「当該」と「該当」という言葉の意味と、その違いを知っていますか? どちらも、仕事のメールや、契約書などで見かける機会がある表現ですよね。ですが、それぞれの意味の違いがはっきりとわからないという方も、いらっしゃるのではないでしょうか? 字面も似ているだけに、混乱しがちですよね。
ビジネスシーンなど、かしこまった場面で使うことが多い言葉ですので、正しい意味を押さえておきましょう。法律用語としても使われることがある表現ですので、知っておくと安心ですよ。
「当該」と「該当」の意味と読み方は?
まずは、当該と該当の意味と読み方を、それぞれ見ていきましょう。
1:当該(とうがい)
「当該」は、「その」のかしこまった表現。前に必ず文章が来ることもポイントです。前にあるものを指す時に使う言葉ということですね。例えば、契約書を交わす場合で考えてみましょう。Aという契約書に関する説明文が冒頭にあり、次の文章で、「その契約」と言うかわりに、「当該契約」と使うこともあります。
2:該当(がいとう)
「該当」は、ある条件にあてはまるという意味で使う言葉です。前述の「当該」が、「その」と言い換えられるのに対して、「該当」は、「あてはまる」というような言い換えができるでしょう。「該当箇所」など、他の言葉とともに使うことも。また、「該当する」など、動詞として使うこともありますよ。
ここまでは、当該と該当の意味を解説しました。ただ、これだけだと、少しイメージがしにくいかもしれませんね。そこで、ここからは例文で、使い方を具体的に解説します。
例文は?
当該と該当の使い方を、例文で見ていきましょう。具体的な例を見ると、イメージがつきやすくなりますよ。
1:当該の例文
「当該契約内容に関して、ご不明な点は、お問い合わせください」
やや堅い表現ですが、「その契約内容に関して、わからないことがある場合は、問い合わせをしてください」というような意味ですね。
当該は、「当該契約」など、その前の文に出てきた名詞の前につくことが一般的。「当該」を単体で使うことはほとんどありません。当該の後ろについている言葉と、前の文を見ると、どういう意味かが分かりやすくなりますよ。
2:該当の例文
「以下の症状のうち、該当するものにチェックをしてください」
例えば、病院の問診票などで、過去の病気の有無や症状をチェックすることがありますよね。このような場面で「該当の箇所にチェックを入れてください」などと、記載されていることもありますよ。「あてはまる」という表現に言い換えることができるでしょう。
なお、該当は「該当する」と表現することがありますが、当該の場合は「当該する」とはなりません。漢字一文字入れ替わるだけですが、このように違ってしまうのですね。似ているだけに、うっかり使ってしまわないよう、誤用にも注意したいこところです。
どんな時に使うの?
ここからは、当該と該当を使うことが多い場面も、見ていきましょう。
1:当該を使うことが多い場面
当該という言葉を、日常会話で耳にする機会は、少ないのではないでしょうか? ですが、不動産などの契約を交わす際、契約書をよく見ると、「当該」という言葉が使われていることが多いですよ。
「契約書の文章は、独特の言い回しで読みにくい」という声もよく耳にします。これには、「当該」のような、あまり聞き慣れないような言葉を使っていることも、関係しているかもしれませんね。
例えば、「当該期間中の解約」などの表現が、契約書の中で出てくることもあるでしょう。これは、当該を「その」と訳すと、ぐっと読みやすくなりますよ。
当該という言葉が出てくる場合、一文前に戻ると、当該にあたる話題が、書かれているはずです。例えば、「当該期間中の解約について」などの文の場合、この文章の前に「契約期間は3か月」などと、記載されていることが多いですよ。つまり、当該期間は、3か月の契約期間のことを言っているというイメージですね。
やや堅めな表現ですが、契約書やビジネスでの表現として押さえておくと、何かと便利です。
2:該当を使うことが多い場面
当該に比べると、該当の方が、使う場面は多いかもしれません。学校や資格試験などで、「該当箇所に記入すること」などの表現を見たことがある方も、いらっしゃるのではないでしょうか? 例えば、「以下の英語表現に該当する日本語を書きなさい」などですね。
また、年末調整などで、「以下の条件に該当する社員は、人事部に申し出ること」などのように使われていることもありますよ。
該当も、日常会話の中では、あまり使わない言葉かもしれませんね。ですが、文章表現としてはよく使われる表現ですので、使い方を知っておくと、役立つ機会は多いでしょう。
「当該箇所」と「該当箇所」の意味と違いは?
ここまで、当該と該当の意味や、使い方の違いについて見ていきました。ところで、「当該箇所」と「該当箇所」という言葉を聞いたことはありませんか? この二つの意味の違いについても、押さえておきましょう。
まず、「当該箇所」とは、ある事柄に関係するものや、事柄を指して言う言葉です。
例えば、ある会社の資料に誤字があったとしましょう。その際、作り直す時間がないということもありますよね。このような場合に、別紙で修正依頼というような文章をつけることがあります。その文章の中で、「資料〇ページに〇〇という誤字がありました。当該箇所については、以下のように読み替えてください」などと書いてあることも。この場合、「誤字」を指しているのが、「当該箇所」ということになります。
一方、「該当箇所」は、言い換えると、「あてはまるところやもの」のこと。例えば、アンケートなどで、「この製品のどんな点が気に入りましたか。該当箇所にレ点をつけてください」などと書かれていることもありますね。この場合、自分が気に入った点として、あてはまる回答が、「該当箇所」ということになります。
最後に
この記事では、当該と該当の読み方や、意味の違いについて解説しました。どちらも日常生活ではあまり聞き慣れない言葉かもしれません。ですが、契約書を交わす際や、オフィシャルな場面ではよく出てくる表現です。また、字面が似ているため、混同にも注意したい言葉ですね。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
【関連記事】
塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン