世の中には、自分の怒りの感情を上手く取り扱えずに困っている人もいれば、怒られることを気にして暮らしている人もいます。夢でまで怒られて寝覚めが悪かった、という経験をした人もいるかもしれません。怖さで憂鬱になったり、身体の不調に繋がったりするのを防ぐために、対処法を一緒にみていきましょう。
怒られるのが怖いと感じる理由
「汝の敵を知れ」という言葉があります。最初に、怒りの感情の仕組みと、怒っている人について、理解を深めましょう。
怒りの仕組み
怒りの感情の本来の役割は、自分に脅威が迫っていると察知したときに、身体を臨戦態勢に一瞬で整えることです。危険が迫ると、脳はとっさに、アドレナリンやノルアドレナリンを放出。心拍数や血圧を上げて筋肉を緊張させ、全力で戦ったり逃げたりできるように身体の状態を変化させます。心の安心・安全が脅かされたと感じるときにも、この機能は有効です。
それで、私たちは怒りを感じると臨戦モードで「カーッとする」のです。感情的になるというのは、この働きに振り回されて、コントロールできていない状態にあるわけですね。
怒られる方は、相手が戦闘モードになっているから、怖く感じるのもの。怖いほど怒っている人は、実は「何か自分にとって脅威を(無意識のうちに)感じて、自分を守ろうと必死な状態」といえます。本人も、自分の怒り方に、悩んでいるかもしれません。
仕事で怒られる原因
そうは言っても、怒られるのは嫌ですし怖いですよね。上司・先生・親など、怒られて怖い相手や理由は色々あると思います。ここでは、仕事で怒られる原因を考えてみましょう。
1:同じミスを繰り返す
「注意したのに気をつけていない」「気をつけようという意思がない」と思われます。この場合、ミスそのものより、繰り返していることに対して怒られる可能性が高いです。
2:報連相をしない
報告・連絡・相談(報連相)は、仕事のコミュニケーションの要です。早めに報連相すれば防げたことが、報連相を怠っていた為に起きてしまったり、事態を悪化させることもあります。また、報連相をしないと状況が共有できないので、周りを心配させたり困らせることに。
3:言い訳や責任転嫁をする
何か尋ねられたり注意されたときに、言い訳ばかりしたり人のせいにするのも、怒られる原因です。その場はしのげるかも知れませんが、後で事実が判明すると、さらに厳しく叱られる可能性もあるでしょう。また、信用も失います。
4:指示を守らない
言われたことを勝手に変えて実行したり、ルールを無視して進めるのも、よくある怒られる原因の一つです。
5:仕事を放置する
仕事を放置したら、当然怒られますよね。難しいことを、つい後回しにして、期限に間に合わなくなったり、忘れることもあるので要注意です。
他にも「怒られると笑う」「怒られると黙る」といった態度がますます相手の怒りを大きくすることもあるので、自分のくせに気をつけましょう。
怒られない仕事の進め方をチェックしよう
では、どのようなことに気をつければよいか、確認しておきましょう。
1:メモを取る
ミスを繰り返したり、うっかり忘れることが多い場合にお勧めです。
2:周囲との仕事の繋がりを理解する
役割分担や仕事の繋がりが理解できれば、報連相するべき内容やタイミングも判断しやすくなります。指示やルール通りにいかないと思うときに、事前に相談して了解をもらうことも、繋がっている意識があれば自然にできるでしょう。
3:誠意を持つ
誰しもミスをしたり、上手くいかないこともあります。そんな時には、誠意を持って謝り、対処しましょう。
怒られたときの受け止め方
怒られた時にどのように受け止めれば心が楽になるか、みていきましょう。
1:心理的距離をとる
強く怒っている人は、何か脅威を感じて必死になっている状態です。「この人、何から自分を守ろうとしているのだろう」「この人、自分を守ろうと必死なのね、でも振り回されちゃっているのね」と思って見てみましょう。怖かった人が、少し違って見えてくるかもしれません。
2:全ての言葉を受け止めない
感情にまかせて「だいだいあなたはいつも」とか「全く○○できない」など、大げさに言ったり、人格を傷つける言葉で怒られる場合は、そういう言葉は飾り言葉だと割り切って受け流しましょう。相手は怒りの感情に振り回されているのです。ついていく必要はありません。気持ちに距離を取って、実際に今後気をつけるべき事実についてだけ受け取りましょう。
3:今後どうすればよいかに話を向ける
納得がいかなくても、いきなり反論したり押し黙っていては、相手の怒りの油に火を注ぐことになりかねません。自分に非がある部分については謝罪。そして、タイミングを見つけて「○○について○○するようにと、いうことですね」と相手が伝えたい「何をどうして欲しい」について確認し、今後どうするかに話を向けてみましょう。
仕事では、危険なことや重大なこともあります。適切に怒られながら成長する、ということもあるでしょう。少しくらい怒られるのは当たり前と割り切って、いちいち気にしないことも必要です。
また、できる人ほど怒られる、という言葉を聞くことがあるように、期待されているからこそいろいろ注意を受けることもあります。どんな場合も、不適切な非難の言葉は受け取らず、自分にとって必要な言葉だけを受け取るように心がけたいものです。
怒られるのが怖いとき、気をつけたいこと
怒られるときの受け止め方をみてきましたが、次の二つには注意しましょう。
1:自分ばかりを責めない
怒られると、自分が悪いからだ、と自分を責めてしまう人もいます。感情のコントロールがきかない怒り方や理不尽なことを言って怒る人は、その怒り方に問題があります。自分を責めすぎないようにしましょう。
2:パワハラ
あなたが怖いと感じる、その「怒り」もしかしてパワハラではないでしょうか? 次の三つの要件が重なっていると、パワハラと認定されます。該当するときには、組織内の相談窓口に相談しましょう。2022年4月より全ての企業がパワハラ防止法の対象です。
・優越的な関係を背景とした言動
・業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
・労働者の就業環境が害されるもの
(厚生労働省発表「パワーハラスメント防止のための指針」による)
最後に
怒られても、受け止め方次第で随分気持ちが楽になることも多いです。しかし、怖い思いはストレスに。気分障害等心身の病気に繋がることもあるため、我慢のしすぎは禁物です。自分で対応できる範囲を超えていると思ったら、早めに信頼できる人に相談しましょう。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
キャリアコンサルタント 米山万由美(よねやま・まゆみ)
キャリアコンサルタント/アンガーマネジメントファシリテーター(R)
組織の1on1面談や人財活用コンサルタント、研修講師として活動。楽しくはたらき楽しく暮らすを応援。趣味はチェロ演奏。
ライター所属:京都メディアライン