大童の意味や読み方とは?
大童は、「おおわらわ」と読みます。地名や人名のときは「おおわら」と読まれることが一般的です。ただし、地名や人名には幾通りもの読み方があるため注意が必要です。
大童には、次の2つの意味があります。
1. 一生懸命になること
2. 髷(まげ)の結びが解けて髪がばらばらになること
それぞれの意味を、例文をとおして見ていきましょう。
意味1. 一生懸命になること
一生懸命になることや夢中になって何かに取り組むこと、また、その様子を表すときに「大童(おおわらわ)」という言葉が使われることがあります。
・式典の準備のために大童になる
・なんとか開会式に間に合わせようと大童だ
・大童で走り回る役員たちの様子から、会長が到着されたことがうかがえる

意味2. 髷の結びが解けて髪がばらばらになること
髷(まげ)の結びが解けて、髪がばらばらになっている様子を「大童(おおわらわ)」と表現することがあります。
・どこで結びがほどけたのか、彼は大童になっている
・大童の頭を振り乱してこちらに走って来る様子は、鬼気迫るものがあった
・髻(もとどり)を切られて大童になった頭を隠そうとした。
かつて童(子ども)は髪を結ばなかったことから、髪をまとめていない大人を指して「大童(大きな子ども)」という意味で使われるように。なお、髪を振り乱して奮戦する様子から、一生懸命になることや夢中になることの意味でも「大童」という言葉が使われるようになったとされています。
おお‐わらわ〔おほわらは〕【大▽童】
出典:小学館 デジタル大辞泉
[名・形動]
1 《2が原義》一生懸命になること。夢中になってことをすること。また、そのさま。「記念式典の準備に—な役員たち」
2 髷 (まげ) の結びが解けて髪がばらばらになっていること。また、そのさま。童は髪を結ばなかったところから、大きな童の意でいい、多く、ざんばら髪で奮戦するさまに用いる。
「石切といふ太刀ぬいて—になり」〈平治・下〉
大童の由来となる古典での実例
大童は、現代でも使用する言葉です。しかし、「大人は髪をまとめているもの」という共通認識があった時代に生まれた言葉と考えられるため、古典の中でもしばしば見られます。玉塵抄(ぎょくじんしょう)と平治物語での実例を見ていきましょう。

例1:玉塵抄
室町時代に執筆したとされる玉塵抄では、次のように「大童」が文中に使われています。
・髪を打みだいて、大わらわになって祭りをないたぞ
ばらばらになった髪を振り乱し、夢中になって祭りに参加している様子が表現された文章です。なお、玉塵抄のように「~抄」と名付けられている書物は、「抄物(しょうもの、しょうもつ)」というカテゴリーに分類されます。
抄物とは、室町時代から江戸時代ごろに僧侶や学者などによって作成された注釈書や講義記録のことで、口語的な言葉遣いで注釈や講述がまとめられた書物です。当時の生きた言葉遣いを知るうえで高い価値を持つ書物といえるでしょう。
例2:平治物語
13世紀初期にまとめられたとされる平治物語では、次のように「大童」という表現が使われています。
・冑(かぶと)も落ちて大わらはになり給ふ
かぶとが脱げたときにまとめていた髪がほどけたのか、それとも髪をまとめていない状態でかぶとを被っていたのかわかりませんが、いずれにしても髪がばらばらになっている様子を人前にさらしたようです。戦でてんやわんやになっている様子がうかがえます。
なお、平治物語とは、鎌倉初期の軍記物語です。1159年に起こった平治の乱の顛末を描いた書物で、保元物語や平治物語と同様、琵琶法師によって各地に伝えられたといわれています。
大童の言い換えに使える言葉
大童と同じく、一生懸命になっている様子や夢中な様子を指す言葉としては、次のものが挙げられます。
・必死
・一心不乱
・死に物狂い
・生真面目
・本気
いずれも大童の言い換えに使えますが、まったく同義というわけではないため、ニュアンスの違いを理解しておくことが必要です。それぞれ例文をとおして、使い方や使用に適したシチュエーションを見ていきましょう。

必死
必死とは、死ぬ覚悟で全力を尽くすことやその様子を指す言葉です。次のように使います。
・大きな野犬に追いかけられ、必死に逃げた
・切羽詰まった状況なのは、彼の必死の形相を見ればわかる
・必死で受験勉強に取り組み、第一志望の合格を勝ち取った
一生懸命に物事に取り組む様子は大童と同じですが、大童はどちらかといえば「取り組むことで大変な状況になっている」ことに重点を置いているのに対し、必死は「真剣に取り組む姿勢」に注目した表現といえるでしょう。
一心不乱
一心不乱とは、心を1つのことに集中して、他のことに気をとられないことです。たとえば、次のように使います。
・一心不乱に研究した結果、新薬の開発につながる発見を得られた
・あの飽きっぽい彼女が、一心不乱に勉強しているらしい
▼あわせて読みたい
死に物狂い
死に物狂いとは、死ぬことも恐れないで頑張ることを指す言葉です。次のように使います。
・死に物狂いで勉強をしたが、学年1位にはなれなかった
・彼女が死に物狂いで努力をしていることは、よく知られている
・彼には真剣さが足りない。一度、死に物狂いになってみてはいかがだろうか
大童は予期せぬことが起こって慌てふためくときにも使われますが、死に物狂いは明確な目的が決まっているときに使われることが一般的です。
生真面目
生真面目(きまじめ)とは、非常に真面目なことや、真面目すぎて融通が利かない様子を指す言葉です。
・彼女の魅力は生真面目なところだ
・1つひとつの質問に生真面目に答えた
・生真面目で面白みに欠けるが、その分、信頼できる人だ
一生懸命に取り組む姿勢は大童と同じですが、大童のように髪を振り乱して頑張るといったニュアンスはありません。
▼あわせて読みたい
本気
本気とは、真面目な気持ちや真剣な気持ちを指す言葉です。
・彼が本気になれば、課題をあっという間に終わらせるだろう
・本気でそう思いますか
・本気の勝負です
状況によっても異なりますが、大童は物事に取り組む様子、本気は取り組む姿勢を指す傾向にあるといえるかもしれません。
大童の意味と由来を押さえよう
大童は、まとめた髪が解けた様子を指す言葉です。室町時代にはすでに使われていた表現とされています。
また、髪を振り乱して何かに夢中になることから、一生懸命に取り組む様子を指す言葉としても使われます。意味と由来を押さえ、適切な状況で用いましょう。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock