目次Contents
そもそも「私事で恐縮ですが」とは?
「私事」は“わたくしごと”と発音し、個人的な用件やプライベートな事柄を指します。また「恐縮ですが」は、相手に迷惑をかけることをお詫びする表現です。
つまり「私事で恐縮ですが」は「個人的なことで申し訳ありませんが…」や「公の場で私用を持ち出してしまい恐縮ですが…」といったニュアンスのフレーズです。
具体的には、業務について「休みます」や「遅れます」など周囲に迷惑をかける事柄を告げる際に、その理由を切り出す場面で用いられています。
「私事で恐縮ですが」がよく使われているシーン

「私事で恐縮ですが」が、よく使われるシーンを解説します。なお、この言葉はプライベートの会話ではなく、ビジネスシーンで用いるのが一般的です。
♦︎退職・異動の挨拶
「私事で恐縮ですが、7月末をもって退職することとなりました」などと、自分の異動や退職などを報告する場面では、このフレーズを添えることで個人的な報告であることへの配慮が伝わります。
♦︎結婚や出産の報告
ビジネスシーンで結婚や出産の報告をするときには「私事で恐縮ですが、このたび入籍いたしました」などと用いられています。
祝福されるべきお祝い事でも「私事で恐縮ですが」とひと言を入れることで、控えめな印象を与えやすいでしょう。
♦︎忌引きや私用での休暇申請
急な私用で忌引きや休暇をとる必要があるときに「私事で恐縮ですが、明日は父の手術が決まったので、お休みをいただきたく存じます」などと使われています。
この一言を添えることで、丁寧な印象になりやすいでしょう。
「私事で恐縮ですが」の避けるべき使い方

「私事で恐縮ですが」はフォーマルな場面において、目上の相手と話すときや公の場で配慮を示したいときに使うフレーズです。
そのためむやみに使ってしまうと、誤用になる可能性もあります。
♦︎個人的すぎる話に使うのはNG
「私事で恐縮ですが」は、ビジネス上の視点から報告する意味のある私事に使う表現です。
そのため、あまりに個人的であったり、業務に無関係な内容には不適切です。
たとえば「私事で恐縮ですが、昨日恋人と喧嘩しました」など、業務と無関係な話題に使うと場違いな印象が強まるでしょう。
♦︎“恐縮”する必要のない話にはNG
「私事で恐縮ですが」はワンフレーズで用いられている言葉ですが、文中に“恐縮”という言葉が入っています。そのため、“自分のせいで、相手に迷惑をかけて申し訳ない”という気持ちを込めた話題に用いるのが正しく、単なる定型文や挨拶文として使うと意味がずれてしまう場合もあります。
たとえば「私事で恐縮ですが、週末は旅行に行ってきました」など誰にも影響のない話題で用いるのは、違和感のある使い方です。
♦︎言いすぎるのはNG
「私事で恐縮ですが」を頻繁に使うと謙遜しすぎて「重たい印象」や「わざとらしさ」を与えやすいだけでなく、心のこもっていないイメージから軽い印象も与えてしまいます。
くどい印象を避けるためにも、適切な話題のときのみに用いましょう。
「私事で恐縮ですが」の言い換え・類似表現もマスター

「私事で恐縮ですが」は便利なフレーズである一方で少し堅い印象もあるため、シーンに応じて言い換えていきたいものです。
アラサー世代が使いやすい言い換え・類似表現をまとめました。
♦︎「個人的なことで恐縮ですが」
「私事」を「個人的なこと」と言い換えるだけで硬い印象がやわらぎ、口語に適した柔らかい表現に変わります。
「個人的なことで恐縮ですが、来週は引っ越しがあるためにお休みをいただく予定です」などと用いると自然でしょう。
♦︎「プライベートな話で恐縮ですが」
日頃からカジュアルに会話をする仲や堅苦しくなくても問題のない社内メールなどでは「プライベートな話で恐縮ですが」と言い換えるのも自然です。
「プライベートな話で恐縮ですが、先月結婚をしました」などと用います。
♦︎「勝手ながら…」
特に事情を説明しなくても済むときならば「勝手ながら…」という言葉に置き換えることもできます。
「私事で恐縮ですが」では大袈裟すぎる話題のときに、使いやすいフレーズでしょう。
「勝手ながら、明日は午後から早退させていただきます」などと用います。
「私事で恐縮ですが」
「私事で恐縮ですが」は、フォーマルな場面で自分の個人的な事情を伝えたいときに役立つ表現です。
ただし使いすぎや場違いな場面では不自然な印象を与えるために、相手や状況に応じた言葉選びが大切でしょう。
ビジネスにおいては「謙虚な印象」が信頼につながる場合も少なくありません。相手に配慮をしながら私的な事柄を話したいときに「私事で恐縮ですが」を上手に活用していきましょう。
TOP画像/(c)Adobe Stock

並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。