職場で、上司から「逐次報告してください」などと指示をされたことはありませんか? 頻繁に報告するようにというニュアンスは理解できますが、正確な意味を知っている人は少ないかもしれません。そこで本記事では、ビジネスシーンでたびたび用いられる「逐次」の意味や使い方、「随時」「適宜」などの類語について解説します。意味の違いを理解して、うまく使い分けてみてはいかがでしょうか?
逐次の意味
「逐次(ちくじ)」の正しい意味を、辞書で確認してみましょう。
[副]順を追って次々に物事がなされるさま。順次。「人口が―減少していく」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「逐次」とは、「ひとつひとつ順番に物事が行なわれること」です。漢字の意味を紐解いていくと、「逐」は、「あとを追う」「順を追って進む」という意味。「次」は、「つぎのもの」「あとに続くこと」です。この2つの漢字を組み合わせて、「逐次」という言葉になりました。順序に従って行なわれるところがポイントです。
使い方を例文でチェック!
ここでは、「逐次」の基本的な使い方と、ビジネスシーンでの使い方の両方をみていきましょう。
1:今年の春から日本文学全集を、逐次出版することになった。
順を追って、本を出版する際に、「逐次出版します」と表現します。特にシリーズものなどの、ストーリーが続いている作品には決まった順番があり、そのルールに従って、第1章の次は第2章と続いていきます。そのため、順番にこだわりがない場合、「逐次」を使うのはふさわしくありません。
2:詳細を逐次報告してください。
ビジネスシーンでは、上司から「逐次報告してください」と指示をされることもありますよね。「会議の内容や変更点は、その都度知らせてほしい」と考えている場合に、部下に対してこのように伝えることが多いでしょう。部下と綿密にコミュニケーションをとって、会議のことを把握したいという意図が感じとれますね。
3:面接合格者には、私から逐次連絡をいたします。
自分が上司や目上の人に対して、「逐次」を使うこともできます。例文は、「合格者には、順を追って私が連絡をする」という意味ですね。合格者はリスト化され、あいうえお順に「相田さんに連絡した後は、飯田さん」というように、順番が決まっている場合もあります。1つずつ順番に物事を行なう際には、「逐次」を使ってみてくださいね。
「随時」や「順次」、「適宜」との違いとは?
ビジネスシーンでは、「逐次」という言葉のほかにも、「随時」や「順次」、「適宜」などの言葉が使われる場面が多々ありますよね。その時々に応じて、なんとなく使い分けているという方も多いのではないでしょうか? 言葉の意味を理解することで、正確に使い分けることができますよ。
1:随時
「随時(ずいじ)」の意味は、以下の通りです。
1 適宜な時に行うさま。その時々。「―巡回する」
2 日時に制限のないさま。好きな時にいつでも。「―入院することができる」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
ジムやスポーツクラブなどで、「随時入会できます」などの文字を目にしたことがあるのでは? この場合、特にいつからいつまでという期限が設けられておらず、好きな時に入会してもらって構わない、というように受け取ることができますね。入会希望者は、自分の気が向いた時に入会できるのがメリットと言えるでしょう。
また1つ1つ順番を大切にして行う「逐次」とは違い、「随時」は好きなタイミングでバラバラに物事を行なうことができます。順番を重視するか否かが、「逐次」と「随時」の違いと言えるでしょう。
(例文)
・スタッフを随時募集しております。
・そのスポーツクラブは随時入会できる。
2:順次
「順次(じゅんじ)」とは、「順序に従って、物事をするさま」を表します。「質問に順次答える」「客が順次席を立つ」というように使われますね。「順次」には、1つ1つ順番に行なうという意味はありますが、その内容には厳格な決まりはありません。
先述した、「質問に順次答える」を例に挙げると、「質問に1つずつ答える」という決まりはあるものの、「Aさんの質問に答えたら、2番目はBさんの質問に答える」という具体的な決まりはないということです。順番の内容にまでこだわりがない点が、「順次」の特徴と言えるでしょう。「次々と」と同じようなニュアンスだと覚えておくとわかりやすいですね。
(例文)
・早く来た者から順次面接を行なう。
・ことが判明次第、順次連絡いたします。
3:適宜
「適宜(てきぎ)」とは、「その場その場に適しているさま」。「適宜、食事をとってください」というように、その時その場に応じて、それぞれが判断して良いという場面で用いられます。その時の状況に応じて行なうため、「逐次」のような順番に従って物事を行なうという意味合いはありません。
(例文)
・見学後、適宜解散とする。
・テストが終わった人から、適宜食事をとってください。
「逐次」を英語で言うと?
英語で「逐次」を使いたい場合は、状況に応じて「one by one」「sequentially」を使ってみてはいかがでしょうか? 意味を解説していきます。
1:one by one
「one by one」は、「1つずつ」という意味。1つずつ順序を追って行なわれる時に使われます。ただし、「one by one」には、日本語における「逐次」のような「順番の内容にも細かくこだわる」という特徴はありません。あくまでも、1つずつ順番に行なう点が類似していると考えてみてください。
(例文)
・He corrected his faults one by one. (彼は欠点を逐次改めた)
・One by one the children married and moved away. (子供たちは次々と結婚して1人ずつ家を出ていった)
2:sequentially
「sequentially」は、「順次に」「連続して」などの意味を持つ副詞です。手順を1つずつ順番に実行する場合や、物語が時間的な順序に従って進行する場合などに用いられます。あるルールに従って行なわれる際にも使用されるので、日本語の「逐次」と同じような意味合いで使うことができそうです。
(例文)
・I will contact those who pass the interview sequentially.(面接合格者には、私から逐次連絡をいたします)
・The data is processed sequentially.(このデータは順次処理されます)
最後に
「逐次」とは、「順を追って次々に物事がなされるさま」。ある順序に従って物事が行なわれることがポイントです。上司との会話で「逐次報告いたします」「逐次連絡いたします」というように使うことで、綿密にコミュニケーションをとることができるでしょう。類語である「随時」や「順次」の意味も覚えて、自信を持って使い分けられたら良いですね。
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