起業や新規事業を始める際に、課題となるのが商品やサービスの開発ではないでしょうか? 経験が浅い中で、なるべくコストを抑えて商品を生み出し、リスクを回避したいと考えるのは当然のことです。そこで注目されているのが、「リーンスタートアップ」という手法。そこで本記事では、「リーンスタートアップ」の意味や手順、メリット・デメリットを解説します。
なお、ネット上を検索すると、「リーンスタートアップ」と「リーン・スタートアップ」という両方の表記が出てきますが、どちらも正しいものです。この記事では、「リーンスタートアップ」と表記を統一いたします。
「リーンスタートアップ」の意味
まず、「リーンスタートアップ」の意味を確認してみると、
リーン‐スタートアップ【lean startup】
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
《leanは「やせた、引き締まった」の意》新規事業を立ち上げる際に、最低限の要求に応える製品やサービスをまず提供し、顧客の反応をみながら順次改良を図ることを繰り返すビジネス手法。
とあります。起業や新規事業を立ち上げる際、経験や過去のデータがない中で無闇に資金を投じて製品を作ってしまうと、需要がなく売れずに大量の在庫を抱えるリスクを負う可能性があります。「リーンスタートアップ」は、そのリスクをできるだけ減らすために、はじめは事業をスモールスタートさせて徐々に活動範囲を拡大していくというやり方です。
そもそもleanには、「やせた、引き締まった」、startupには、「開始、始動」などの意味があることから、ビジネスに置き換えて考えると無駄を削ぎ落としたビジネスモデルだということができるでしょう。つまり「リーンスタートアップ」とは、低資金で確実に事業を成功させていく手法だと考えられます。
「リーンスタートアップ」のやり方
「リーンスタートアップ」は、スタートアップ企業のビジネスモデルの一つとして注目されています。新規事業などで「リーンスタートアップ」の手法を取り入れる際、どのような手順で行うのか、一緒に確認していきましょう。
1:仮説を立てる
新しく製品やサービスを生み出す場合、まずはターゲットとなる顧客層を決め、その顧客がどんな価値を求めているかを仮定します(これを「価値仮説」と言います)。また、その製品やサービスが市場で長期的に成功するための計画も仮定するのです(これを「成長仮説」と言います)。
例えば、新しいスキンケア商品を開発する場合、ターゲットを乾燥肌に悩む人たちにするとします。その人たちが求めるのは、保湿効果の高い商品だと仮定するわけです。
2:MVP(最小限のプロダクト)を作る
1で立てた仮説を検証するために、MVP(Minimum Viable Product)を作ります。MVPは、開発にかかるコストや時間を最小限におさえながら、顧客に価値を提供できるものであることがポイントです。
新しいスキンケア商品の例で考えると、まず基本的な成分だけを使った保湿効果の高いクリームの試供品を作り、顧客の反応を見ます。
3:顧客の反応を測定する
MVPを提供した後、顧客の反応を測定します。フィードバックを集め、どの部分が好評で、どの部分に改善が必要かを確認するわけです。アンケートやインタビュー、SNSでのコメントなど、さまざまな方法でデータを収集します。
4:学習と改善
集めたデータをもとに、MVPにどのような改善を加えるべきかを検討します。もし、顧客からいい反応が得られなかった場合は、原因を突き詰め、次の商品開発に反映させます。
このサイクルを繰り返すことで、製品やサービスの質が向上していきます。
例えば、スキンケア商品の場合、顧客のフィードバックをもとに成分やパッケージデザインを調整し、再度、市場に投入するということです。
5:再構築
MVPに大きな問題は見られず微調整で済む場合もあれば、デザインや使用する素材などを大幅に変更する必要がある場合もあるでしょう。もし、大幅な変更が必要な場合は、商品のコンセプトや製造プロセスなどを再構築します。
この工程を通じて、コストを抑えながら、より市場に適した製品やサービスを開発することができます。
「リーンスタートアップ」のメリット
続いて、「リーンスタートアップ」をビジネスの手法として取り入れるメリットを確認していきましょう。
1:無駄なコストや時間がかからない
「リーンスタートアップ」では、必要最小限の価値を備えた商品やサービス(MVP)を使うため、コストや時間を節約できます。完成品を作るまでに長い道のりをへる必要や、コストをかけて製作してみたものの、結局あまり売れなかったなどの無駄を削ることができることが、「リーンスタートアップ」を採用する理由の一つでしょう。
2:顧客のニーズに合った商品・サービスを開発できる
「リーンスタートアップ」の特徴の一つに、低コストで商品を製作し→市場に出して顧客のニーズを把握するという工程を繰り返すやり方があります。その度に、顧客のフィードバックが得られるため、よりスピーディーに顧客の要望に近い製品やサービスに改良できることもメリットの一つといえるでしょう。
「リーンスタートアップ」のデメリット
「リーンスタートアップ」を行う際にデメリットはあるのでしょうか? 取り入れる前に把握しておきたいポイントを紹介します。
1:ブランドイメージがブレる
「リーンスタートアップ」では、MVPを市場に送り出し、顧客のニーズを知るという手法がとられます。これには、顧客のニーズに合った商品を開発するという点では役に立つ反面、顧客の声を聞きすぎてしまい、当初計画していたブランドイメージからずれてしまうというデメリットがあります。
顧客ニーズに合った商品開発とともに、企業理念や商品開発をする目的を見失わないようにしましょう。
2:SNSの口コミによる悪評
近年では、SNSで企業の商品やサービスに関する評価をする機会が増えていますよね。もし、MVPによる検証中に「この商品は作りが雑ですぐに壊れてしまった」「デザインがかわいくない」などと悪評が出てしまうと、企業の価値にまで影響が及ぶ恐れもあります。一度、悪評が広がってしまうと、その後改良していい商品ができたとしても売れない可能性が出てきてしまいますね。
最後に
「リーンスタートアップ」は、MVPを活用することで少ないコストで、スピーディーに事業を進められるビジネスモデルであることがわかりました。起業や新規事業を考えているという人は、本記事で紹介したメリット、デメリットを理解した上で取り入れてみてくださいね。
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