「名を捨てて実を取る」の意味と読み方とは
「名を捨てて実を取る」とは、体裁や名誉などの「名」を犠牲にしても、実質的な利益である「実」を得るほうを選ぶことです。次のように使います。
・彼は有名大学に合格したが、結局はあまり名の知られていない大学に進学した。その大学にしかないコースが彼の興味を引いたらしい。名を捨てて実を取ったとも言えるだろう
・名を捨てて実を取る彼のスタイルは、私の好むところではない
「実」は「み」ではなく「じつ」と読みます。
名を捨てて実を取る
出典:小学館 デジタル大辞泉
体裁・名誉などを犠牲にしても、実質的な利益を得るほうを選ぶ。
「名を捨てて実を取る」と類似する意味の言葉
「名を捨てて実を取る」のように体裁や名誉よりも実利を選ぶことを指す言葉には、次のものが挙げられます。
・名を取るより得を取れ
・花より団子
・詩を作るより田を作れ
・理詰めより重詰め
・色気より食い気
いずれも類似する意味の言葉ですが、使われるシチュエーションやニュアンスが少々異なります。それぞれ例文を通して、違いを見ていきましょう。

名を取るより得を取れ
「名を取るより得を取れ」とは、実益の伴わない名誉を求めるよりは、実利を取るほうがよいという意味の言葉です。「名を捨てて実を取る」の「実」と「名を取るより得を取れ」の「得」は、いずれも「名」と対照となる言葉として使われています。
・ブランドの知名度で選ぶのもいいが「名を取るより得を取れ」と言うから、機能性でも選んでみてはいかがだろうか
・彼の口癖は「名を取るより得を取れ」だ。彼の行動を見れば、口先だけではないことがよく分かる
利益を第一に考えるほうが良いという意味でも使われます。
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花より団子
「花より団子」とは、風流より実利のほうを選ぶことです。
・彼は花より団子だから、花見に行ってもお弁当のことしか頭にないよ
・歌が上手だからといって歌手になれるレベルでもないし、花より団子というから、身のためになる趣味を持つほうがよいかもしれないね
外観よりも実質を尊ぶことを「花」と「団子」に例えた言葉でもあります。
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詩を作るより田を作れ
「詩を作るより田を作れ」とは、文学などの実生活には役立たない事柄よりも、実利のある仕事をしたほうがよいという意味の言葉です。
・彼女はバイトをせずにミュージカルやコンサートへ行っているため、親から「詩を作るより田を作れ」と言われたらしい
・国が貧しいときは「詩を作るより田を作れ」は説得力のある言葉だが、ある程度ゆとりが生まれると、芸術やスポーツなどにも目が向くものだ
「詩」も「田」も作るものですが、心の栄養になるものと身体の栄養になるものという違いがあるといえるかもしれません。
理詰めより重詰め
「理詰め(りづめ)より重詰め(じゅうづめ)」とは、堅苦しい理屈よりも、ご馳走の詰まった重箱のほうがよいという意味です。
・今日の講義はその辺にして、理詰めより重詰め、お弁当をいただきましょう
・どんなに素晴らしい話をしても、興味のない人には響かないものだ。理詰めより重詰め、まずは食事でも楽しもう
「理詰め」と「重詰め」はいずれも「詰め」を使う言葉ですが、「理論」という形のないものよりは、目でも口でも楽しめる「お重」のほうが実益があるといった意味で使われます。
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色気より食い気
「色気より食い気」とは、色欲よりも食欲のほうが先であることを意味する表現です。
・大臣の座が手に届きそうだと言われるが、色気より食い気、私は名前よりも実務で社会に貢献したい
・彼は昔から色気より食い気だ
「色気より食い気」の「色気」は、「色欲」だけでなく、「見た目」や「虚栄心」といったニュアンスも表現することがあります。そのため、見栄を捨てて実利を取るという意味でも使われます。
「名を捨てて実を取る」とは反対の意味の言葉
「名を捨てて実を取る」とは反対の意味を表す言葉としては、次のものが挙げられます。
・得を取るより名を取れ
・武士は食わねど高楊枝
いずれも「実」よりも「名」を選ぶ意味を持つ表現です。ニュアンスの違いを見ていきましょう。

得を取るより名を取れ
「得(とく)を取るより名を取れ」とは、金もうけや目先の利益より名誉のほうが大切だという意味の言葉です。
・いくら儲かるからといって、人を騙すような売り方は感心しない。得を取るより名を取れと言うから、自分の名前に恥じない仕事を選んでほしい
・得を取るより名を取れというけれど、名だけで生活していくことは難しい
「名を捨てて実を取る」とは真逆の意味の言葉です。いずれもある場面においては真といえますが、矛盾が生じないように状況に応じて使い分けることが必要です。
武士は食わねど高楊枝
「武士は食わねど高楊枝」とは、武士は食事ができないほど貧しくても、まるで食べたかのように楊枝を使うものだという意味です。
・気持ちにまったく余裕はないが、武士は食わねど高楊枝の精神だ。余裕のなさはおくびにも出さないように振る舞った
・武士は食わねど高楊枝というけれど、腹が減っては戦ができぬともいう
武士の体面を重んじる気風を表現した言葉ですが、現代ではおもに「やせ我慢」といった意味で使われています。お腹が空いているけれども言いたくない、お金に困っているけれども周囲から悟られたくないといった状況で使用されることも珍しくないでしょう。
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状況に合わせて「名」や「実」を選ぼう
「名」も「実」もどちらも重要なものであり、どちらかのために片方を捨てる必要はありません。
しかし、どちらかしか選択できないときは、状況に合わせて「名」や「実」を選ぶことも必要です。状況に応じたことわざや言い回しを使い、選択が間違っていないと主張するのも一つの方法でしょう。
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