働く私たちのメンタルヘルスケア
毎日を忙しく過ごす私たちの周りには、心の空模様を曇らすモヤモヤやイライラがそこかしこに散らばっています。そこで、読者から寄せられた心のお悩みを一挙公開。ストレスを軽くするコツを、Q&A形式で紹介します。
【プライベート編】働く私たちの、心の“しんどみ” Q&A
Q. コロナ禍以降、グチも気軽に言えず気分が沈みます
「30代になってライフスタイルが変わり、コロナ禍もあって気軽にグチを言える友人とも疎遠に。発散できる趣味もなく、しんどいです」(33歳・マスコミ)
A. 大丈夫、あなただけではないですよ
明快な回答ではないですが、「その気持ちはすごくわかります」というのが、精神科医としての回答でしょうか。大丈夫、私がその気持ちを受け止めます。そして、多くの人が同じ気持ちを抱えているという視点をもってみて。
「私だけが孤独なのではなく、ひとりぼっちの感覚を共有している人が同じ空の下に無数にいるんだ」と思えば、少し気持ちが落ち着くはずです。
Q. 友人がどんどん結婚・出産していき焦ります
Q. 「5年つきあった彼と別れて1年。婚活もうまくいかず、友人の結婚や出産の報告を聞くと焦ったり落ち込んだりしてしまいます」(28歳・化学)
A. 周囲の結婚や出産はあくまでニュース。自分の価値を決めるものではありません
周囲と比較するなといっても難しいとは思いますが… 結婚や出産自体はあなた自身のステイタスを決める材料ではありません。今は30歳前後という年齢も手伝って「結婚を前提に」と考えすぎ、相手に求める条件が無意識に高くなっているのかも。Over40で結婚や出産する人もたくさんいます。
年長者のたわごとかもしれませんが、たくさんの人と出会い、失敗を繰り返したほうが「安心して結婚生活を送れる人はこんな人」という考え方が成熟していくと思います。焦らず、いい相手を見つけてください。
Q. 学生時代の友人と価値観が合わなくなって、会うのがしんどいです
「昔は一緒にいて楽しかったグループ。たまに集まりますが、『なんか違うな』と感じつつ断れないときがあり… 苦痛です」(36歳・販売)
A. 昔話を楽しむ仲間と思えばいいのでは?
無理して会うこともないと思いますが… (笑)。昔の友人と今も価値観を合わせることがそんなに大事でしょうか。
学校生活など、共通の体験をもっているのが“昔からの友人”と呼べるゆえん。同じルーツをもつ、その場にいるだけで安心できる仲間と思えば、会っても意味がないということはないと思います。
今の自分と価値観の合う友達はまた別にいるはずなので、それはそれで楽しめばいいのでは?
Q. 値上がりラッシュの中、将来が不安…
「最近の値上がりラッシュで生活に余裕がなくなり、ストレスを感じます。給料も上がらずボーナスもカット…。将来も不安ばかりです」(36歳・医療事務)
A. 精神的に豊かな生活にお金は必要? 視点をズラしてみて
値上げは今に焦点をあてた話で、長い時間軸で見れば、物価なんていくらでも変わっちゃいます。不安にとらわれがちな人は、「値上がりした、家計が苦しい、人生もうダメだ!」と、今この瞬間の事実が未来永劫続くと思い込んで不安をかき立てられてしまう傾向が。
それを解消するには、意識的に視点をズラして考えてみること。たとえば「お金をかけずにできる豊かな暮らしって?」と考えると、究極寝てれば幸せ、となるかも。「お金があるから豊か」ではなく、あなたが思う“いい生活”から考え直してみて。
教えてくださったのは…
精神科医・産業医|尾林誉史(おばやし・たかふみ)
1975年生まれ。VISION PARTNERメンタルクリニック四谷院長。東京大学理学部卒業後、リクルートに入社。30歳で退社し弘前大学医学部を経て医師に。著書に『元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術』(あさ出版)など。
2023年Oggi5月号「働く私のメンタルヘルス」より
撮影/河内 彩 イラスト/オカヤイヅミ 構成/佐々木 恵・酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部