仕事へのモチベーションと自己管理能力
仕事やプライベートにおいて、自分で自分を律し、着実に目標を達成するために自ら行動できる人は、自己管理能力が高いと言えるでしょう。一方で、目標が達成された瞬間、そのモチベーションが急激に下がってしまうことも、多く見受けられます。自己管理能力を、日常的に高い状態で維持し続けるのは、難しいこととも言えますね。
キャリアコンサルタントの櫻井宏美さんと一緒に、自己管理能力が高い人の特徴や高め方ついて見ていきましょう。
今回は仕事の達成感から、なかなかモチベーションが上がらない、Oggiブレーンの方から、お悩みをいただきました。
仕事に対するモチベーションが上がりません。以前は前向きに取り組んでいたのに、大きなプロジェクトが終わって燃え尽き症候群のような状態になり、なかなか抜け出せないです。(Yさん・31歳・女性/東京都)
「大きなプロジェクトを任され、大成功を収められたようですね。おめでとうございます。そして、お疲れ様でした。モチベーションがなかなか上がらないご様子ですが、ご自身のエネルギーを一気に放出されて、充電期間中といったところでしょうか。
確かに、夢中で取り組んでいたプロジェクトや事業が終わってしまうと、気持ちに、ぽっかり穴が開いてしまったようになる場合があります。自己管理も難しいですよね。
以前、Yさんと似たようなケースのご相談を受けたことがあります。その方には、普段の仕事の中で、どんな時にモチベーションが上がるのか、考えていただきました。その方は、他人からありがとうと感謝された時に、モチベーションが上がるとのこと。
周りの人で、困っていそうな方の仕事を、手伝ってみることを提案したところ、周囲から大変感謝され、仕事を任されるようになり、仕事に対して、前向きな気持ちを取り戻されました。
Yさんは今まで、仕事でどんな時にモチベーションが上がっていたのでしょうか。Yさんも、一度、ご自身のことを振り返ってみることをおすすめします」(櫻井さん)
自分のモチベーションをコントロールできるようになると、自己管理能力が上がり、仕事に対する気持ちの波も、穏やかになりそうですね。まずは、過去の自分や今の自分に向き合ってみることから始めてみるのがいいのかもしれません。ここからは、自己管理能力が高い人の特徴について、見ていきましょう。
自己管理能力とは?
自己管理能力とは、目標達成のために、自分自身を律して管理する能力を言います。セルフマネジメントスキル、とも言われますね。自分の持つ能力を最大限に活かし、パフォーマンスを上げることができれば、企業にとっても大きく成長できると言えるでしょう。
具体的には、時間の管理、健康・体調の管理、感情の管理、モチベーションの管理などがあげられます。
コロナ禍で在宅ワークが進みつつある昨今、以前のように会社に出社し、上司や同僚とともに働く機会が少ない企業もあるのでは。誰かに見られているという意識が薄い状況では、自己管理能力の高さは大変重要になってきています。
自己管理能力が高い人の特徴は?
しっかりと自己管理能力を活かしている人には、どんな特徴があるのでしょうか。ここでは3つのタイプを紹介します。一緒に見ていきましょう。
1:もともとの性格がストイック
ストイックとは、欲求に左右されることなく、自分で決めたことを厳守して行動すること。このようなタイプの人は、意識することなく、自然な形で自己管理能力を発揮しているでしょう。
「時間を守る」「必ず、目標を達成する」「仕事では結果を出す」など、自分の求めるイメージが明確なので、それを実現するために、厳しく自分を律します。しかしながら、それを、苦しいなどと思うこともありません。
2:体調に気を付けている
自己管理能力が高い人は、食事や運動、ストレスなど、心身ともに自身の健康管理には、特に気を付けている場合があります。なんといっても、身体は資本です。健康でなければ、高いパフォーマンスを発揮できません。食べ過ぎない、甘いものを控える、定期的な運動をする、リラックスする時間を作る、など、心身双方にいい状態を保つことを心掛けています。
3:自分の弱みに向き合っている
自分の弱みを卑下したり、否定したりすることなく、しっかりと向き合うことができるのも、自己管理能力が高い人の特徴です。
自分の弱みをそのまま放置して、仕事を進めても上手くいきませんよね。自己理解ができ、自己受容をすることにも、長けているので、自分ができないことを改善したり、他の人に助けを求めたり。いかに仕事が上手く回るかを考えて、行動することが多いでしょう。
自己管理能力が低いとどうなる?
自己管理が苦手な人や、できない人はどのような状態になるのでしょうか。その人個人だけでなく、周囲の人に影響を及ぼす場合もあります。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
1:信頼されない
自身の管理ができないので、目標意識や達成意欲も低い場合が多いです。時間にルーズであったり、仕事の納期が間に合わなかったりが続いてしまうと、周りからの評価や信頼を得ることは、難しいでしょう。孤立してしまい、職場にいづらくなることもあります。
まずは、自身のやるべきタスクを見直し、できないと判断した場合は、上司や同僚に相談してみましょう。
2:チームのパフォーマンスが低下
特にコロナ禍で、リモートワークを進めている会社では、自己管理能力の高さが問われるでしょう。出社していれば、一人のミスもすぐに、カバーできました。しかしながら、今までのように、顔を合わせて仕事をすることが少なくなり、情報の共有にタイムラグが生じたり、タイミングが合わない場合があります。
高いチーム力を維持するためにも、マネージャーが率先して、自己管理が苦手な社員をフォローすることが大切です。
自己管理能力を向上させるには?
自己管理能力の重要性は、なんとなくわかっていても、いざ高めるとなると、難しそうですよね。一方で、ちょっとした心がけで身に付くようですよ。この機会に、ぜひ、マスターしておきましょう。
1:行動を見える化する
自己管理能力を高めるには、自身の行動を見える化することから、始めてみるといいかもしれません。
まずは、小さなステップから始めてみましょう。仕事に就く前に、1日の業務の流れを書き出してみてください。できれば、時間ごとがベストですが、無理そうであれば、午前・午後とざっくりとでも構いません。そして、1日の終わりにできたこと、できなかったことを見直します。
それを達成するにはどうすればいいか、そのためにはどのように行動すればいいか、を考えて、翌日の予定を立ててみます。毎日繰り返すことで、少しずつ、スケジュール管理ができるようになり、自己管理能力も高まっていくでしょう。
2:小さい目標の達成を積み重ねる
目標が大きければ大きいほど、達成するまでのステップを、必ず達成できる目標に落とし込んでいくことが重要です。どんな小さなことでも、達成することで満足感を得ることができます。そうすることで、次もやる気になるもの。どうしてそれが達成できたのか、その原因もしっかり把握しておきましょう。
できた自分を褒めることも忘れずに。自己肯定感が高まり、さらにモチベーションも高まることでしょう。
3:やらない決断力を身につける
目標を達成するために、何をどう進めていくかを組み立てていきますよね。その際に、何をやらないかを決断することも、大変重要であると言えます。
あれもこれも手を付けてしまうと、作業をやることだけでいっぱいになり、なかなか目標にたどり着けない場合があります。やらない決断力を培うと、必要なことが瞬時で判断でき、考え方や行動のスピードが増すでしょう。自己管理能力も、飛躍的に上がると思われます。
最後に
自己管理能力は、一部の仕事ができる人に備わった、特殊な能力ではありません。誰もが、少し工夫すれば、得られる能力と言えるでしょう。そのためにも、まずは自分と向き合うことを、おすすめします。最近食べすぎてはいないか、運動は足りているか、仕事の進捗が遅れていないか、よく眠れているか。自分を知ることで、自分の管理方法がわかるのではないでしょうか。
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※本記事はOggiブレーン会員に対して2022年10月に行った「働き方アンケート」に回答いただいたOggi読者の回答をもとにしています。
キャリアコンサルタント 櫻井宏美さん
2017年国家資格キャリアコンサルタント取得。保険薬局・薬剤師の新卒採用を担当。Well-beingが高まる働き方を模索&実践中。