「アサイン」という言葉の意味をご存じでしょうか? 「重要な案件にアサインされた」など、仕事で聞いたことがあるという方もいらっしゃることでしょう。ですが、人によっては、「聞いたことがない」や、「詳しく意味を知らない」という方もいらっしゃるかもしれませんね。また、業界によって使われ方や意味が異なるため、誤解を招きやすい言葉ともいえるでしょう。
そこで、この記事では、アサインの一般的な意味や、業界ごとの使われ方の違いなどを解説します。
アサインの意味
「アサイン」の意味を簡単にいうと、割り当てることや、任命すること。例えば、「来年度の広報イベントの、プロジェクトリーダーにアサインされた」など、役割や仕事を割り当てられた時に使いますよ。なお、英語で「assign」と表記することも。英語の「assign」も、「アサイン」と同じく、「仕事や役割を割り当てる」という意味になります。
アサインの使い方
アサインの使い方も例文とともに見ていきましょう。「アサイン」は、どちらかというと、上司や会社の指示で何かの業務や役割に任命されるというニュアンスが強いといえます。
ちなみに、自分で何かに立候補することをアサインと表現することは、あまりありません。ですので、例えばリーダーとしての役割を任された場合、「私はリーダーにアサインする」ではなく、「私はリーダーにアサインされた」という表現が自然でしょう。
また、「この業務を誰にアサインするか迷っている」などと使われることも。この場合、「この業務を誰に担当してもらうか迷っている」というような意味になりますよ。
アサインでは、意味が通じないことも…
IT系企業や、外資系企業などでは、アサインという言葉をよく耳にする機会があるかもしれません。ですが、業界によっては全く使わないということもあるようです。違う業界へ転職した際などは、気を付けた方がいいでしょう。
中には、「アサイン」を「サイン」と聞き間違えて、「何にサインすればいいですか?」と聞かれたというエピソードも聞いたことがありますよ。その人は、その場で慌てて「担当してもらうという意味です」と言い直したそうですが、とても気まずい空気が流れたといいます。
また、「意味は分かるけれど、カタカナ語に違和感がある」や、「英語のassignは動詞なので、アサインするという表現は、おかしいのでは?」などの意見もあるようですね。
そのため、違う業界の人や、取引先などと話す際は、特に注意した方がいいかもしれません。言い換え表現として、「担当」や「任命」などの言葉もセットで覚えておくと便利です。場面や人に応じて言い分けることができるといいですね。
アサインメントとは?
アサインと関係の深い言葉に、「アサインメント」という言葉がありますよ。アサインメントとは、英語の「assignment」が元になっている言葉で、「割り当てられた仕事や課題」を意味します。ちなみに、「学校の宿題」という意味もあり、学生時代に習った覚えがあるという方も多いでしょう。
また、アサインメントは、業務分担などの際に使うこともあります。例えば、課内で誰にどの仕事を割り振るかのことを、「アサインメント」や、「ジョブアサインメント」と呼んでいる会社もありますよ。
なお、仕事の割り振りを考える際、一つの案件を一人で担当すると、「休みが取りにくい」だったりとか、「誰が何をしているかが分かりにくい」などの悩みの声もあるようです。その解決策として、一つの仕事を二人で担当してもらうというケースもあります。これを、「ダブルアサインメント」と呼んで、制度として導入している会社もあるようですね。
こうすれば、一人が休んでも「担当者不在で仕事が止まってしまう」とか、「顧客からの問い合わせに対応できる人がいない」という事態も防ぎやすくなるでしょう。また、育児や介護、病気などで休職者がいた場合でも、「この仕事をできる人が他に誰もいない」という困った状況も避けやすくなりますね。
アサインメントの際の注意点
仕事を分担する際に、気を付けたいのは、特定の人だけに仕事が偏ってしまうこと。実際にあった事例を見ていきましょう。
あるIT系の会社では、一つの案件を複数人に担当してもらうようにしていました。ですが、実際は、一人の若手社員(Kさん)がほとんどの業務をこなしていたといいます。
Kさんは、責任感が強く、仕事への意欲も高かったため、自分から率先して仕事を引き受けていました。一緒にアサインされていたメンバーも、「Kさんがやりたいと言っているので」と任せきりになってしまっていたようです。また、上司も、身体を壊さないようにと忠告しつつも、「Kさんの成長のため」と見守ることに。
ですが、Kさんはある日突然、「転職先が決まったので、退職します」と上司へ申し出ました。必死に引き止めた同僚たちと上司でしたが、Kさんの意思が変わることはなく、結局退職することに…。
Kさんはある程度の仕事の引継ぎはしたものの、Kさんにしかやり方が分からないような仕事も多くなってしまっていました。そのため、部署内はしばらく混乱の日々だったといいます。
このように、「複数人にアサインしている仕事だから大丈夫」とは言い切れないケースもあるということですね。アサインして終わりではなく、実際のところ誰かに仕事や知識が集中してしまっていないかは、注意が必要でしょう。
ホテルの「ルームアサイン」とは?
ホテル業界での「アサイン」の使い方の例も見ていきましょう。前述の通り、「アサイン」は、「割り当てる」という意味の言葉です。ですので、ホテルの部屋を宿泊客に割り当てることを、「ルームアサイン」、「ルームアサインメント」などと言うこともあるようですね。
人によっては、あまり聞き慣れないという方もいらっしゃることでしょう。「ルームアサイン」は、どちらかというと、業界用語に近い言葉とも言えますが、覚えておくと便利かもしれません。
最後に
この記事では、「アサイン」の意味や、ビジネスシーンでの使い方や言い換え表現、ホテルでのアサインの意味などを解説しました。聞き慣れないという方もいらっしゃる言葉かもしれませんが、業界によっては日常的に使われる言葉ですので、おさえておくと安心ですね。
TOP画像/(c)Adobe Stock
塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサルの傍ら、ポジティブ心理学をベースとした研修講師としても活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン