「一入」という言葉、すぐに正しい読み方がわかるでしょうか? 日常会話ではあまり使われませんが、感情の深まりを表現する際に効果的な言葉として、古くから親しまれています。
この記事では、まず「一入」の気になる読み方を確認し、意味や由来、使い方について見ていきます。
「一入」とは? 意味や由来を知ろう
まずは、「一入」の気になる読み方、そして意味や成り立ちを確認していきましょう。

「一入」の読み方と意味とは?
「一入」は、「ひとしお」と読みます。意味を辞書で見てみましょう。
ひと‐しお〔‐しほ〕【一▽入】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《2が原義》
1 ほかの場合より程度が一段と増すこと。多く副詞的に用いる。いっそう。ひときわ。「苦戦の末の優勝だけに喜びも―だ」「懐しさが―つのる」
2 染め物を染め汁の中に1回つけること。
「―再入(ふたしほ)の紅よりもなほ深し」〈太平記・三六〉
「一入」は、「ひときわ」や「いっそう」という意味を持ち、感情の高まりや、物事の変化を強調する際に使われます。「一段と」や「特に」と言い換えられることもあるでしょう。
「一入」の語源や由来
「一入」という言葉は、染物の技法が関係しているといわれています。語源は、「一染(ひとしむ)」の意味です。
今でも、染物を染汁に一回入れて浸すことを「一入」といいますよ。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
「一入」の使い方|どんな場面で使われる?
「一入」は、喜びや感慨、感動がより深まる場面で使われます。具体的にどのような状況で適しているのか、例文を交えて説明していきましょう。
「成功の報告を受けて、喜びも一入だった」
通常の喜び以上に、特別な感情が加わることを表しています。単なる達成感ではなく、それまでの努力が実ったことで、より強い喜びを感じる場面で使えるでしょう。

「秋の夜長は、一入物思いにふける」
季節の移ろいが心情に影響を与えることを表す表現です。気候や風景の変化とともに、いつもより感慨深くなる状況を伝えています。
「友人の言葉が、一入心に響いた」
同じ言葉でも、特定の状況下でより強く感じることがあります。その感覚を表すのが「一入」です。普段なら聞き流してしまうような言葉でも、心に深く残る場面で使われます。
「一入」と似た言葉|類語や言い換え表現
「一入」は文学的な表現ですが、意味の近い言葉はいくつかあります。状況に応じて、使い分けると表現の幅が広がるでしょう。

一際(ひときわ)
「一際」は、「特に際立っている」という意味を持ちます。日常会話でもよく使われる表現です。「今日はひときわ寒い」といった使い方ができます。
一層(いっそう)
「ますます」という意味を持ち、ビジネスシーンやフォーマルな場面で使われることが多い言葉です。「より一層努力する」のように、決意や変化を表現する際に適しています。
格別(かくべつ)
「特別」、「他とは違った特別な価値がある」といったニュアンスを持つ言葉です。「今日の料理は格別に美味しい」といった使い方がされます。
最後に
「一入」は、感情の高まりを繊細に表現できる言葉です。日常会話ではあまり使われないかもしれませんが、文章の中で用いると、より豊かな表現が可能になります。日本語の美しさを感じられるこの言葉を、状況に応じて取り入れてみるのも面白いかもしれませんね。
TOP画像/(c) Adobe Stock