のおきてや初対面時のあいさつを表すのです。
ほかに、「儒教道徳の根本理念であり、仁と義のこと」「道徳上の守るべき筋道」「他人に対する礼儀や義理」という意味を持っています。一般的には、道徳上の守るべき道筋や他者への礼儀、義理というニュアンスで使われることが多いですね。
「仁義を切る」は文字通り受け取らないように注意!
言葉の響きから「仁義を切るって、不義理を働くってこと?」と思われる方もいるかもしれませんが、そうではないので気をつけてくださいね。むしろ、あいさつをするという意味で使われるため、反対のニュアンスだと言えるでしょう。
「仁義を切る」の使い方を例文で紹介
なぜ仁義を切らなければならないのでしょうか? その理由を解き明かすためにも、「仁義を切る」を使った例文を紹介しますね。
1:「これから交渉をしに行く相手は、業界最大手の企業だ。しっかりと仁義を切って良い印象を残してもらおう」
例えば、取引先相手など、社外の方には仁義を切る必要があります。業界特有のマナーやしきたりを踏まえたあいさつをすることで相手側へのリスペクトや理解を示すことに繋がるのです。
それは、今後ともに仕事をしていくうえで重要なスタンスになります。もし競合の取引先相手がいるとして、提示している条件がほぼ同じならば残る決め手は心情の良さや誠意の深さになるからです。
2:「新年度になり、新しい部署に配属された。いままで関わりの無かった関連の部署にも仁義を切って、仕事に対する姿勢をアピールしに行こう」
「仁義を切る」は、社外の方だけでなく先任者や関連部署に対しても使うことができますよ。もちろんあいさつをしに行くことですが、信念を通す姿勢を見せるというニュアンスでも用いられます。
3:「相手先にあらかじめ仁義を切っておいたので、その後はスムーズに仕事をすることができた」
これから一緒に仕事をしていこうとしている関係者に一通りあいさつをしておくことで、自分の顔を覚えてもらうことができます。そのため、その後の相談や交渉がしやすくなるのです。
「仁義を切る」の類語表現とは?
「仁義を切る」と同じように使える表現にはどのようなものがあるのでしょうか。使う機会は多くないかもしれませんが、どの言葉もとっさに出ると「おっ」と思ってもらえますよ。
1:口上を述べる
「口上を述べる」とは、大きくとらえると「口頭で述べること」という意味です。また「口の利き方」という意味もあり。また、「歌舞伎などの出演者が観客に対して舞台からあいさつを述べること」も「口上を述べる」と言います。改まった場面でのあいさつをさすことが多いようです。
「口上」は「こうじょう」と読み、「くちうえ」などとは読まないので気をつけましょう。
2:あいさつ回りをする
シンプルで分かりやすい表現が「あいさつ回りをする」です。例えば、共同の仕事をスタートさせる前に関係者にあいさつすることをさしたりします。ただし、相手に向かって「あいさつ回りに来ました!」などと言うのは、おかしいので控えましょう。
3:顔見せする
「顔見せ」とは、「人前に出ること」「はじめて大勢の前に顔を見せること」という意味の言葉です。
かつては「顔見世」という漢字が当てられ、「はじめて勤めに出る遊女、芸者などが揚屋や料亭などへあいさつすること」「江戸時代に、歌舞伎で年一度行われる各座の俳優交代のあとに新しい顔ぶれで行う初めの興行」という意味がありました。
歌舞伎については、現在ではこの意味で用いられてはいないそうです。しかし、11月には東京、12月には京都で顔見世興行が行われます。
「仁義を切る」という言葉を使うときの注意点
最後に、「仁義を切る」という言葉を使うときや、仁義を切る際に気をつけておきたいポイントについて紹介します。
まず、「仁義を切る」という言葉を使うときについてです。この言葉を知らない方もいらっしゃるかもしれません。無理に「仁義を切る」にこだわらずとも、このニュアンスを伝えることはできますので、相手や場所に応じて使い分けましょう。
続いて、仁義を切る際のポイントについて。あらかじめあいさつやコミュニケーションをして親睦を深めることは重要ですが、押しつけにならないようにしなければなりません。仁義を切りに行く際は、相手のスケジュールや状況を確認したうえで行くことや、相手側の文化やバックボーンなどに敬意を払うことをお忘れなく。
最後に
本記事では、「仁義を切る」という言葉について解説しました。「こわい言葉… ?」と一瞬思ってしまいがちですが、そんなことはありません。機会があったらぜひ使ってみてください。普段とはちがう言葉遣いのギャップに、周りの人は驚くかもしれませんね。
TOP画像/(c)Shutterstock.com