「水垢離」という言葉には、どこか静かで凛とした響きがありますよね。 古くから、心身の浄化を目的に行われてきた宗教的な行いです。この記事では、「水垢離」の読み方や意味を確かめながら、現代の私たちにとってもどこか惹かれる側面に目をむけつつ、「禊(みそぎ)」との違いについても紹介していきます。
「水垢離」ってどんな行為?
「水垢離」は、滝や海など、水のある場所で古くから行われてきました。まずは、読み方と意味を解説します。

「水垢離」とは何か|読み方と意味
「水垢離」の読み方は「すいこうり」や「みずあかり」と読んでしまいそうですが、正しくは「みずごり」と読みます。この読み方は、もともと「川降り(かわおり)」から音の変化を経たものだといわれており、「垢離」は当て字であるとされています。
辞書で意味を確認してみましょう。
みず‐ごり〔みづ‐〕【水×垢離】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「垢離(こり)」に同じ。
こり【×垢離】
《「かわお(川降)り」の音変化か。「垢離」は当て字》神仏への祈願や祭りなどの際、冷水を浴び身を清めること。水垢離。→禊(みそぎ)
「水垢離(みずごり)」は、「垢離(こり)」と同じ意味を持つ言葉です。
神仏に祈る前や祭りの前に、冷たい水を浴びて身を清める行為を指します。身体だけでなく心も整え、穢れを取り除くことが目的とされています。
なお、浴室や蛇口につく汚れの「水垢」と混同されがちですが、「水垢離」とは無関係です。漢字が似ていても、意味も目的もまったく異なるので、ご注意ください。

「水垢離」のやり方と効果を紹介
宗教的な行為として行われる「水垢離」について、基本的な方法を簡単に見てみましょう。「禊」との違いについても、解説します。
「水垢離」のやり方は?
「水垢離」とは、冷たい水を浴びて身を清める行為のことです。神社のそばにある水場や、海で行われることが多いです。
形式は決まっていませんが、多くの場合、身を正して冷水をかぶり、心身を清めた上で祈願に臨む流れになります。
冬の時期に行われるものは「寒垢離(かんごり)」とも呼ばれ、特に精神を引き締める行として重んじられています。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)、『国史大辞典』(小学館)
「水垢離の効果」は心身の清浄化
「水垢離」には、身体だけでなく心も整える働きがあるとされています。水をかぶれば身が引き締まると共に、気持ちも不思議と落ち着きますよね。
このように、冷水を浴びることで穢れを祓い、心身を清浄にしようとする考え方は、仏教や神道の中でも広く見られます。
「禊」との違いって?
「水垢離」と似た言葉に「禊(みそぎ)」があります。どちらも身を清める行為ですが、禊はもう少し広い意味を持つことが多いようです。
例えば、陰暦6月の晦日に行われる「夏越しの祓(はらえ)」では、茅の輪をくぐったり、人形(ひとがた)で身体をなでて清めたあと、それを水に流すといった形で穢れを払います。この行事は「なごしのみそぎ」とも呼ばれています。
「禊」とは、災いや罪を祓うための儀式として位置づけられています。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)

現代にも生きている、「水垢離」
「水垢離」は伝統的な行為ですが、時代とともに形は変わりながら、現在も大切に続けられています。
今も体験できる水垢離|地域行事や修行としてのかたち
「水垢離場」と呼ばれる場所では、今も水垢離を体験できる機会があります。神社の一角や滝場、特定の行事の中で行われており、初めての人でも参加して体験することができますよ。
また、地域によっては、巫女や修行者が水垢離を行う神事も続いています。滝に打たれる修行や、寒中で行うものは、地元の伝統行事として知られていることもありますね。
水垢離は宗教的な行為であると同時に、地域の文化として受け継がれている一面も見られます。
「シャワーでできる?」の誤解に注意
水垢離は、宗教的な意味を持つ行為です。例えば、自宅のシャワーで冷水を浴びることも心身を整える手段にはなりますが、それはあくまで個人的な習慣であり、水垢離とは別のものです。
最後に
「水垢離」は、古くから日本に伝わる宗教的な行いです。ふだんの生活の中で触れる機会は少ないかもしれませんが、忙しさや情報に囲まれた今の時代だからこそ、こうした「立ち止まって心を整える時間」が、以前にも増して求められているのかもしれませんね。
もし「水垢離」という行いにどこか惹かれるものを感じたなら、まずはその言葉の意味を知るところから始めてみるのもいいかもしれません。
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