目次Contents
この記事のサマリー
・「承る」は「うけたまわる」と読み、「受ける」・「聞く」などの謙譲語です。
・ビジネスシーンでは「ご依頼を承りました」「承ることができかねます」などと使います。
・英語では“Certainly.” “understand” など状況に応じた表現を使います。
「承る」は、日々のビジネスシーンで欠かせない敬語のひとつですね。でも、「承知しました」「かしこまりました」など、似た言葉が多く、使い分けに自信がない人も多いのではないでしょうか? この記事では、「承る」の正しい意味と由来から、シーン別の使い方、言い換え表現までを網羅して紹介します。
「承る」について知識を理解し、ワンランク上のコミュニケーションを目指しましょう。
「承る」の意味とは?|まずは正しい理解から
最初に「承る」の基本的な意味を確認しましょう。
「承る」の読み方と基本の意味
「承る」は「うけたまわる」と読みます。へりくだり、相手を立てる謙譲語です。辞書では「受ける」「聞く」「伝え聞く」「引き受ける」の謙譲語になりますよ。
うけ‐たまわ・る〔‐たまはる〕【承る】
[動ラ五(四)]《上位者から命令などを「受け」「いただく」の意の「受け賜る」から》
1 「受ける」の謙譲語。謹んで受ける。お受けする。「大役を―・る」
2 「聞く」の謙譲語。謹んで聞く。拝聴する。「ありがたいお話を―・りました」
3 「伝え聞く」の謙譲語。「―・るところによりますと」
4 引き受ける意の謙譲語。謹んでお引き受けする。「御用命―・る」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)

「承る」古語における成り立ち
「承る」という言葉のルーツをたどると、古語の「受け賜わる(うけたまわる)」にたどり着きます。
「賜わる」は、「いただく」という意味だったことから、「受け賜わる=謹んで受け入れる」という、へりくだった表現として使うようになったそうです。
具体的な例を見てみましょう。古文には「ありがたきお言葉を賜り給ふ(たまわりたまふ)」といった用例があります。この言葉は、目上から恩恵や言葉を受ける際に使いました。
現代の「承る」も、漢字が異なりながらもこの流れを受け継いでおり、「上位者からの命令や依頼を謹んで受ける」という丁寧さを保持しています。
「承る」のビジネスシーンでの使い方と例文
「承る」は、電話応対やメール、会議など、状況に応じて適切に使うことで、相手に安心感を与える使い方ができます。具体的な例文を見ていきましょう。
「ご予約を承りました」
電話対応で頻繁に耳にするフレーズです。
例えば、ホテルやレストランの予約を受け付ける場面では「ご予約を承りました」と伝えることで、依頼を正式に受け入れたことを明確に示せます。
「予約を受け付けました」と言うよりも、相手に安心感を与える丁寧な表現です。
例:「はい、○○レストランでございます。ご予約を確かに承りました」
「承ることができかねます」
依頼を丁寧に断る場合に使う表現です。「承ることができません」よりも柔らかく、相手に配慮を示すニュアンスがあります。ビジネスメールでは、依頼を断る際の定型句として用いることが多いです。
例文:「誠に恐れ入りますが、本件につきましては承ることができかねます」
「ご依頼の件、承りました」
メールで依頼を受けた際に役立つ便利な表現です。
文章の中では「承りました」を文末に置くことで、簡潔で丁寧な印象になります。この一言には、依頼を受けただけでなく「責任を持って対応します」という意思を伝える重要な役割があります。
例文
「件名:Re: 〇〇の件
〇〇様 いつも大変お世話になっております。
ご依頼の件、確かに承りました。早急に対応いたします」

「承る」と似た意味を持つ言葉との違い
「承る」は、「賜る」「承知」「了解」などの似た言葉と混同されがちです。それぞれの言葉と違いを正しく理解しておけば、敬語表現をスマートに使い分けることができますよ。
「賜る(たまわる)」との違い
「賜る」は、目上の人から「物」や「恩恵」をいただくときに使う謙譲語です。一方、「承る」は、依頼や伝言、情報など形のないものを受けるときに用います。
例文:
「ご厚情を賜り、誠にありがとうございます」(=恩恵をいただく)
「ご用件を承りました」(=依頼を受ける)
「承知」・「了解」との違い
「承知」と「了解」はどちらも「相手からの要求や行為を理解て、認めたり許したりすること」を意味します。「承知」は、特に申し入れや頼みを聞き入れることを指します。一方、「了解」は、事情や内容などを理解し、認めることを指しますよ。
「承る」は謙譲語ですが、「承知」と「了解」はどちらも名詞で日常語です。
会話例:
社外クライアントに:「ご依頼の件、確かに承りました」(=謙譲語)
上司に:「承知いたしました。本日中に対応いたします」(=謙譲語の「いたす」を続けて、敬語に)
同僚に:「了解です、あとで資料を送りますね」(=「です」を付けて丁寧に表現)
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)
よりスムーズに伝わる!「承る」の言い換え表現と使い分け
「承る」は謙譲語ですから、場面によっては他の言い換え表現を使った方が柔らかく伝わることもあります。社外や上司向け、同僚や後輩向けなど、相手との関係性によってふさわしい言葉は変わるため、使い分けが大切です。
フォーマル度の違い
社外や上司へは、「承りました」「かしこまりました」を用いるのが基本です。
例文
「ご依頼の件、確かに承りました」
「かしこまりました。本日中に対応いたします」
一方、相手が同僚や部下の場合は、「了解しました」「承知しました」と表現しても問題ありません。
例文
「了解しました。あとで資料を共有しますね」
「承知しました。その件は後ほど確認します」
柔らかい言い換え
「承る」はやや堅苦しく感じることもあります。親しみやすさを出したい場合には「お受けいたします」「お引き受けいたします」といった表現もおすすめです。相手との距離感を和らげ、協力的な姿勢を示すことができます。
例文
「その件につきましては、私が責任を持ってお引き受けいたします」
「ご要望の内容は、お受けいたしました」

「承る」を英語で表現するには?
英語表現では、「受ける」「聞く」といった意味の単語を使い分ける必要があります。ここでは、ビジネスシーンで特に役立つ実用的なフレーズを紹介します。
“Certainly.”
“Certainly.” は、相手の依頼や注文を快く引き受けるときに使います。ビジネスシーンやフォーマルな場面で「かしこまりました」と応じる表現です。
例文:“Certainly, I have received your order.”
(ご注文を承りました。)
“understand”
「謹んで聞く」という場面では“understand” が使えます。
例文:“I understand the matter.”
(「その件については承っております。)
“We will comply with your request.”
“We will comply with your request.”(ご依頼の件、承りました。)は、相手の依頼内容に確実に応じることを伝える、丁寧でフォーマルな表現です。
“May I help you? / What can I do for you?”
お店や受付などで、相手に用件を尋ねるときの表現です。「何かお手伝いできることはありますか?」というニュアンスで、「ご用命を承ります」という場面で使います。
例文
‟Good morning, what can I do for you today?”
(おはようございます、本日のご用命は何でしょうか?)
参考:『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)
「承る」に関するFAQ
ここでは、「承る」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q. 「承る」は尊敬語ですか?
A. いいえ、謙譲語です。
「承る」は自分をへりくだらせて相手を立てる表現であり、尊敬語ではありません。
最後に
「承る」は「受ける」「聞く」の謙譲語で、ビジネスシーンに欠かせない言葉です。電話対応での「ご予約を承りました」やメールでの「ご依頼の件、承りました」など、相手に敬意を示しながら、自身の責任感を伝えることができます。「賜る」「承知」「了解」といった似た言葉との違いを理解しておけば、スマートな言葉選びが可能になりますよ。
正しい理解に基づいて使いこなせば、相手に安心感と信頼を与え、円滑な人間関係を築くことができるでしょう。この記事が、あなたの言葉遣いをさらに洗練させるヒントになれば幸いです。
TOP画像/(c)Adobe Stock