「自己矛盾」の意味は?
自分の中で、言動のつじつまが合わないと感じた時、「自己矛盾に陥っている」と思うことはありませんか?
「自己矛盾」は日常で使う言葉ですが、正しい意味を調べたことがある人や、説明できる人はそれほどいないかもしれません。
本記事では「自己矛盾」について、意味や使い方などを調べてみました。イメージはつかめていても、意味を説明するのは難しそうな「自己矛盾」について見ていきましょう。
辞書の意味
【自己矛盾】
読み方:じこむじゅん
論理や実践において、自己の中に自己を否定するものを含んでいること。「—に陥る」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「自己矛盾」を辞書で調べたところ、上記の意味があることがわかりました。
「自己」は自分自身のこと。「矛盾」は、二つの物事が食いちがい、つじつまが合わないことを意味します。「自己矛盾」とは、自分の発言と行動が食いちがい、自分自身の中で相反する状態にあること。自分の言動が一致しないことを表すといえるでしょう。
由来は?
「自己矛盾」の由来はわかっていません。
「矛盾」については、『韓非子』の故事が由来とされています。「どんな盾も突き通す矛と、どんな矛も防ぐ盾」を売っていた男が、客から「その矛でその盾を突いたらどうなるのか」と尋ねられ、答えることができなかったことから「矛盾」という言葉を使うようになったそうです。
「自己矛盾」の使い方
ここからは、「自己矛盾」の使い方を見ていきましょう。例文を参考にしてくださいね。
【例文1】彼女が主張することは、誰が聞いても自己矛盾していると私は思う。
言っていることと行なっていることが違う、これは誰にでもあることでしょう。矛盾がない人などいませんから、ある意味自然なことといえます。しかし、自分の意見や見解を主張するなら、つじつま合わせはしておきたいもの。そうでないと、信用を得ることはできないでしょう。
【例文2】部長はよく「積極的に意見やアイデアを出すように」というが、これまで採用された試しがなく、むしろ即却下される。質問しても答えてくれず、自己矛盾も甚だしい。
ビジネスシーンでも「自己矛盾」だと感じるシーンは多々あるでしょう。例文が表す内容は、どこの職場でもよくあることかもしれません。他人からの指示や提案の内容が一致しない場合や、発言と実際の行動が食いちがう場合、「自己矛盾」を感じるはずです。
【例文3】言動が一致しない自己矛盾に気づいたが、どうすればいいかはわからない
自分の言っていることとやっていることが異なるのは、よくあること。「自己矛盾」に気がつくと、自分で自分を否定するような状態になりますよね。矛盾を解消しようにも、どうすればいいかがわからず、悩むことも多いでしょう。
【例文4】彼が言い訳を続ければ続けるほど、自己矛盾が露呈していった。しかし、当の本人はそのことに気づいておらず、謝る様子もない。こうなると、もう信用されなくなるだろう。
言い訳を重ねたことが信用や信頼を失わせたというのは、よくある話かもしれません。例文は、言い訳を重ねた上に謝罪がなかった人のことを示しています。自分に非がある場合は、言い訳をせず、素直に謝るほうがいいですね。
「自己矛盾」を会話で使おう
「自己矛盾」は会話で使うこともできます。会話例を見ていきましょう。
会話例
リビングで、夫と妻が就職の決まった大学生の娘について話しています。
夫「就職が決まってホッとしたけれど、勤務地が海外というのは予想外だったな」
妻「そうね。でも、第一志望だと言っていたし、ありがたいことよ」
夫「自立して欲しいが、この家から出て欲しくない。自己矛盾だとわかっているけれど、どうにもできない。あの子が心配で仕方ないよ。近場で就職して、家から出勤して欲しいというのが本音だけど、信じて送り出すしかないね」
妻「そうね、あの子の人生だから、私たちは口出しできない。親ができるのは応援だけよ」
就職をきっかけに、親から自立する人は多いでしょう。子供の自立は喜ばしいことですが、親は寂しく感じ、不安になりますよね。会話例は、娘が海外に行ってしまうことを寂しく感じる夫婦の心情を表しています。夫の感じている「ホッとする反面、心配」も「自己矛盾」の一つといえるでしょう。
「自己矛盾」と似た言葉
ここからは、「自己矛盾」と似た言葉を見ていきましょう。「自家撞着」「矛盾撞着」「パラドックス」を紹介します。
「自家撞着」
「自家撞着」とは、同一人の文章や言動が前後食い違って、合わないことの意。「じかどうちゃく」と読みます。「自己矛盾」と同じ意味を表すと考えていいでしょう。「自家撞着に陥る」「自家撞着する」のように使う言葉です。
《例文》パートナーと大げんかになった。怒鳴り合ううちに、自家撞着に陥っていると気づいたが、どうにもならず意地を張り続けてしまった
「矛盾撞着」
前後が食いちがい、論理が合わないことを意味するのが「矛盾撞着」です。「むじゅんどうちゃく」と読み、「矛盾撞着に陥る」「矛盾撞着をきたす」のように使われています。
《例文》最初はおもしろいと感じたドラマだが、登場人物が多過ぎて、矛盾撞着に陥ってしまい、もはや理解ができない。
「パラドックス」
「パラドックス」とは、ある命題から正しい推論によって導き出されているようにみえながら、結論で矛盾をはらむ命題を指す言葉。英語の「paradox」が由来のカタカナ語です。
「自己矛盾」は、相反する二つの事柄が同時に存在し、対立するさまを表しますが、「パラドックス」は、正しいように見えるが間違っている、あるいはその逆を表します。二つの言葉の意味や前提となる状態は異なりますので、違いを把握しておきたいですね。
《例文》多くの科学者や哲学者は、長期にわたってパラドックスに挑んでいる
最後に
「自己矛盾」について、言葉の意味や使い方、似た言葉などを紹介しました。「自己矛盾」に陥ると、自分の言ったこととしたことが食いちがい、自分でもどうしていいかわからなくなりがちです。
そのような状態になった場合は、いったんその場を離れるなどして、気持ちを落ち着けるといいですね。離席が難しい場合は、少し時間をもらうなどして、冷静になることを意識しましょう。
TOP画像/(c)Adobe Stock