「作る」「造る」「創る」の意味と違いについて
私たちは、日常生活において多くのものをつくります。食事、書類、スケジュール、メール、規則など実に多様です。人の生活そのものが、何かをつくる行為であると言っても過言ではありません。それくらい、「つくる」という行動は人間に密接なのです。
さて、そんな「つくる」という言葉には、「作る」「造る」「創る」の漢字を当てることができます。いずれもよく目にするものではありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
それぞれによって言葉のニュアンスは異なり、状況に応じて使い分ける必要があります。この記事では、「作る」「造る」「創る」の違いや使い分けなどについて解説していきます。
1:「作る」について
「作」という漢字は、人が刃物ですばやく切る様子を表しているのだそう。人が動いて何かを作るニュアンスです。
「作る」には、「こしらえる、栽培する、耕作する」といった意味があります。例文としては、「箱を作る」「笑顔を作る」「畑に麦を作る」「罪を作る」「曲を作る」など。「作物」という言葉は、そのままの意味では「作ったもの」と解釈できますが、コメやジャガイモのような農産物を意味します。「栽培・耕作する」という意味が「作る」にあるわけですね。
また、有形物だけではなく、曲・概念・仕組みといったような無形物にも用いられます。広く一般的な「つくる」に対しては、「作る」を当てるケースが多いようです。
2:「造る」について
「造」という漢字の成り立ちは、足の動きと牛の角に木の枠をはめて動けなくする行為の組み合わせにあります。
「造る」には、「材料を組み合わせて、しっかりとつくりあげる」というニュアンスがあるのです。使用事例としては、大規模で工業的なものや、有形物をつくる場合によく使われています。例として、「寺院造営」「造園」「潜水艦の建造」「土地の造成」など。芸術分野で、彫刻や陶芸などに対して「造形芸術」と呼ばれることもありますね。
3:「創る」について
「創」という漢字の成り立ちは、刀で切れ目を入れて作り始める様子を表したものなのだとか。
「創る」には、「開始する、新たに物事を始める」といったニュアンスがあります。これまでなかったような画期的なものをつくるという意味です。例えば、「創刊」「創業」「創始者」「未来を創る」などが挙げられるでしょうか。
「天地創造」という熟語からわかるように、単につくるだけではなく「始める」という意味合いが含まれています。
「作る」「造る」「創る」の使い分け
一般的には、「作る」を使うといいでしょう。有形物・無形物問わず、何かをつくる時に使えます。「机を作る」「夕飯を作る」といった具体的なものから、「罪を作る」「組織を作る」「概念を作る」といった抽象的なものまで広い範囲で使うことができますよ。
大規模で工業的な大きいものや形のあるものに対しては、「造る」を使うようにしましょう。建築や船舶、工場などに関連する言葉が出てくる時は、「造る」が妥当です。例文としては、「ビルの屋上に神社を造る」「工場でビールを造る」「町の中心部に広場を造る」など。
「何かを始める、ゼロからつくりあげる」といったニュアンスが必要な時は、「創る」を使いましょう。芸術やイノベーション、小説やアニメといった分野では「創る」がよく見られます。例文としては、「未来を創る」「短歌を創る」「文化を創る」など。
「作る」「造る」「創る」に関連する熟語
「作る」「造る」「創る」の違いやニュアンスをより感じられるように、それぞれの漢字を使った熟語を紹介します。どの漢字を使えばいいのか分からなくなった際に、ぜひ参考にしてくださいね。
1:「作」の熟語
制作、作文、工作、作曲、作戦、作物、作況
2:「造」の熟語
建造、鋳造、造園、造営、造形、造反、造船、造成、造幣、造林
3:「創」の熟語
創刊、創出、創業、創案、創作、創造、創立、創始
英語の表現
「作る」「造る」「創る」に近い表現は、英語にもあります。それぞれの違いについて、確認しておきましょう。
1:make
具体的な製品の制作、食料の生産、抽象的価値の考案などの表現で幅広く使われます。無形物に対しても使われるので、「作る」に近いと言えるでしょう。表現の例としては、「make sandwiches(サンドイッチを作る)」「make a noise(音を立てる)」「make a document(書類を作る)」「make a fire(火をたく)」など。
2:produce
主に販売目的で、商品や製品などを大量生産することを意味します。映画作品やテレビ番組をつくることにも使われる単語です。使用例としては、「produce salt(塩を生産する)」「produce a film(映画を製作する)」など。
3:build
建設や建造の意味があります。「造る」に近いと言えるでしょう。例文としては、「build a bridge(橋を建設する)」「build a house(家を建てる)」など。
4:create
「創造する、創作する」の意味があります。「creator」だけで、神(世界の創始者)と表現されることも。何かを生み出すというニュアンスがあり、「創る」に近いと言えます。例文としては、「create a work(作品をつくる)」「create a hypothesis(仮説を立てる)」「God created the earth(神が世界を創った)」など。
最後に
「作る」「造る」「創る」は、いずれも「つくる」と発音できるものの、それらの漢字の成り立ちやニュアンス、使い方は異なります。状況に応じて、使い分ける場面も出てくるでしょう。
しかしながら、世間一般的に多く使われているのは「作る」です。机や書類といった具体的なものに限定することなく、罪や概念といったような無形物・抽象的なものにまで使用することができます。基本的には、「作る」を使えば問題はないでしょう。
この記事で紹介した「つくる」のような異字同訓は他にもあります。例えば、「うた」に対しては歌・唄・詩という漢字が当てはまりますね。他にも、「あと」に対しては後・跡・痕・址といった対応する漢字が存在します。これを機に、異字同訓について色々調べてみるのも面白いかもしれませんね。
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