必要は発明の母とは? 意味を紹介
「必要は発明の母(ひつようははつめいのはは)」とは、発明は必要があるところから生まれることを意味する言葉です。
何もないところに発明が生まれるのではなく、「この作業が不便」「このようなものがあったらいいのに…」というニーズから、発明が誕生することを表現しています。
・トートバッグの中身がいつもぐちゃぐちゃになる。必要は発明の母というから、工夫して解決策を発明してみたい
・小学生が身近な困りごとから発明をして、特許を取得したらしい。必要は発明の母とはよく言ったものだ
必要は発明の母
出典:小学館 デジタル大辞泉
発明は必要があるところから生まれるということ。
「必要は発明の母」は誰の言葉?
「必要は発明の母」はトーマス・エジソン(1847~1931)の言葉といわれることがありますが、実際にはそうではないようです。エジソンが好んで使ったらしいのようですが、もともとは小説家のジョナサン・スウィフトの著書『ガリバー旅行記』のなかで記載がみられたとされています。同作品では「必要は発明の母(Necessity is the mother of invention)」をはじめ、さまざまな名言が記されました。
ガリバー旅行記は1726年に刊行された本のため、エジソンの時代にはすでに古典の位置づけで、「必要は発明の母」なども誰もがよく知るフレーズだったのかもしれません。
必要は発明の母! では、父は?
『ガリバー旅行記』のなかでスウィフトは「必要は発明の母」だと述べたとされますが、「発明の父」については述べられていないようです。そのため、さまざまな「発明の父」が大喜利のように取り沙汰されている傾向がみられます。
よく挙げられるのが「偶然」です。必要に迫られて発明が誕生することもあれば、「たまたま手順を変えてみた」「間違っていつもと違う材料を使った」などの偶然から、発明が生まれることも。
また、「怠惰」も発明の父と呼ばれることがあります。怠けたいという気持ちから、手間を省くためのアイデアが生まれることもあるでしょう。
「締め切り」も、発明の父として挙げらえれる一つです。締め切りに迫られて焦っているときに、作業時間を短縮するようなアイデアが浮かんだ経験に覚えがある人もいるのではないでしょうか。
必要は発明の母の使い方を例文でチェック
「必要は発明の母」は、次の状況で使われることがあります。
・切羽詰まったとき
・不便なことがあるとき
それぞれの状況でどのように使うのか、例文を通してみていきましょう。
切羽詰まったとき
「必要は発明の母」は、事態が行き詰まってどうしようもなくなったときには、かえって活路が開けるという意味で使われることもあります。
・寝坊をした。ヘアセットをする時間がなくてゴムで髪をひとまとめにして学校に行ったら、絶賛の嵐だった。時短のためのヘアスタイルだが、必要は発明の母ともいえるかもしれない
・どう考えても締め切りに間に合わない。必要は発明の母というから、きっと打開するアイデアが思い浮かぶはずだ
不便なことがあるとき
不自由なことや不便なことがあるからこそ、発明は生まれるといえます。不便なことがあったときは発明のチャンス。会話例を紹介します。
A「玄関のブーツのなかに靴下が入っていたよ。何か意味があるの? 」
B「ああやっておくと、靴下を履く手間でブーツも履けるでしょう?必要は発明の母だよ」
A「靴下をブーツのなかに仕込むほうが、手間がかかりそうだけど……」
必要は発明の母と類似・言い換え可能な意味の言葉
「必要は発明の母」と類似した意味で使われる言葉を、いくつか紹介します。
いずれも困ったことや解決したいことがあり、活路を見出したり、よりよい結果になったりする状況で使われます。それぞれの使い方やニュアンスの違いを、例文を通して見ていきましょう。
窮すれば通ず
「窮すれば通ず(きゅうすればつうず)」とは、事態が行き詰まって困り切ると、かえって思いがけない活路が開けてくるものであるという意味の言葉です。中国の書物『易経』に由来する言葉とされています。
・赤字で倒産するしかない……と困り切っていたときに、叔父から電話があった。会社の窮状を伝えると、少しなら融資をしてくれるらしい。窮すれば通ずだ
案ずるより産むが易し
「案ずるより産むが易し(あんずるよりうむがやすし)」とは、物事はあれこれ心配するより実行してみれば案外たやすいものだという意味の言葉です。「困った困った」と言っているよりも、とにかく行動してみれば、何かの解決策が見つかるのかもしれません。
・心配しても何も生まれないよ。案ずるより産むが易しだよ
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一陽来復
「一陽来復(いちようらいふく)」とは、冬が去り春が来ることや、悪いことが続いた後、ようやく物事がよい方に向かうことです。
・いつまでも悪いことばかりは続かない。一陽来復というから、きっとよいことがあるはず
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活路を開く
「活路を開く(かつろをひらく)」とは、追い詰められた状態から逃れ出て生きのびる方法を見つけることです。
・今は不安かもしれないが、もがいているうちに活路は開けるはず
突破口を開く
「突破口を開く(とっぱこうをひらく)」とは、敵陣の一部を突破して作った攻め口を開くことですが、困難や障害を乗りこえる手がかりを見つける意味でも使われます。
・試行錯誤しているうちに、突破口を開いた。後は突き進むのみだ
窮地を楽しむ余裕を持とう
必要に迫られると、思わぬ優れたアイデアが浮かぶことがあります。追い詰められてはじめて、打開策が浮かぶこともあります。
必要は発明の母です。窮地を楽しむ余裕を持つことで、かえって素晴らしい発見があるかもしれません。
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