日本文学や映画などで、登場人物が自分のことを「小生は…」と言っているのを見聞きしたことはありませんか? または、メールのやり取りで 目上の人が「小生は」と言っているのを見て、「小生ってどういう意味?」と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。そこで本記事では、「小生」の意味や使う際の注意点、言い換え表現などを見ていきましょう。
「小生」とは?
「小生」は、「しょうせい」と読みます。正しい意味を辞書で確認してみましょう。
[代]一人称の人代名詞。男性が自分をへりくだっていう語。多く、手紙文に用いる。「―もつつがなく日々を過ごしております」
[補説]ふつう、自分と同等か、目下の人に対して使うものとされる。例えば、上司に「本日、小生は体調不良のため、会社を休みます」と言うと、横柄な発言と受け取られかねない。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「小生」は、「私」や「僕」のような、一人称の人代名詞です。男性が自分自身のことを話す時に使う言葉なので、女性が使うことはありません。また、相手への敬意を込めるために、自分がへりくだっている表現であることを頭に入れておきましょう。
使い方と注意点を例文でチェック!
「小生」の意味はわかっていても、実際に使ったことがないので、どのように使うのが正解なのかわからないという方も多いでしょう。「小生」は、自分がへりくだる丁寧な一人称ではありますが、使うときには注意点も。どのような場面で使うのが適切なのか、例文で確認してみましょう。
1:小生もつつがなく日々を過ごしています。
「小生」は、基本的に話し言葉ではなく、文語として手紙などで用いられます。手紙で、相手に対して「お元気ですか?」などと聞いた後に、「わたくしも、あい変わらず元気に過ごしています」というような意味合いです。親しい人と手紙やメールを通して、近況報告をする際に用いられることが一般的です。
2:小生もその会に出席いたします。
目上の人とのメールのやり取りで、このような表現を目にした方もいるのでは? 「わたくしもその会に出席します」という意味です。「小生」は、上司や年上の人が、部下や後輩に対して使う言葉。そのため、目上の人とのやり取りで、自分のことを「小生」と言うことはできません。目上の人に使うと、無礼で生意気だと思われる可能性もあるので注意しましょう。
「小生」の言い換え表現は?
「小生」のように、男性が自分のことをへりくだっていう言葉には、「手前」「拙者」「某」などが挙げられます。いずれも古風な表現なので、日常生活で使う機会はあまりないかもしれませんが、豆知識として覚えてみてはいかがでしょうか?
1:手前
「手前(てまえ)」には、「自分の目の前」という意味の他に、一人称の人代名詞として用いられます。「小生」と同じように、自分のことを謙遜していう言葉で、「わたくし」と同じような意味合いがありますね。時代劇では、「いつも手前どもを贔屓にしてくださり、ありがとうございます」というように、店主がお客に対して、へりくだって話すときに使われます。
(例文)
・手前どもの店では扱っておりません。
・手前の生まれは信州です。
2:拙者
時代劇でよく聞くイメージのある「拙者(せっしゃ)」という言葉。意味は、以下の通りです。
[代]一人称の人代名詞。武士が多く用い、本来は自分をへりくだっていう語であるが、尊大な態度で用いることもある。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
主に武士が使うため、「小生」と同じように男性の一人称となります。昔は、武士が目下の人や同輩に対してへりくだって言う言葉でしたが、偉そうな態度で用いられることも。現在では、アニメのキャラクターが自分のことを「拙者」と言ったり、親しい友人とふざけている時に使うこともありますね。
(例文)
・拙者の考えを述べよう。
・拙者はこれから出かけて参る。
3:某(それがし)
「某」も、一人称の人代名詞で「わたくし」と同じ意味合いがあります。もともとは、自分のことをへりくだって言う言葉でしたが、のちに尊大な態度で用いられることも出てきました。こちらも男性が使う言葉です。
(例文)
・某は何事も存じませぬ。
・某は五右衛門と申す。
「小生」のビジネスで使える言い換え表現は?
もし、ビジネスシーンで自分のことを述べる場合、「小職」や「下名」などが適切です。それぞれの意味を詳しくチェックしてみましょう。
1:小職
「小職(しょうしょく)」の意味は、以下の通りです。
1[名]地位の低い官職。
2[代]官職についている人が自分をへりくだっていう語。小官。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「小職」は、官職にある人が公の場で使う一人称です。公務員などの官職についている人物が使う点が、「小生」との違いと言えるでしょう。「小職」も謙虚な表現ではありますが、上の立場の人に対して、自らを「小職」と呼ぶのは誤用です。
2:下名
「下名(かめい)」の意味は、以下の通りです。
[名]以下に記した氏名。また、その者。
[代]一人称の人代名詞。自分をへりくだっていう語。わたくし。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「下名」もまた、自分をへりくだっていう一人称。こちらは「小生」とは違い、性別関係なく利用できます。また、「小職」とは違い、官職についているなどの条件がないため、利用範囲は広いと言えるでしょう。ただし、人によっては丁寧すぎて仰々しいと感じる可能性もあります。
最後に
「小生」は、男性が自分をへりくだっていう一人称です。主に、親しい人との近況報告や部下との業務連絡で用いられます。丁寧な表現ではありますが、現代ではあまり多く使われる言葉ではないため、人によっては古臭い、仰々しいと捉えられることも。あまり親しくない間柄の人に対しては、「わたくし」を使った方が無難と言えるでしょう。一人称を表す言葉が豊富であることも、日本語の面白さを感じますね。
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