コモディティ(commodity)という言葉を聞いたことがあるでしょうか? この言葉は、ラテン語の「commoditas」を語源としていて、「適合」や「利益」といった意味を持ちます。今では、私たちの日常生活や経済活動に深く関わる商品やサービスを指す言葉として使用されています。
日頃、私たちが頻繁に利用するスーパーマーケットやコンビニエンスストアには、コモディティがあふれています。それは、取り扱われている商品全てが「コモディティ」と表現しても過言ではないほどですね。
この記事では、コモディティとは何か? その背景や私たちの日常生活に、どのような影響を及ぼしているのかについて、わかりやすく解説します。
コモディティの基本
コモディティとは、一般的にその成分や性能に大きな差が無くて、広く流通している商品のこと。世界規模で見ると、国際的に取引される原油、金・銀・銅、ゴム、レアメタルなど、穀物ならば小麦、米、コーンなどが該当します。
具体例として示した商品に共通するのは、成分や機能に大きな差が無いことです。厳密に分析して、それぞれの成分を比較すれば違いはあるでしょう。しかし、見た目ではどこの国で産出された物かを判別することはできません。こうした物をコモディティと呼んでいます。
コモディティと商品取引所の関係
主要なコモディティの価格は、商品取引所で決まります。最もわかりやすい例としては、「石油」が挙げられますね。私たちが購入するガソリンや灯油の値段に影響を及ぼすのが「原油価格」です。原油の取引価格の指標となるのは、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されるウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の先物相場になります。
世界経済や私たちの生活に大きな影響を与えるコモディティの価格は、公正で安定していることが望ましいのがわかりますね。そのため、商品取引所の主な役割は「需要と供給に基づいた公正な市場価格を決定する場やステージ」であることになります。
ちなみに、Oggi読者の皆さんも大好きな「金・ゴールド」の主要取引所は、香港・チューリッヒ・ロンドン・ニューヨークにあります。さらに、魅惑の輝きで女性を虜にする「ダイヤモンド」の取引で有名なのは、アントワープとニューヨークにあるダイヤモンド取引所になりますよ。どんな取引がなされているのか、とても気になりますね!
コモディティ化とは
さて、成分や性能に大きな差の無い商品や製品のことを「コモディティ」と呼ぶことはご理解いただけたと思います。それぞれの特徴が乏しく、明確な違いを特定できなくなった状態を指してコモディティ化(commoditization)と表現します。
コモディティ化の具体例を見てみましょう。例えば、コンビニエンスストアでポケットティッシュを購入するとします。あなたは、何を基準にして選ぶでしょうか? 「ポケットティッシュなんて、どれも同じような物」と思っているとしたら、きっと値段の安いものを選ぶことでしょう。
このように顧客から見て「どの製品も同じように見える」状況をコモディティ化と呼びます。こんな状態になってしまうと、商品同士の価格競争は激しくなり収益性は低下します。企業の立場で考えると、できるだけ商品やサービスのコモディティ化は避けたいところでしょう。
顧客視点から見た影響
企業の立場からすれば避けたいコモディティ化も、消費者の目線で見れば「ありがたい」面があります。今や、私たちの生活必需品となってしまったスマートフォン(以下、スマホ)を例に考えるとわかりやすいですよ。
メーカーやOSに固守しなければ、どの機種を選んだらいいか悩んでしまいますよね。もはや機能にはさほど差はなく「価格」と「デザイン」が選択基準となります。メーカー側は、少しでも差別化を図ろうと、つぎつぎと新しい機種を発表し価格競争に陥ります。
消費者としては、高機能のスマホをより手頃な価格で手にすることができます。ただし、あまりに機種が多くなると「どれを選ぶか?」が悩みになりますね…。
日常生活での例
生活の中にある身近なコモディティ化の例を取り上げてみましょう。洗剤や歯ブラシなどの日用品は、どのメーカーの商品も似たような効果で大きな差はありません。洗剤などは、様々なブランドがあってどれも「汚れを落とす!」という機能に限って見ればどれも同じようなものです。
ハンバーガーショップや牛丼チェーン店などファストフードの分野では、味や価格が似通っています。例えば、大手牛丼チェーン店の吉野家やすき家は、どちらも手頃な価格でおいしい牛丼を提供しています。
家電製品の冷蔵庫、洗濯機などは、どのメーカーも同様の機能を提供しています。何を基準に選ぶかといえば、主にデザインや容量やサイズ、そして値段が大きなファクターとなるのではないでしょうか?
生活に与える影響
ここで、コモディティ化について整理します。消費者は、商品のコモディティ化が進むと価格や利便性、デザイン性を重視するようになります。商品を提供する企業側は、他社との差別化が難しくなり、自ずと価格競争は激しくなります。このことによって、製品の価格は下がり、消費者はよりお得な選択ができるようになります。
しかしながら、いいことばかりではありません。消費者にとって悩ましいことは、商品選択に時間をかけなければならないことです。
企業側は利益を削られ、商品の製造を続けられなくなります。最悪の場合には、廃業や倒産に追い込まれることにもなりかねません。
メリットとデメリット
ここで、コモディティ化の長所と短所を整理しておきましょう。
長所は、消費者とって低価格で高品質な商品が入手しやすくなること。一方、企業側は生産工程の効率化を追求することでコスト削減が図れます。さらに価格競争が激化すれば、よりよい商品が安い値段で市場に出回ることになるので、消費者にとってはうれしい限りですね♡
短所は、企業が価格競争に追い込まれ、利益が薄くなることです。商品間の差別化も難しくなるでしょう。過度な価格競争が進めば、品質の低下を招く可能性も出てきます。
消費者にとっては選択肢が多すぎて違いがわからず、どれを選んだらいいか迷うことになってしまうでしょう。
こうして考えてみると、きっとOggi読者の皆さんも普段の生活の中でコモディティ化の長所と短所の両方を実感したことがあるのではないでしょうか?
最後に
コモディティは、世界経済や私たちの生活に大きな影響を及ぼしていることがわかりました。成分や機能に大きな差があるわけではなく、差別化が難しいこともわかりましたね。その上で、市場でさまざまな商品が激しい競争を繰り広げ、コモディティ化していくことも理解してもらえたかと思います。
コモディティを理解することは、消費者として商品選びに役立つだけではありません。ビジネスや投資の判断にも有効なんです。
例えば、投資を検討するときは「原油」や「金」などの市場動向を把握することが重要ですよね。他にも、あなたが勤める会社が製造・販売する商品が、マーケットでコモディティ化しているかどうかは、あなたの給与にも大きく影響しているでしょう。
そうした意味からも「コモディティ化」を理解しておくことに損はありません! 賢い消費者兼ビジネスパーソンとして「コモディティ」の知識を生かしてくださいね。
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