そもそも「幼稚」とは?
年齢のいい大人であるにもかかわらず幼稚な人に、職場やお店などで遭遇して困ったという人は少なくないかもしれません。そのような人は自分勝手で責任感がなかったり、話が通じなかったりなどいろいろ苦労しますよね。それでストレスがたまりすぎて、病気になるケースもあるかも。
この記事では、「幼稚」という言葉の意味や類義語、幼稚な人の特徴などを中心に解説します。
まずは「幼稚」という言葉の意味について、確認しましょう。幼稚とは「年齢が幼いこと、考え方・やり方が未発達なこと」。「あの男性は幼稚だ」などと、一般的に大人に対して使う時は、相手が未熟であるといった意味があり、否定的なニュアンスです。言葉の使い方には注意しましょう。
ちなみに幼稚の対義語には、「老練(ろうれん)」「成熟」などが該当しますね。
幼稚の類義語
幼稚という言葉の類語には、どのような言葉があるのでしょうか。言い換え表現について確認していきます。
1:稚拙(ちせつ)
稚拙は、「子供じみていて下手なことやその様子」を意味します。方法が雑な時などに使われるようです。
例文:
「このアンケート調査は40代への調査方法が極めて稚拙であるので、調査結果を信用できない」
「一連の騒動で、店側の顧客への対応は稚拙であった。かえって問題が増えた」
2:未熟
未熟は、「果物が十分に熟していないことや学問や技術などの経験・修練がまだ十分でないこと」を意味します。技法や人に対して、使われるケースが多いです。
例文:
「あの頃の自分は思い込みが強くて未熟だったなと、つくづく実感する」
「自分の語彙が未熟でうまく表現できないのが、もどかしい」
幼稚の英語表現
英語で幼稚はどう表現するのでしょうか。見ていきましょう。
1:childish
「child」は子供という意味ですが、形容詞接尾辞の「ish」が続くことで「子供っぽい、幼稚な」という形容表現になります。
例文:
「childish ideas(幼稚な考え)」
「childish face(童顔)」
「childish person(幼稚な人)」
2:infantile
「infant」には幼児という意味があります。これに接頭辞「ile(~に関する)」が続くことで、「infantile(幼稚な)」という意味になるわけですね。
例文:
「infantile games(幼稚な遊戯)」
「infantile behavior(幼稚な振る舞い)」
否定的に幼稚と見られやすい人の特徴について
次に、否定的な意味で幼稚と見られやすい人の特徴について整理しておきましょう。
1:場に適した言動が取れず、言葉遣いや言動が子供っぽい
大人は、職場やフォーマルな場面などでは、状況に応じた言葉遣いを求められます。しかし、幼稚な人は、その場に適した言動が取れないため、周囲の人から浮くことも。
例えば、年上の人に向かって、友達口調で話してしまったり、「疲れた」「眠い」などと思ったことをすぐに口に出してしまったりする人は、幼稚な人という印象を持たれてしまうでしょう。
2:短気で感情的である
小さい子供は感情の制御がうまくできず、機嫌が悪くなるとすぐにイライラします。幼稚な大人もこれと同様に、短気で感情のコントロールがうまくできない傾向があるようです。
気に入らないことがあると、不満をあらわにし、物事を投げ出したりします。度を過ぎると、モラハラ(モラルハラスメント)にもなりかねません。反対に言えば、感情を適切に制御できるのは大人の特徴とも言えるでしょう。
3:自己中心的で協調性がない
ある程度責任がある立場にいれば、自分のことだけを優先することはできません。周囲との意見調整や協調、さらには自分の意向を抑え、多少の不満があっても我慢する必要が出てくることでしょう。
幼稚な人は、責任感が弱く、自分の利益を最優先しがち。協調性がなく利己的なのは、幼稚と見られる人の特徴でしょう。
4:感情をすぐに顔や態度に出す
幼稚な人は、感情のコントロールがうまくできないので、嫌なことがあればすぐにそれを顔や態度に出す傾向があります。
大人になると不満があっても、すぐには感情を表に出さないようにするものです。感情を素直に出すことで人間関係が壊れたり、場の空気が悪くなったりすることを心得ているからですね。これが分かっていないのも、幼稚な人であると見られる特徴でしょう。
幼稚であることは悪い?
一般的に、大人に対して「幼稚だ」という表現を使うことはネガティブなこと。これまでも、そのような文脈で説明してきました。しかし、幼稚な要素が全て悪いかと言うと、そうとも言い切れません。
例えば、芸術においてはむしろ幼稚性は重要であるという指摘もあります。美術家で現代アートを手掛ける横尾忠則氏(よこやま・ただのり)によると、芸術の核はインファンテリズム(幼稚性、少年性などに該当)なのだとか。
あのピカソも、子供っぽいところがあったそうです。確かに、大人になるにつれて「常識」などにとらわれて、自由な発想や表現ができなくなっていくケースはあります。
また、儒教で孔子に並んで尊敬される孟子も、幼稚であることに着目していました。孟子は、赤子の心に人間の本来の姿があると考えたのです。中国・明代には、このような考えをベースにして、自然のままの童心に帰るべきであるという思想も出ました。
確かに、大人になると分別はついていきますが、さまざまな考えにとらわれるようになり、自由に考えたり行動したりすることが難しくなっていきます。また、心の純粋さも失われ、悪いことをしようと思うこともあるかもしれません。改めて幼稚であることのメリット・デメリットを見極めて、日常生活に生かしていきたいものですね。
最後に
一般的に、大人に対して「幼稚」という表現を使うのは、ネガティブな印象があります。自分のことだけを考えて、他人に気配りができないということがあれば、周囲から「幼稚な人だな」と見なされるわけですね。
ただ、一方で芸術において幼稚性は、自由な表現をもたらすという点において重要であるという指摘もあり、長所ととらえられることも。
幼稚のメリット・デメリットを把握して、状況に応じて使い分けるのが大切なのかもしれませんね。
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