「保身に走る」「保身をはかる」などの表現を、ニュースで耳にしたことはありませんか? 失敗をした時につい「保身」に走ってしまうと、周囲からの信頼を失ってしまう可能性も。そこで今回は、「保身」の意味や使い方、類語、英語表現などを解説しましょう。
「保身」の意味とは?
「保身(ほしん)」とは、「自分の地位や名誉、安全などを守ること」。主に「保身をはかる」「保身に走る」などと表現されることが多いですね。意味だけ見ればあまり悪い印象は受けませんが、実際には自分の責任を果たさず、身の「保身」ばかりを優先する人に対して使われるため、ネガティブなイメージが強い言葉といえるでしょう。
使い方を例文でチェック!
「保身」は、ビジネスや政治の世界でも度々登場する言葉です。実際にどのような使い方をされているのか例文でチェック。
1:その政治家は保身に走ったことで国民からの信頼を失った。
自分のことを最優先にして守ることを「保身に走る」と表現します。政治家が謝罪会見での場でも責任逃れをし、自分の非を認めないことや、役所の職員が対応ミスを認めず裁判沙汰になるようなことは、ニュースでも度々取り上げられていますよね。このような不誠実な態度が原因で、国民からの信頼を失ってしまっても仕方ありません。
2:彼は昇進してから保身的な行動を取るようになった。
昇進し社会的な立場が上がったことで、「保身的」な対応を取るようになった人もいるでしょう。今の立場を失いたくないという思いから、自分の犯した間違いに正面から向き合えず、謝罪することができないこともあるようです。
類語や言い換え表現とは?
「保身」の類語には、「自己防衛」や「護身」「防御」などがあります。どれも「守ること」を意味しますが、ややニュアンスが異なるため正しい意味を理解しておきましょう。
1:自己防衛
「自己防衛」とは、「悪影響を及ぼすものから自分を守ること」。こちらも「保身」と同じように悪い意味は含まれていませんが、一般的には身勝手な理由で身を守る場合に使われます。
特にプライドが高い人や視野が狭い人は、相手に痛いところを突かれると、怒り出したり、歯向かってくることも。このように、無意識に自分のことを守ろうとすることを「自己防衛本能」と呼ぶのです。
・彼はわざと強気に振る舞うことで自己防衛しているようだ。
2:護身
「護身(ごしん)」は文字通り、「危険から身を守ること」。女性が万一のために「護身術」を習ったり、警察が「護身用」のピストルを携帯している場合などに使われる言葉です。これらは、あくまでも相手から危害を加えたれた時に応戦するための手段なので、自ら危害を加える場合には使用しません。
・彼女は最近、護身術として空手を習い始めた。
3:防御
敵からの攻撃を防ぎ、守ることを「防御(ぼうぎょ)」と言います。「防御策」や「防御の構え」というように、あらかじめ何らかのトラブルが起きることを想定し、手段を講じている場合に使われることが多いようです。「保身」に含まれる自分勝手というニュアンスはありません。
・システムをハッキングされないよう防御策をとる必要がある。
「保身」に走りがちな人の特徴とは?
仕事で失敗をしてしまった時に、即座に反省して謝ることができる人もいれば、言い訳をして「保身」に走ってしまう人がいるのも事実です。一体「保身」に走ってしまう人には、どんな特徴があるのでしょうか? 早速みていきましょう。
1:自己中心的
周囲のことより自分のことを真っ先に優先する人は、自己中心的な性格であることも。自分さえ助かれば他人はどうでもいい、自分の利益が大事、自分の考えが正しいなどと思い込んでいる場合があります。その結果、仕事でミスを犯した時にも素直に謝罪することができず、開き直った態度を取ることが多いのです。
2:プライドが高い
プライドが高いことも「保身」に走りがちな人の特徴の一つ。自分自身に確固とした自信を持っており、なかなか自分の意見を曲げようとしません。何か問題が起きた時にも、自分に都合の良い解釈をしたり、責任を他人に押し付けたりするので、心から反省することがないのです。
3:言葉を濁す
自分の「保身」を優先する人は、大事な場面で言葉を濁す傾向があります。どこか心の中で「これは自分のミスではない」と考えていることから、謝罪会見でもストレートに謝罪の言葉を述べることがありません。どこか遠回しな表現を使ったり、「誰の責任なんですか?」と問われても明言を避けたりします。
英語表現とは?
「保身」を英語で表現すると「self-protection」になります。「self」は「自分自身」。「protection」は、「〜から保護する、防護する」という意味をもつ名詞です。英語の場合も、単体ではネガティブな意味はありませんが、下記のように文章を組み立てることで、否定的なニュアンスを伝えることができますよ。
・I can’t trust a politician who runs for self-protection.(保身に走る政治家は信用できない)
・It was only for the sake of self-protection that he took such an action.(彼がそのような行動をとったのは保身のために他ならない)
・He prioritized his self-protection over the people.(彼は国民より自分の保身を優先した)
最後に
仕事やプライベートで失敗をして、つい言い訳をしてしまいたくなり、保身してしまうことは誰にでもあることです。しかし、そんな時に素直に謝罪して誠意を見せるか否かで、その後の人間関係は変わってくることでしょう。この機会に、日頃の態度や行動を見直して、大事な場面で「保身」をしていないかチェックしてみてはいかがでしょうか?
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