ストレスは、多くの人が日頃から感じているものですよね。しかしながら、強いストレス状態が続くことは、心身ともに良くありません。この記事では、キャリアコンサルタントの櫻井宏美さんと一緒に、職場のストレスについて考えてみましょう。
今回は、職場でストレスを感じているOggiブレーンの方から、こんなお悩みをいただきました。
「自分のペースで仕事ができないと、凄くストレスがたまる…。何か対処方法はないものか、教えていただきたいです」(Aさん・42歳・女性/宮城県)
仕事は、自分のペースでリズムよく進めたいものですし、滞るとストレスも溜まるものです。対処法について、櫻井さんにお話をおうかがいしました。
「職場のストレスの中でも、自分のペースで仕事が進められない状態は、ストレスが高くなりやすい要因の1つですよね。仕事の流れがうまくいっていないのか、上司の指示が的確でないのか…、要因はさまざま考えられます。
以前、相談を受けた方は、上司から自身のスケジュールに関係なく、どんどん仕事を振られて、ストレスがたまる一方だったそうです。そこで、上司の方に仕事の締切に余裕をもたせてもらえるよう交渉し、同僚の方には手伝ってもらえるよう声をあげることをアドバイスしました。
その後、彼女からは、『完全に収まったわけではありませんが、かなり自分のペースで仕事ができるようになりました』と連絡をもらいました。
彼女が声をあげたことで、上司の方からは、『あなたに仕事を任せると、スムーズに進むので、何でも任せて申し訳なかった』と謝罪されたそうです。また、周囲の理解も得られたといいます。
すべての人に当てはまる解決策というのはありませんが、まずは今の状態を解消できるよう、声をあげてみてくださいね」(櫻井さん)
ここからは、「ストレス」に着目して、ストレスを溜める要因やストレスを溜めやすい人の特徴について考えていきましょう。
ストレスフルとは?
ストレスフルとはストレスを強く感じている状態を表します。英語では「stressful」と表記。「stress」は「ストレス・重圧・緊張」、「ful」は「~に満ちた、~の多い」という意味。ストレスに満ちた状態にあることを指します。
家庭や職場での人間関係、残業過多、ハラスメントなど、心身ともにその人にとって、負担となる刺激や変化を「ストレッサー(ストレス要因)」といいます。
そして、ストレッサーによって引き起こされた、不安や怒り、イライラした気持ちといった「心の状態」、また、不眠や食欲不振といった「身体の状態」、甘いものを食べすぎたり、お酒の量が増えるといった「行動の変化」が、「ストレス反応」です。
「今度配属された部署は、ストレスが多い」という場合は、「ストレッサー」が多いことをいいますし、「ストレスで疲れる」という場合は、「ストレス反応」を指します。しかしながら、一般的にはどちらを区別することなく「ストレス」と呼ぶことが多いです。
ストレスの要因って?
ストレスの要因は人それぞれの考えや、感じ方、置かれている状況によっても異なります。
仕事上においては、やはり、人間関係が一番の要因に挙げられるのではないでしょうか。上司や部下とのコミュニケーション不良、いじめやハラスメントといった対人関係でのストレスは、どこで働くにしても発生するものですよね。
また、昨今のIT化の推進、それに伴う仕事内容の変化、長時間労働もあげられます。コロナ禍において在宅勤務など働き方の変化も考えられますね。
ストレスを感じるのは、マイナスな出来事だけではありません。昇進や栄転といった、他の人から見れば良いことだと思われることも、本人にとっては、大きな負担と感じることもあります。
プライベートにおいては、離婚や死別といった「家族との別れ」、ペットの死、怪我や病気といったことが大きなストレスの要因になりがちです。一方で、結婚や妊娠・出産といったおめでたいことも、大きく環境が変化するという意味では、ストレスにつながることも。
仕事でもプライベートでも、大きな環境の変化に適応できないと、心の健康を損なってしまう可能性が高くなるので、気をつけましょう。
ストレスをためやすい人の特徴は?
ストレスをためやすい人の特徴はどのようなものがあるのでしょうか。ここでは3つのタイプを解説します。一緒に見ていきましょう。
1:自分の意見を言えない
本当は自分の意見があるのに、会議や人前で言えないと、ストレスがたまりますよね。「あの時、言っておけばよかった」と後悔して、自己嫌悪におちいることも。会議で発言できるように、進行役に根回しをしておくことや、一番に発言するなど、積極的に自分から行動することが大切です。
2:落ち込みやすい
仕事でのちょっとした失敗やミスを、大きな失敗だととらえてしまう人も、ストレスをためやすいですね。何気ない他人からの注意を、自分が強く否定されたと感じてしまうこともあります。
「失敗したから、いい経験になった」、「注意されるのは、自分に伸びしろがあるからだ」と前向きにとらえるように、気持ちを切り替えるといいでしょう。
3:思い込みが激しい
「しなければならない」「すべきだ」と思い込んでしまう人もストレスをためやすいタイプでしょう。責任感が強いともいえますが、他人に対して、「どうしてやらないのか」と、イライラしてしまいがち。
「ねばならない」は「そうであればいいな」、「すべきだ」は「そうすればいいな」と、心に余白を持った考え方をしましょう。
セルフチェックでストレスに気づく
ストレスの感じ方や反応は、その人によって差があります。しかしながら、ストレスフルな状態に陥った場合には、ストレスの要因に関係なく、心身に同じような反応が起きるものです。ここでは身体面・行動面・心理面の3つに分けて解説します。
1:身体面の気づき
強いストレス状態が起きると、身体に異変が発生する場合があります。体調の悪さとして感じることができるので、自分で気づきやすいでしょう。動悸、発汗、胃痛、下痢、震え、ひどい疲れ、不眠などの症状が特徴です。
気を付けてほしいのは、これらの症状を、ストレスからくるものだと思い込まないこと。実際は身体疾患であることも考えられるので、注意してくださいね。
2:行動面の気づき
行動面は、自分では気づきにくいかもしれません。上司や同僚、家族や友人など周りの人から指摘されて、気づく場合もあります。
仕事上では、遅刻や欠勤が多くなる、以前は正確にできた仕事にミスが多くなる、期限が間に合わない、といったところ。プライベートではお酒の量が極端に増える、やけ食いをする、頻繁に口論をするようになる、といったことが起こりがちになります。
周りの人から注意や指摘があった場合には、自分の行動を振り返り、自分を見つめなおしてみましょう。
3:心理面の気づき
ストレスフルな状態では、不安や緊張、怒り、落ち込みやすくなることがあります。また、怒りや不満、気力が無い、仕事を辞めたくなる、といった心理状態になりやすいです。
必要以上に自分を責めたり、あるいは、周りの人へ攻撃的な態度をとってしまうことがあるので、注意が必要でしょう。「普段ならこんな風にならないのに…」と、いつもと違う自分の内側の変化に気づくことが大事です。
厚生労働省の「5分でできる職場のセルフストレスチェック」のページでは、仕事におけるストレスをチェックできます。いつでもセルフチェックができるので、一度、試してみてくださいね。
ストレスの対処法
ストレスフルにならないために、自分に合ったストレス対処法を身につけておきましょう。ビジネスパーソンにとって、大事なスキルの1つです。こちらでは3種類を紹介します。
1:睡眠を摂る
睡眠は身体の休養になりますが、脳の休息にもなります。睡眠不足は疲労がたまるだけではなく、作業の効率が落ちたり、行動や判断ミスにつながったりすることも。睡眠のパターンや睡眠時間には、個人差があります。8時間睡眠にこだわらず、日中にしっかり目覚めて活動できているか、が大事なポイントです。
2:運動をする
ストレスの引き金となる体内物質に、「コルチゾール」というものがあります。別名・ストレス物質といわれますが、コルチゾールの消費には運動が有効なのだとか。ウォーキングやサイクリングといった脂肪を燃焼させる、有酸素運動が効果的。無理のない範囲内で続けてみてくださいね。
3:リラックスする
ストレスから自分を解放し、ゆったりリラックスした時間を確保することも効果的です。アロマテラピーやヨガ、音楽を聴いたり、絵画を鑑賞したり、静かで落ち着いた環境に身を置くことを心掛けてみましょう。ゆったりと深呼吸を行うことも、リラックス効果があります。
最後に
感じ方や程度の差はありますが、人は誰でもストレスを感じて生活しているものですよね。ストレスの要因は、必ずしも後ろ向きな事柄だけではありません。前向きなことでも大きなストレスを感じるもの。その時々で、自分の心身の状態に「気づく」ことを心掛けてくださいね。
参考文献/メンタルヘルス・マネジメント®検定試験公式テキスト Ⅲ種 セルフケアコース(大阪商工会議所)
TOP画像/(c)Shutterstock.com
※本記事はOggiブレーン会員に対して2022年10月に行った「働き方アンケート」に回答いただいたOggi読者の回答をもとにしています。
キャリアコンサルタント 櫻井宏美さん
2017年国家資格キャリアコンサルタント取得。保険薬局・薬剤師の新卒採用を担当。Well-beingが高まる働き方を模索&実践中。