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2026.04.30

「惻隠の情」とは他者へのあわれみや同情心のこと|孟子の言葉をまとめて深掘り

「惻隠の情(そくいんのじょう)」とは、悲しい状況を前に自然と感じる、あわれみや同情心のことです。中国の思想家「孟子(もうし)」の教えとして知られています。本記事では「惻隠の情」の正しい意味や使い方とともに、孟子が残した言葉について、わかりやすく紹介します。

「惻隠の情」の意味と読み方

「惻隠の情」とは、他者が苦しむ姿や悲しい出来事を見たときに、自然と湧き上がる感情のことです。「そくいんのじょう」と読みます。相手の立場に自分を重ね、気持ちを共にするさまを表す点が特徴といえるでしょう。

「惻隠の情」は、中国の思想家「孟子(もうし)」が残したといわれる言葉です。孟子はこの感情を人間の本性の一部と位置づけ、教育や倫理、政治の基盤になると説きました。

「惻隠の情」を持つことは、人としての自然な行動といえるでしょう。文章や会話に「惻隠の情」という語句を使えば、内容の説得力や共感力がより高まるかもしれません。

そく‐いん【×惻隠】
かわいそうに思うこと。同情すること。「惻隠の情を催す」

出典:小学館 デジタル大辞泉

「惻隠の情」は孟子の言葉

「惻隠の情」は「孟子」という書物の中に登場します。「孟子」は、思想家・孟子の逸話や問答を集めた経典です。

書物のなかで孟子は「惻隠の情」を人間の四端(仁・義・礼・智)のひとつとして取り上げています。

たとえば、子どもが井戸に落ちそうな場面を見て、とっさに助けたいと思うことは、自然な善意といえるでしょう。

孟子は、この心こそが人間の根本的な徳性の現れであり、正しい方向に導くことで社会全体の善につながると説いています。

し‐たん【四端】
《「孟子」公孫丑上から》人が生まれながらに持っている、仁・義・礼・智の芽生えともいうべき四つの心。すなわち、惻隠の情、悪を憎む心、謙譲の心、物事の是非を見きわめる心の四つをいう。

出典:小学館 デジタル大辞泉
手を合わせているイラスト
(c)AdobeStock

「惻隠の情」の使い方と例文

「惻隠の情」は、人への共感や同情の気持ちを伝えるときに活用できます。文章や会話において、相手の気持ちを理解していることを示したいときに適した表現です。

・部下が困難な状況に直面していることを目の当たりにし、上司は惻隠の情をもって相談に乗った
・プロジェクトでミスをした同僚に惻隠の情を感じ、サポートを申し出た
・被災地のニュースを見て、社員一同が惻隠の情を抱き、募金活動を行った
・契約交渉で困っている相手に惻隠の情を示し、柔軟な対応を検討した
・道に迷った人を見かけて惻隠の情を感じ、声をかけた

「惻隠の情」の類語「惻隠の心」

「惻隠の心(そくいんのこころ/しん)」も「惻隠の情」と同様、他者へのあわれみや同情心を意味します。出典も「惻隠の情」と同じく「孟子」です。

どちらを聞いても即座に意味が理解できるよう、使用例を確認しておきましょう。

・上司は部下の失敗に惻隠の心を抱き、指導方法を工夫した
・同僚の苦労を理解し、惻隠の心をもってサポートした
・仲間の悩みに惻隠の心を示すことで、チーム全体の信頼関係が強化された

「惻隠の情」以外の孟子の故事ことわざ

孟子は「惻隠の情」以外にも、人間の行動や道徳を示す故事ことわざを残したとされています。ここでは代表的なものと、ビジネスや日常での活用例をみていきましょう。

本と筆
(c)AdobeStock

「大人は赤子の心を失わず」

「大人は赤子の心を失わず(たいじんはせきしのこころをうしなわず)」は、徳の高い人ほど、純粋さや正直さ、他者への思いやりを失わないことを意味します。

「赤子(せきし)」とは、赤ん坊のことです。「大人は赤子の心を失わず」には、君主のようなリーダーや指導者であるほど、赤子を慈しむように、民の心を大切にするべきだという教えも込められています。

・周囲から敬われる人ほど、大人は赤子の心を失わずというように正直で、周囲に対して優しいものだ
・新しいリーダーは、大人は赤子の心を失わずの姿勢を示すかのように、部下に対していつも誠実に接している
・春から新プロジェクトのリーダーになった。自分が徳が高い人物だというつもりはないが、今こそ大人は赤子の心を失わずの教えを活かしたい

「羊を以て牛に易う」

「羊を以て牛に易う(ひつじをもってうしにかう)」は、小さな利益や資源を、より大きなものに換えようとする工夫や知恵を示すことわざです。「羊」を小さなもの、「牛」を大きなものに例えています。

たとえばビジネスでは、限られた予算や時間で、最大の成果を目指す工夫を指す言葉として活用できます。

物事の本質を見極めることや、今あるものを最大限活用することの重要性を説いた言葉です。

・限られた予算で複数の施策を試し、効果的な成果を得た。羊を以て牛に易うとは、まさにこのことだ
・今ある資源を活用し利益を最大化するなど、チーム全体で羊を以て牛に易う工夫を行った
・不満ばかり口にせず、羊を以て牛に易う意識で現状を改善するよう、上司からアドバイスをもらった

「人必ず自ら侮りて然る後に人これを侮る」

「人必ず自ら侮りて然る後に人これを侮る(ひとかならずみずからあなどりてしかるのちにひとこれをあなどる)」は、自分自身を尊重せず侮るようになると、必ず人からも侮られるようになるという意味です。

他人から軽んじられているのなら、自分自身にも原因があるという訓戒ともいえます。

・周囲の評価ばかり気にしているが、人必ず自ら侮りて然る後に人これを侮るだよ
・人必ず自ら侮りて然る後に人これを侮るというように、まずは自分を大切にしてみるといいよ
・人必ず自ら侮りて然る後に人これを侮るというものの、まだまだ自己嫌悪に陥ってしまうときがある

「惻隠の情」のような故事ことわざを使いこなそう

孟子の教えや故事ことわざを文章や会話で使うと、内容に深みが増します。相手に寄り添う姿勢を示したいときには、「惻隠の情」を使うのがおすすめです。

小さな利益をより大きなものへと変える工夫は「羊を以て牛に易う」と言い表してみましょう。「大体に従う者は大人と為る」を使えば、良心に従う大切さを表現できます。

これらを理解し文章や会話に自然に取り入れれば、説得力や表現力がアップします。自分の考えや価値観をより的確に伝えるため「惻隠の情」のような故事ことわざを活用するのもよいでしょう。

メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock

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