目次Contents
この記事のサマリー
・「保身」の意味は、自分の地位や名誉、安全を守ること。
・「保身」の言い換え表現には「自己防衛」や「護身」などがあります。
・「保身」を英語で表す場合は“self-protection”などがあります。
「保身」という言葉に対して、どこか否定的な印象を持っている人もいるかもしれません。これは、「保身に走る」といった使い方から、自己中心的な行動と結びつけて捉えることがあるためでしょう。
まずは、「保身」という言葉が何を意味するのかを明らかにしながら、使い方や言い換え表現を整理します。保身に走る人の特徴や、どのように対応すればいいのかといった、対人関係のヒントにも触れていきます。ぜひ参考にしてください。
「保身」とは? 正しい意味と使い方
「保身」はどういった意味を持つ言葉なのでしょうか? まずは、意味を確かめます。
「保身」の意味
「保身」は、辞書で以下のように定義づけられています。
ほ‐しん【保身】
自分の地位・名誉・安全などを守ること。「―をはかる」「―の術」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「保身」とは、文字通り自分の身の安全を保つことを指す語です。
なぜ否定的に使われるのか?
「保身」という言葉そのものには善悪を含みませんが、実際のビジネスやニュースの場面では、否定的に受け取られることがほとんどでしょう。それは、「責任から逃れる」「説明を避ける」などの行動と結びつきやすいためです。
例えば、「保身のため、いいわけをする」「保身からの行動が見苦しい」といった表現からもわかるように、自己弁護や責任回避といった印象が強くなりやすい特徴があります。
「保身に走る」とはどういう行動か?
「保身に走る」という表現は、自分の立場や安全を優先し、本来求められる説明や対応を避ける行動を指すときに使います。
例えば、責任ある立場の人が説明を後回しにしたり、失敗の原因を他人に押しつけたりするような場面が例として挙げられます。こうした行動が「保身に走った」と見なされるのです。
この表現は個人だけでなく、企業や団体など組織全体に対しても使うため、ニュースや報道などでも目にすることがありますね。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』(ともに小学館)

使い方がわかる「保身」を使った例文集
「保身」は実際にどのような使い方をするのか、例文で確認しましょう。
「その政治家は保身に走ったことで国民からの信頼を失った」
自分の立場を守ることを最優先にした行動を、「保身に走る」を使って表現した例です。
政治家が謝罪の場で責任を回避し、自らの非を認めない態度は、報道でもしばしば目にします。そうした姿勢が、信頼を損なう原因となることは少なくありません。
「彼は昇進してから保身をはかる行動を取るようになった」
昇進によって社会的地位が高まると、それを失いたくないという気持ちから「保身的」な行動を取ることがあります。
自らの誤りに正面から向き合えず、謝罪や説明を避けるケースなども、こうした行動に含まれますよ。
「保身に走る人」には、どんな特徴がある?
どのような言動が「保身」だと受け取られやすいのか、考えてみましょう。職場の上司や同僚との関係を考える上で、向き合い方のヒントも添えます。
「保身」だといわれやすい状況の特徴
「保身」と受け取られやすいのは、周囲の課題や全体の利益よりも、自分の立場や責任回避を優先しているように見える場合です。
次のような傾向があると、そのような印象を与えることがあります。
・失敗しても謝罪せず、言い訳や責任転嫁に終始する
・自分の考えや評価を守るために、他人の意見を受け入れない
・問題が生じた際に、発言を曖昧にしたり明言を避ける
こうした言動は、「保身」に走っているとの印象を与えるおそれがあります。
昨今では、リスク管理の一環として捉えているケースも少なくありませんが、接し方によっては、信頼関係に影響を及ぼすこともあるため注意が必要です。

「保身に走る上司・同僚」との向き合い方
保身に走る相手に対しては、感情的にならず、冷静かつ客観的な対応を心がけることが大切です。業務を円滑に進めるためには、個人への評価よりも、状況全体を公平に見極める姿勢が求められます。
まずは、感情ではなく事実に基づいた判断ができるよう、状況を整理し、必要な情報を文書化しておくといいでしょう。情報共有を促し、関係者間で共通認識を持つことが、業務遂行の支えになります。
場面によっては、やりとりをメールなど記録に残る形で行うことも有効です。心理的な距離を保ちつつ、不要なストレスや誤解を避けやすくなります。
また、無理に結論を急がず、こまめに報告を重ねながら段階的に合意を得ていくことで、相手の防衛的な態度を和らげる助けにもなるでしょう。
「保身」に関する言い換え・類語
「保身」と近い意味を持つ語にはいくつか種類があります。代表的なものを紹介していきましょう。
「自己防衛」
「自己防衛」は、他から加えられる攻撃などから自力で自分を守ることを指します。
例文:「状況に応じて自己防衛が必要になる場面もあります」
「護身」
「護身」は、危険から身を守ることを意味します。護身術や護身用といった言葉はよく使われますね。
例文:「最近、護身のために習い事を始めました」
「防御」
「防御」は、敵の攻撃などを防ぎ守ることを指します。備える行為を表す際にも用います。
例文:「トラブルを防ぐために、防御策を検討しています」
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』、『使い方の分かる 類語例解辞典』(すべて小学館)
「保身」は英語でどう表現する?
「保身」を表す英語としては、“self-protection” や “self-defense” をよく用います。
“self-protection” は “protection”(…からの保護・防護)に “self” (自己)を付けた語で、「自分自身を守るための保護」を表します。
攻撃の有無にかかわらず使える語であり、日常的な安全確保の意味でも用いるため、「保身」に比較的近い表現です。
例文:“He made the decision for his own self-protection.”
(その判断は、自分を守るための行動でした。)
“defense”(防御・守備・防衛)は、外部からの攻撃や危険に対して自分を守る行動を表します。“the art of defense”(護身術)に見られるように、攻撃への備えが前提とされる点が特徴です。
例文:“She acted out of self-defense.”
(彼女は自分を守るために行動しました。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』、『ランダムハウス英和大辞典』(ともに小学館)

「保身」に関するFAQ
ここでは、「保身」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「保身」は悪い意味の言葉ですか?
A. 善悪は含まれていません。否定的に受け取られるのは、使う場面に要因があるといえます。
Q2. 「保身に走る」はビジネスでも使いますか?
A. 責任の所在が問われる場面や判断が注目される場面で用いることがあります。
Q3. 「保身」はNGな使い方がありますか?
A.「あなたは自己保身ばかりしている」などの表現は、相手を攻撃的に評価する印象となりやすく、摩擦の原因になるので注意したいところです。
最後に
「保身」という言葉には、本来、善悪の評価は含まれていません。自分の立場や名誉を守る行動を指す中立的な語ですが、使い方や場面によっては、否定的な印象を与えることがあります。
だからこそ、正しい意味を理解し、状況に応じた言い換えや表現の工夫が求められます。この記事で紹介した例文や言い換え表現を参考に、相手との関係や場面にふさわしい言葉選びを意識してみてください。
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