八面六臂の読み方や意味とは
八面六臂とは、仏像などが八つの顔と六つの腕を持つことです。面は「顔」、臂は「腕」や「肘」を指し、「はちめんろっぴ」と読みます。
八つの頭脳と六つの手がそれぞれうまく機能すれば、1人で何人分もの活躍ができるでしょう。そこから転じて、あらゆる方面にめざましい働きを示すことを指すようになったとされています。
- 彼女はオペラの申し子だ。主役から脇役、舞台芸術に至るまで、八面六臂の活躍でこなした
- プロジェクトの成功は偏に彼のおかげといえるだろう。まさに八面六臂の働きだった
はちめん‐ろっぴ〔‐ロクヒ〕【八面六×臂】
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 仏像などが八つの顔と六つの腕をもつこと。
2 あらゆる方面にめざましい働きを示すこと。「—の働き」
八面六臂の由来は「三面六臂」
八面六臂は、「三面六臂(さんめんろっぴ)」からきているともいわれています。三面六臂とは、三つの顔と六つの腕を持つ仏のことです。仏像や絵画などで見たことがある方も多いでしょう。
三面六臂も八面六臂と同じく多方面に力を発揮する意味で使われますが、「すべての方面」を表す「八面(はちめん)」とすることで、より一層マルチに活躍する様子を表現するようになったと考えられているようです。

全国で見られる三面六臂の仏像
三面六臂の仏像は、全国の寺社などで広く見られます。
ただし、今から千年以上も前につくられたものも多く、国宝に指定されたり、秘仏として公開期間が限られたりしていることもあります。鑑賞が可能なのか問い合わせてから、出かけるようにしましょう。
興福寺(奈良県)・阿修羅像
710年の奈良への遷都の際、藤原不比等が厩坂(うまやさか)寺を都に移し、興福寺と号しました。なお、厩坂寺は飛鳥にあった山階(やましな)寺を造営したことを起源とし、645年に藤原氏の祖・藤原鎌足が造立した釈迦三尊像を安置する由緒ある寺です。
創建1300年を超えた興福寺では、貴重な仏像が多数安置されています。また、絵画や建物などにも国宝が多く、日本の仏教芸術や歴史を知るうえで重要な寺社といえるでしょう。
その中のひとつ、阿修羅像は奈良時代につくられた国宝です。仏高は150cmほどと大きく、三つの顔と六つの腕を持ち、上半身は裸で条帛と天衣を肩にかけています。
阿修羅は古代インド語の「アスラ」を意味し、「生命を与える者」や「非天」とも解釈されています。
橘堂(滋賀県)・観音菩薩立像
三面六臂の姿を持つのは阿修羅だけではありません。滋賀県の橘堂に安置されている観音菩薩(かんのんぼさつ)立像も、三つの顔と六つの腕を持ちます。また、全体で見れば三面六臂ですが、頭部にも複数の顔があり、衆生をあまねく見渡している様子が表現されています。
なお、観音菩薩とは観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)の略で、世の人々の音声(おんじょう)を観じて、その苦悩から救済する菩薩です。阿弥陀仏の脇侍で、独尊としても信仰されています。
光前寺(長野県)・摩利支天像
長野県の光前寺にある摩利支天(まりしてん)像も、三面六臂の姿で知られています。摩利支天とは陽炎(かげろう)を神格化した神で、護身や勝利などをつかさどることから、日本では武士の守護神とされました。
摩利支天は三面六臂の像だけでなく、二臂や八臂の像もあり、イノシシの背にまたがった姿で描かれることも多いようです。また、手には隠れるための扇や、害をなす相手の目や口を塞ぐ針と糸を持っていることもあります。
八面六臂と類似した意味で使われる言葉
八面六臂のようにさまざまな方面に活躍することや、ひとりで何人分もの働きをすることを表現する言葉には、次の四字熟語が挙げられます。
- 縦横無尽
- 獅子奮迅
- 面目躍如
それぞれの意味について、例文を使ってわかりやすく紹介します。

縦横無尽
縦横無尽(じゅうおうむじん)とは、どの方面にも限りがないことや、物事を思う存分にすることを意味する言葉です。そもそも無尽とは尽きることがない様子を指すため、縦横無尽で縦・横どちらの方向にも限りがなく、広大な様子を表現しています。
- 今年の体育祭では、彼女は縦横無尽の活躍ぶりだった
- 本当の天才とは、特定の分野だけではなく、縦横無尽に能力を発揮する人を指すのだろう
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獅子奮迅
獅子奮迅(ししふんじん)とは、獅子がふるい立って暴れまわるように、激しい勢いで物事に対処することです。ライオンやライオンに似た想像上の動物、獅子のように、勇ましいイメージのある言葉です。
- 彼の獅子奮迅の働きにより、我が社の威信をかけたイベントは成功裏に終わった
- 彼女は獅子奮迅の勢いで得点を重ねた
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面目躍如
面目躍如(めんもくやくじょ)とは、その人本来の姿が生き生きと現れている様子を指す言葉です。
- ベテランの面目躍如たる演技に魅せられた
- さすが2年連続で社長賞を受賞した方は違う。今回のプロジェクトでも面目躍如の活躍をしてくれた
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状況に応じた表現を選ぼう
八面六臂は、さまざまな方面でめざましい活躍をする様子を表す言葉です。
三面六臂の仏像由来の言葉ですが、人によっては馴染みがなく、意味がわかりにくいと感じるかもしれません。状況や相手に合わせて、縦横無尽や獅子奮迅といった類似する表現に置き換えて、マルチな活躍ぶりを表現するようにしましょう。
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