「太平楽」という言葉。耳にしたことはあるでしょうか? 少々古めかしい響きがあるかもしれませんね。「太平楽」という名前を持つ飲食店や温泉、劇場もあり、さまざまな形で知られていますよ。
本記事では、「太平楽」の意味について深掘りしていきます。
「太平楽」とは? 読み方と意味、語源を解説
まずは「太平楽」の読み方、そして意味を確認していきましょう。

「太平楽」の読み方と意味
「太平楽」は「たいへいらく」と読みます。辞書の定義を参考に、その意味を詳しく見てみましょう。
たいへいらく【太平楽】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
一 雅楽。唐楽。太食(たいしき)調で新楽の中曲。朝小子(ちょうこし)・武昌楽・合歓塩(がっかえん)からなる合成曲。舞は四人舞。即位の大礼のあとなどに演じる。番舞(つがいまい)は陪臚(ばいろ)など。武昌破陣楽。
二 [名・形動]《一が悠長な曲とされたところから》勝手なことを言ってのんきにしていること。勝手気ままにふるまうこと。また、そのさま。太平。「酒を飲みながら―を並べる」「―な暮らしぶり」
もともと「太平楽」は、宮廷音楽としての雅楽を指していました。しかし、やがて「ゆったりとした曲調」から派生し、現代では「のんきに振る舞うこと」「気楽に構えること」といった意味で使われるようになりました。
「太平楽」の語源は?
「太平楽」という言葉の成り立ちには、雅楽の特徴が関係しています。古くから宮廷で演奏されていた雅楽の中でも、「太平楽」は特に悠長な曲調とされていました。そのため、「ゆったりとした」「気ままにしている」という印象が生まれ、転じて「勝手なことを言ってのんびり構える」という比喩的な意味が生まれたと考えられます。
今日では、「太平楽を言う」「太平楽を並べる」という表現は、その場の様子を無視して好き勝手なことを言うことを指しますよ。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
「太平楽」の使い方と例文
「太平楽」という言葉には、気楽に構えたり、根拠のない楽観的な考えを述べたりする意味があります。実際の会話や文章でどのように使われるのか、具体的な例を見ながら考えてみましょう。
「明日から本気を出せば大丈夫」と太平楽を言っているが、実際に行動に移しているのを見たことがない。
この例文では、「明日から本気を出す」という発言が、実際には何の行動も伴っていないことを表しています。現実的な計画や努力がないままに、ただ気楽なことを言う人に対して「太平楽を言う」と表現されることが多いでしょう。相手の発言と実際の行動とのギャップを皮肉るような場面で使われます。

彼は試験前日になっても、「一夜漬けで十分」と太平楽を並べるばかりで、全く焦る様子がない。
これまで勉強をしてこなかったにもかかわらず、安易に成功できると信じていることに対して「太平楽を並べる」と表現しています。周囲が心配する中でも本人は焦ることなく、のんきな言葉を繰り返している様子が伝わってきますね。
「太平楽を並べる」は、このように気楽な言葉ばかりを並べている場面で使われることが多いです。
「努力しなくても成功できる」と太平楽を抜かす彼の話には、さすがに耳を貸せなかった。
「努力しなくても成功できる」という発言が、あまりに非現実的であるため、周囲がまともに受け取らなかった状況が描かれています。「太平楽を抜かす」という表現には、発言内容を否定的に捉えるニュアンスが含まれており、無責任な発言や楽観的すぎる考えに対して使われることが多いです。
「太平楽」の類語は?
「太平楽」と同じような意味を持つ言葉はいくつかありますが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。ここでは、「太平楽」と似た意味を持つ言葉を紹介し、それぞれの使い方を解説していきましょう。
勝手きまま
「勝手きまま」は、自分の思うままに行動し、他人や周囲の状況をあまり気にしない様子を表します。「太平楽」と共通するのは、自由に振る舞うという点ですが、「勝手きまま」は特に行動面での無計画さや気ままさを指すことが多いでしょう。
例文:勝手きままに振る舞うのはいいが、周囲の人の迷惑も考えてほしい。

出鱈目(でたらめ)
「出鱈目」は、根拠のないことを言うことを指します。「太平楽」と似ている点は、現実味のない言葉を口にするという点ですが、「出鱈目」は特に根拠のない発言や行動に対して使われることが多いでしょう。
例文:出鱈目な情報に惑わされず、しっかりと確かめることが大切だ。
好き勝手
「好き勝手」は、自分の好きなように振る舞うことを意味します。「太平楽」との共通点は、気ままに行動する点ですが、「好き勝手」は特に自分本位な行動を指すことが多いでしょう。
例文:彼女はいつも好き勝手なことを言うが、不思議と憎めない。
最後に
「太平楽」は、楽観的すぎる態度や無責任な発言を指摘する場面で使われることが多いですが、捉え方次第では「物事を深刻に考えすぎない」「柔軟に構える」といった前向きな姿勢として活用することもできるでしょう。言葉の意味や使い方を理解しながら、状況に応じて適切に使うことが大切かもしれません。
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