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この記事のサマリー
・「冬来りなば春遠からじ」は、19世紀イギリスの詩人シェリーの『西風の賦(せいふうのふ)』の一節。英詩の翻訳から生まれ、日本でも広く親しまれるようになった表現です。
・自然の摂理として「冬の次には必ず春が来る」ように、今は厳しくとも、耐え抜けば必ず幸せな時期が巡ってくるという希望の暗喩です。
・成功の保証ではなく、励ましの言葉として使われることが多いです。
つらい状況が続く中でも、「きっといつかはいい方向へ向かう」と思いたいときに使うのが、「冬来りなば春遠からじ」という言葉です。
その響きに励まされる一方で、意味や成り立ちを正しく知らないまま使うと、誤解を招くこともあります。
言葉の意味を知り、適切な場面で使えるように整理しましょう。
「冬来りなば春遠からじ」とは?
辞書に基づいて、「冬来りなば春遠からじ」の読み方と意味、語源を整理します。
「冬来りなば春遠からじ」の読み方と意味
「冬来りなば春遠からじ」は、「ふゆきたりなばはるとおからじ」と読みます。
『デジタル大辞泉』(小学館)では、以下のように定義しています。
冬(ふゆ)来(きた)りなば春(はる)遠(とお)からじ
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《英国の詩人、シェリーの詩「西風の賦」の一節から》つらい時期を耐え抜けば、幸せな時期は必ず来るというたとえ。長い冬を耐えて春を待つ気持ちの表現としても用いられる。
このように、今がどんなに厳しい状況でも、そのあとには希望がある、という気持ちを込めて使う表現です。
語源は英詩の一節から
「冬来りなば春遠からじ」は、日本で生まれたことわざではありません。もともとは、19世紀イギリスの詩人パーシー・ビッシュ・シェリーが書いた詩『西風の賦(“Ode to the West Wind”)』の一節です。
この詩では、「西風」を通して季節の移り変わりや再生のイメージが語られます。その最後の一行が、よく知られたこのフレーズです。
“If winter comes, can spring be far behind?”
(冬が来たなら、春が遠いはずがあろうか。)
この結びの一文が、やがて日本語に翻訳され、「冬来りなば春遠からじ」として知られるようになりました。

日本語としての定着
「冬来りなば春遠からじ」は、当初は詩や文学の中で紹介されていましたが、徐々に日常の文章や会話の中でも使うようになります。
その過程で、原文の詩的な背景から独立し、「つらい時期を耐えれば、やがて状況は好転する」といった比喩的な意味で受け止められるようになりました。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本大百科全書』(ともに小学館)、『世界大百科事典』(平凡社)
使う場面と注意点
「冬来たりなば春遠からじ」は、今もなお多くの人の心の支えとして使われる言葉です。ここでは、現代の日常やビジネスシーンで上手に使いこなすためのポイントを整理していきましょう。
前向きな気持ちを伝える比喩
「冬来りなば春遠からじ」は、つらい時期にいる自分自身を励ましたり、苦境にある相手へのエールとして使うことがあります。
「明けない夜はない」という意味に近く、気持ちを前に向けるような比喩表現です。解決策を示す言葉ではないことを、留意しておきましょう。
使用時に誤解を避けるための注意点
この言葉には、「努力すれば必ず報われる」といった意味までは含まれていません。「きっと大丈夫」と無理に励ますような使い方をすると、かえって相手にプレッシャーを与えてしまうことも。
辞書が示す通り、「いまは冬のようにつらくても、春はもう遠くない」という本来の意味を理解して使いたい言葉です。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
「冬来りなば春遠からじ」の使い方を例文でチェック
「冬来りなば春遠からじ」は、日常の言葉がけや手紙・SNSなどでも見かけることがあります。例文を見ながら、使い方を確認しましょう。
「今は大変な時期ですが、『冬来りなば春遠からじ』。きっと状況は落ち着いて、穏やかな日々が戻ってくると信じています」
苦しい現状を否定せず、「次はいいことが待っているよ」という、やわらかな励ましの表現です。

「長く続いたプロジェクトもようやく終盤を迎えました。『冬来たりなば春遠からじ』。ゴールはもうすぐそこだと信じて、最後まで走り抜けましょう」
過酷な状況にあるチームや同僚に対し、疲れた心に寄り添いながら、最後の一踏ん張りを促すポジティブな言い回しとして活用できます。
「冷え込みが厳しく、つらい日々が続いておりますが、『冬来たりなば春遠からじ』とも申します。どうかご自愛のうえ、健やかにお過ごしください」というように、お見舞いや季節の挨拶にも、やさしい余韻を残す言葉として添えることができます。
「冬来りなば春遠からじ」に関するFAQ
ここでは、「冬来りなば春遠からじ」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「冬来たりなば」の「なば」はどういう意味ですか?
A. 「もし〜したならば」という、完了の条件を表す言葉です。「冬が来たならば、次は必ず春だ」という意味になります。古風な響きが、言葉に深みを与えています。
Q2. ビジネスメールで使っても失礼になりませんか?
A. 親しい間柄や、相手を勇気づけたい場面であれば非常に好印象です。ただし、非常にフォーマルな取引や、深刻な謝罪の場面では少し情緒的すぎる場合があります。相手との距離感を見極めて使うのがスマートです。

Q3. NGな使い方は?
A. 具体的な対策を求めている人に対し、精神論として使うのは避けましょう。あくまで心の支えとなる言葉です。トラブルの解決策を話し合っている最中に言うと、「無責任」「楽観的すぎる」と受け取られるリスクがあります。
最後に
「冬来たりなば春遠からじ」は、自然の移ろいに人生を重ねながら、次の季節を心待ちにする、温かみのある表現です。
苦しみに耐える中でも、「やがて春は訪れる」と、希望を持つことは、自分自身だけでなく、相手をも励ますことができます。その温かな視点を表現する言葉として、生かしてみてくださいね。
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