「夜明け前が一番暗い」とは? 意味を紹介
「夜明け前が一番暗い」とは、「苦難や雌伏の期間は終わりかけの時期が最も苦しい。それを乗り越えれば事態が好転するだろう」という意味の言葉です。
「夜」を「苦難の時期」、「朝」を「苦難が終わったとき」や「明るい未来」、「暗さ」を「苦しさ」にたとえ、「苦難が終わる前に最も苦しい経験をする」と説いています。また、逆説的に「苦しさが増してきたなら、苦難の終わりが近い」という意味でも使われる傾向にある言葉です。
夜明け前が一番暗い
出典:小学館 デジタル大辞泉
苦難や雌伏の期間は、終わりかけの時期が最も苦しい。それを乗り越えれば、事態が好転するだろう。
「夜明け前が一番暗い」の使い方を例文で紹介
「夜明け前が一番暗い」の使い方を例文を通して紹介します。
・実験がうまくいかないのは、正しくアプローチしているからだよ。夜明け前が一番暗いというから、今を乗り越えればきっとよい結果が見られるはずだ
・夜明け前が一番暗いというけれど、苦難が終わるとは限らない
・もう少しだから頑張ろう。夜明け前が一番暗いはずだから
「夜明け前が一番暗い」は、苦難が終わることを前提とした言葉です。明るい未来が待っているはずだというニュアンスがあるため、他人や自分を励ますときに使う傾向にあります。
「夜明け前が一番暗い」はシェイクスピアの言葉
「夜明け前が一番暗い」は、シェイクスピアが著した『マクベス』のなかのマルカム王子の台詞、「It’s always darkest before the dawn」を訳した言葉です。直訳すると「夜明け前が一番暗い」ですが、「朝の来ない夜はない」と意訳されることもあります。
『マクベス』は実在したスコットランドの王、マクベスをモデルとした悲劇です。『オセロー』『リア王』『ハムレット』と並んで、シェイクスピアの四大悲劇とも呼ばれます。
本当に「夜明け前が一番暗い」?
「夜明け前が一番暗い」は、夜を苦難のとき、朝を明るい未来にたとえた言葉。あくまでも比喩的表現であり、実際に夜明け前が一番暗いとはいえないようです。
国立天文台によれば、日の出の前の空はうす暗くはあるものの、すでに明るくなっています。屋外ならば電灯なしに過ごせる程度には明るいため、夜明け前は暗くないといえるでしょう。
なお、日の出前や日の入り後の状態を「簿明(はくめい)」と呼びます。簿明には「市民簿明(常用簿明)」と「天文簿明」があり、市民簿明は灯りなしで屋外活動ができる状態、天文簿明は空の明るさが星明かりよりも明るい状態が目安のようです。
一般に、市民簿明は日の出前・日の入り後の30分程度、天文簿明は日の出前・日の入り後の90分程度を指します。いずれにしても、日の出前に暗闇が濃くならないことから生まれた言葉といえます。
参考:国立天文台|どうなったときが「日の出」「日の入り」?もう真っ暗?
「夜明け前が一番暗い」と類似する意味の言葉
「夜明け前が一番暗い」のように、苦しいことがあっても明るい未来があるといったニュアンスの言葉は少なくありません。たとえば、次の言葉は「夜明け前が一番暗い」と類似した意味で使われることがあります。
・待てば海路の日和あり
・待てば甘露の日和あり
・果報は寝て待て
・人事を尽くして天命を待つ
・急いては事を仕損じる
いずれも類似する意味ですが、ニュアンスは異なります。それぞれの使い方やニュアンスの違いを見ていきましょう。
待てば海路の日和あり
「待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり)」とは、待っていれば、海の静かないい日和がやってくるという意味の言葉です。うまくいかないことがあっても、辛抱強く待っていれば、いつかはいいことがあるというポジティブな表現といえます。
・多分、今がそのタイミングではないんだよ。待てば海路の日和ありというから、もう少し気長に待ってみれば?
・彼からうれしい手紙が届いた。待てば海路の日和ありとはこのことだ
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待てば甘露の日和あり
「待てば甘露の日和あり(まてばかんろのひよりあり)」とは、待っていれば甘露が降ってくるような日和もあるという意味で、焦らずにじっくりと待っていれば、やがてよい機会がめぐってくることを指します。「待てば海路の日和あり」と同じ意味の言葉です。
・焦って失敗するよりは、時間がかかっても準備万端になってから始めよう。待てば甘露の日和ありというから。
・待てば甘露の日和ありというでしょう。慌てずに待っていよう。
元々は「待てば甘露の日和あり」でしたが、甘露を海路に置き換えた表現のほうが知られるようになりました。なお、甘露とは、天子が仁政を施すと天が感じ入って降らすという甘い露のことです。中国古来の伝説で、いわゆる恵みの雨を指します。
果報は寝て待て
「果報は寝て待て(かほうはねてまて)」とは、幸福の訪れは人間の力ではどうすることもできないから、焦らずに時機を待てという意味の言葉です。
・後は結果を待つだけだ。果報は寝て待てというから、寝て待っていよう
・がむしゃらに努力をするのもよいが、機会を待つのも大切だよ。果報は寝て待てというから
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人事を尽くして天命を待つ
「人事を尽くして天命を待つ(じんじをつくしててんめいをまつ)」とは、力のあらん限りを尽くして、あとは静かに天命に任せることです。
・十分に頑張ったから、後は人事を尽くして天命を待とう
・人事を尽くして天命を待つのは、人事を尽くしたときだけだ
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急いては事を仕損じる
「急いては事を仕損じる(せいてはことをしそんじる)」とは、急ぎ慌てて行うとやり損なう、落ち着いてやるべきだといった意味の言葉です。「急いては事をし損ずる」と表記することもあります。
・急いては事を仕損じるというから、まずは落ち着こう
・事件の全容がわかってから行動すべきだ。急いては事を仕損じるというから
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適切な場面で「夜明け前が一番暗い」を使おう
「夜明け前が一番暗い」は、苦労をしている方や困難な道を選んだ方を励ますときにも使える言葉です。
また、苦難に遭っているときに、自分を鼓舞するときにも使えます。意味や使い方の例を理解し、適切な場面で使うようにしましょう。
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