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「拝聴」の意味や使われる場面とは?
「拝聴(はいちょう)」という聴き方は、いったいどんな聴き方なのでしょう? 普通の聞き方と何が、どう違うのでしょうか? 話す人によって違いが生じるのか? それとも話の中身による「拝聴(はいちょう)」するべきなのでしょうか? 考えだすと、色々と疑問が湧いてきます。
社会人である以上「拝聴」すべき時や相手に対して「拝聴」できないとなると、ちょっとマズイ事になりそうな気もいたします。そんな、マズイ事にならないように、「拝聴」の意味、正しい使い方、誰に対してどうのように使用するのか等具体的な例文などをご紹介いたします。この記事を通じて、ビジネスパーソンとして、きちんと「拝聴」できるようになってください。
◆「拝聴」の意味
「拝聴」とは、「聞く」の謙譲語です。「つつしんで聞くこと」を意味しますよ。謙譲語とは、へりくだった表現をすることで、相手に敬意を払います。
また、「拝聴」の「拝」の意味は、「自分の行為に冠して、相手に敬意を示す」こと。他に「拝」を用いた尊敬語として、「つつしんで見ること」を意味する「拝見」や「拝覧」、「つつしんで読むこと」を意味する「拝読」などがあります。
はい‐ちょう〔‐チヤウ〕【拝聴】
[名](スル)聴くことの意の謙譲語。つつしんで聞くこと。「御高説を—する」
デジタル大辞泉(小学館)より引用
◆「拝聴」は講義やビジネスなどで使われる
ビジネスシーンで使われる「拝聴」は主に、取引先や目上の人、自分よりも立場が上の人の話を、聞く時に使われます。相手に敬意を払いながら聞くことを表しますよ。口語でもビジネス文書やメールでも使うことができます。
また、講義や音楽を聴く際にも「拝聴」という言葉を用います。これは、教授や権威のある先生、音楽家に敬意を払うためです。
「拝聴」の使い方を例文でチェック
「拝聴」の使い方の例を見て、実際に活用できるようにしてくださいね。
「山田教授の講義を拝聴しました」
先述しましたが、この例文は講義を聞く際に使う「拝聴」の使用例です。この文では、権威のある先生に対して、敬意を払っています。
「プロのピアニストの演奏を教会で拝聴し、感動しました」
この例文のように、音楽を聴く際にも「拝聴」は使われます。
「社長からのご意見について拝聴しております」
「拝聴しております」とすることで、「拝聴します」というよりも丁寧になります。特に気を遣いたい相手に使うといいでしょう。
「拝聴」の使い方で注意したいことは?
「拝聴」という言葉を使う時に、気をつけたいことを3つご紹介します。心に留めておいてくださいね。
他人の聞く行為に「拝聴」は使わない
「聞く」の謙譲語である、「拝聴」。そもそも謙譲語というのは、へりくだった言い方で、相手に敬意を示す敬語表現です。そのため、自分の動作をへりくだって表すときに使われます。
例えば、「○○部長の意見を拝聴しましたか?」というように他者の行動に「拝聴」を使うのは誤りです。正しくは、「部長の意見をお聞きになりましたか?」となります。
「ご拝聴」は二重敬語
「拝聴」は、この単語のみで謙譲の意味が含まれています。そのため丁寧に表現をしようとして、「ご拝聴」とするのは誤りです。ありがちな誤りではありますが、二重敬語となります。間違って使ってしまうと、かえって相手を軽視しているとも捉えられかねません。
「拝聴」はこの言葉だけでも丁寧だということを覚えておいてくださいね。
「拝聴いたします」は二重敬語
「拝聴いたします」の「いたす」は「する」の謙譲語です。したがって、こちらの使い方も二重敬語であり、誤った使い方となります。しかし、「拝聴いたします」は誤った使い方であるにも関わらず、誤ったまま使っている人が多いのも事実です。もしかしたら、「拝聴いたします」を耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
「拝聴」自体に丁寧さがあって、他者を敬うという意味が含まれていることを覚えておけば、こうした間違いもなくなるのではないでしょうか。
「拝聴」の類語や言い換えとは?
「拝聴」の類語や言い換え表現をご紹介します。ボキャブラリーが増えれば、相手や場面に合わせて使い分けることができますよ。
伺う
「伺う」(うかがう)は「聞く」の謙譲語です。「伺う」とは「聞く」以外にも「訪問する」、「尋ねる」、「問う」の謙譲語でもあります。
例文
・「○○教授の論文発表の日時は、伺っております」
・「部長より話は伺っております」
・「あいにく、○○は席を外しております。わたくしでよければご用件をお伺いします」
承る
「承る」(うけたまわる)は「聞く」の謙譲語です。「つつしんで聞く」という意味になります。先述した「伺う」よりも、敬意が強い表現です。
例文
・「○○教授から次のような指示を承っております」
・「部長から直々に新企画の意見を承ることができて、参考になりました」
・「昨年、有名な先生のお話を承ることができ、大変光栄でありました」
拝聞
「拝聞」(はいぶん)は「聞く」の謙譲語です。目上や取引先の人の様子を人から聞いたと誰かに伝える際に、この言葉を使います。しかし、「拝聴」に比べると使用頻度少ないでしょう。
例文
・「個人的に○○教授のお話を拝聞できて、心より感謝しています」
・「○○社長の貴重なご意見を拝聞できて、光栄です」
・「この計画を成功させるため、大勢の方がご尽力したと拝聞しております」
「拝聴」の対義語はどのようなものがある?
「拝聴」の明確な対義語はありません。「拝聴」のそれぞれの見方から反対の意味を持つ言葉をご紹介します。
お聞きになる
「拝聴」は「聞く」の謙譲語。「お聞きになる」は「聞く」の尊敬語になります。例えば、「人事異動の発表は、お聞きになられましたか?」というように使います。
申す
「聞く」の反対は「言う」。「申す」は「言う」の謙譲語になります。例えば、「部長には、企画書に不備があったと申し伝えました」というように使います。
おっしゃる
「聞く」の反対は「言う」。「おっしゃる」は「言う」の尊敬語になります。例えば、「部長は、この書類には不備があるとおっしゃっていた」というように使います。
最後に
いかがでしたでしょうか? 「拝聴(はいちょう)」の意味、使い方など修得いただけましたか? 「拝聴」という言葉を、深く理解すると“心で人の話を聴く”という意味もあるのかと思います。であるならば、社会的に地位のある人、組織の中で上位の人、目上の人だから「拝聴」ということでもないように思えますよね。
やはり、地位や立場、風態に関係なく、どんな人であろうが、話の中身、言葉の意味、考え方などによって、「拝聴」すべきことがあるのかもしれないですね。そうした事ができるようになってこそ、社会人として「拝聴(はいちょう)」ということができるようになるのではないでしょうか?
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