「ご査収の程」の意味や読み方とは?
友人や年齢の近い知人とのコミュニケーションにおいて、言葉遣いに改めて気をつけるとか、表現に困るということは、よほどの難問や正解がない話題以外、あまりありませんよね。
ところが、年齢や立場が離れた人とのコミュニケーションとなると、色々と気をつけないといけないことが発生。状況によっては、これまで使ったことのない「難解な言葉や表現」を使わないといけなくなる場合もあります。
今回取り上げる「ご査収の程」は、そんな「難解な表現」のひとつ。ここでは「ご査収の程」の意味や読み方、具体的な使用例、言い換え表現、類語など詳しく解説していきます。ビジネスパーソンとして、「ご査収の程」の正しい使い方をしっかり身につけていきましょう!
◆「ご査収の程」の意味と読み方
まず、読み方ですが「ご査収の程」(ごさしゅうのほど)と読みます。この「ご査収」は、ビジネス文書、ビジネスメールで頻繁に使用される言葉です。分解しながら、意味について説明しましょう。
「ご」は尊敬語、「査」は「よくみて調べる、検査する」、「収」は「おさめる、取り入れる」という意味があります。したがって「ご査収」とは、「内容をよく確認してお受け取り下さい」といった意味の敬語表現になります。
さらに「ご査収」に「程」をつけることで、婉曲的な柔らかな言い回しにすることができます。「ご査収の程(ほど)」に使われている「程」ですが、「ある広がりをもった空間。あいだ」という意味になります。「ご査収の程」は、ビジネスにおいて様々な場面で使える丁寧な敬語です。しっかりと用法をマスターしましょう。
◆「ご査収の程」を実際のビジネスシーンで使う時の注意点
「ご査収の程」の意味を理解しても、正しい使い方ができなければ意味がありませんよね。「ご査収の程」の具体的な使い方を説明する前に、ビジネス等で使う際の注意点を幾つか挙げておきます。
添付するものが、何もない場合には使わない
内容を、“よく確認して受け取るべき物”がないのに「ご査収」することはできないですよね。ですから、「ご査収の程」を使用すると間違った使い方になります。
ビジネス文章の定型句として覚えてしまって、単に締めくくりの言葉と同じような感覚で使ってしまうと「恥ずかしい」失敗になってしまいますので注意しましょう。
より丁寧な表現にした方が良い場合も
単に「ご査収ください」とすることもできます。しかし、尊敬語の「ご」を付けたとしても、ややキツイ言葉に感じる人もおられるでしょう。ですから「ご査収ください」だけでなく、「ご査収くださいますようお願いいたします」などの表現をするのがお勧めです。
また、相手へ気遣いとして「お忙しいとは存じますが、ご査収くださいますようお願いいたします」とすると、さらによくなります。
漢字の正しい表記を知っておきましょう
同じ、表現でも漢字の使い方、表記によって随分と感じ方が変わるとは思いませんか? 具体的に比べてみましょう。
・ご査収のほどよろしくお願いします。
・御査収の程、宜しくお願い致します。
漢字が多くなったことで「堅苦しい」とお感じになりませんか? また、文化庁が公開している常用漢字表の中でも、「宜」の表記は「ギ」のみで、「よろしく」のときには使用しないことが記載されています。
「ご査収」自体が、堅い表現ですので、できるだけ平仮名(ひらがな)表記にして「ご査収のほどよろしくお願いします。」とする方が柔らかくていいですよね。
「ご査収の程」の使い方は? 例文でチェック
電子メールが普及している現在では、資料などをメールに添付する機会が増えています。ビジネス文書やメールで使われる「ご査収の程」の例文を紹介いたします。
1:「お見積書を、本メールに添付致しますので、ご査収の程お願いします」
ビジネスでは、取引相手と様々な書類や物品をやり取りすることが多くなります。そんな時に利用できる文例です。他にも「企画提案書を添付致しましたのでご査収ください」や「領収書を同封致しますのでご査収ください」(郵送の場合)というように使うことができます。
2:「ご依頼いただいておりました企画提案書を添付しております。ご査収の程、よろしくお願い申し上げます」
より丁寧に依頼の気持ちを表現したい時に使える表現です。コンペティションの提案書などを送付提出する際などに利用できる文例です。他にも「新しい価格表を送付申し上げます。ご査収の程、よろしくお願い致します」「お見積書を同封いたしております。ご査収の程、よろしくお願い致します」(郵送の場合)というように使うことができます。
3:「性能比較資料を添付して送付申し上げます。何卒ご査収の程、よろしくお願い致します」
相手に敬いの気持ち、尊敬の気持ちを色濃く表現したい場合には、「何卒」を付け加えると良いでしょう。組織の上層部やビジネス案件の意思決定権を持っている方へ、資料を送る時などにも利用できる表現です。
「ご査収の程」の類語にはどのようなものがある?
続いて、相手や状況に応じて言葉を使い分けられるよう、類語をご紹介しましょう。
お受け取りください
「ご査収」は、「確認して受け取る」という意味ですから、それを平易な言葉で表現したのが「お受け取りください」になります。丁寧な言葉遣いとしても、よく出てくる表現ですよね。
利用例:ご確認の上、お受け取りください。
ご高覧ください
提案書や企画書のようなドキュメントの場合には「ご高覧ください」を使用することができます。
利用例:公開されたRFP(Request For Proposal)に基づき、提案書を提出させていただきます。何卒ご高覧ください。
ご検収願います
「ご査収」に似通った表現として「ご検収」という言葉があります。「検」にも同様に「よく確認する、調べる」といった意味があります。
しかし、「ご検収」とすると「納品されたものが、注文した通りであるか否かを確認してください」という強い意味が込められています。受け取る側にも、責任が生じることにもなります。
利用例:システムの納入にあたり、誤作動の有無についてご検収の程よろしくお願いします。
最後に
どうでしょうか?「ご査収の程」は、あなたにとって「難解な表現」ではなくなったでしょうか?
さて、「ご査収の程」の使い方をご理解されたあなたへ、1つご質問をしたいと思います。「ご査収の程、よろしくお願いします」という文面を受け取ったあなたは、どのように返事をすればよいのでしょうか? あなたが、行き届いたビジネスパーソンになるためのアドバイスを差し上げます。
適切な返信としては…「送付いただいた資料は確認させていただきました。特に問題ございませんでした。ご送付いただきまして、ありがとうございました」とするのが良いでしょう。どうぞ、ご活用ください。
TOP画像/(c)Shutterstock.com