「言文一致」という言葉を目にしたとき、なんとなく意味はわかるけれど、詳しくは知らないという人が多いのではないでしょうか？ 中には「言行一致」と混同している人もいるかもしれません。明治初期には「言文一致運動」もあったんですよ。
この記事では、「言文一致体」の意味や「言文一致体」、「言文一致運動」、「言行一致」との違いについて紹介していきます。
「言文一致」とは？ 読み方と意味を確認
「言文一致」は、「げんぶんいっち」と読みます。まずは辞書で意味を確認してみましょう。
げんぶん‐いっち【言文一致】
引用：『デジタル大辞泉』（小学館）
話し言葉に近い形で文章を書くこと。→言文一致運動
「言文一致」とは、話し言葉に近い形で文章を書くことを指します。
「言文一致体」とは？
「言文一致体（げんぶんいっちたい）」とは、話すときと同じような調子で書かれた文体のことです。
例えば、二葉亭四迷（ふたばてい・しめい）の写実小説『浮雲』（1887〜1889発表）は言文一致体で書かれました。
「言文一致運動」とは？ 口語文の礎となった運動
「言文一致運動」は、話し言葉に近い形で文章を書く文体への転換を目指した文体革新運動のことです。明治時代初期に始まり、思想や感情をより自然に、そして的確に表現しようとする流れの中で広まりました。
二葉亭四迷や山田美妙、尾崎紅葉といった作家たちが、それぞれの作品でこの新しい表現を試みたことから、しだいに一般にも浸透していき、現在の口語文の礎となったとされています。
参考：『デジタル大辞泉』（小学館）
「言文一致」と混同しやすい言葉に注意
「言文一致」という言葉は、響きが似ている別の表現と混同されやすいことがあります。特に「言行一致（げんこういっち）」や「言行不一致（げんこうふいっち）」などと並べて見たとき、意味の違いが曖昧に感じられるかもしれません。
ここでは、違いを確認していきましょう。
「言行一致」とは？
「言行一致」は、言葉にしたことと行動とが矛盾していない状態を指します。つまり、自分の言葉どおりに行動していることを表します。
「言文一致」は文章と話し言葉の一致を意味するため、使われる場面も方向性も異なります。
ちなみに、「言行不一致」は「言行一致」と反対の意味で、言っていることとやっていることが食い違っている状態を指します。なお、「言文不一致」という表現は一般的な辞書には見られませんので、誤って使わないよう気をつけたいですね。
最後に
「言文一致」という言葉にふれることで、いま私たちが当たり前のように読んでいる文章の背景にある言葉の変化や工夫が垣間見えたのではないでしょうか。
日常の言葉遣いと文章表現が自然につながることには、思いや考えを伝えやすくする力があるのだと感じます。言葉のかたちは、時代とともに移ろいながらも、私たちの思いに寄り添い続けているようです。
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