「カタルシス」という言葉は、耳にしたことはあっても、あまり馴染みのない言葉ですよね。しかし、嫌なことがあって友達に愚痴を言ったり、映画を見て大泣きするなど、案外日常生活で無意識に「カタルシス」を行なっていることはよくあるものです。
ビジネスシーンでは、聞き手に回ってお客様の悩みを聞き出すことで、信頼関係がアップしたり、販売促進につなげるなどのメリットもありますよ。本記事では、「カタルシス」の意味やビジネスシーンでの活用法まで解説します。
「カタルシス」の意味
「カタルシス」は、ギリシア語で「katharsis」といい、「浄化」「排泄」という意味を指します。心の中に溜まったネガティブな感情を解放することで、気持ちがすっきりと浄化されることを「カタルシス」と呼んでいます。
古くは、古代ギリシアの哲学者・アリストテレスの書物『詩学』の中で用いられた言葉で、芸術の世界で重要な概念となりました。のちに、精神医学や心理学などでも用いられるようになり、現在では抑圧されていた感情を発散して、すっきりした気分の状態を指す言葉として浸透しています。
日常生活における「カタルシス効果」とは?
カタルシス効果とは、ネガティブな感情を発散して、心に安心感を得る現象のこと。例えば、仕事で失敗をしたときに、思いっきり泣いたり、人に話すことでカタルシス効果を得やすくなりますね。
または、失恋した時に恋愛映画を見て大泣きしたり、音楽を聴いて涙を流すことで気持ちが浄化され、落ち着くということも。自分が経験したのと同じようなストーリーの映画を見て主人公に共感することで、鬱屈していた感情を解放することができるのです。
皆さんも、日頃の生活を振り返ってみて、「そういえば、自分もそうやってストレスを発散していた!」という経験があるのではないでしょうか?
ビジネスシーンでの「カタルシス」の活用法
ビジネスシーンでは、クライアントやお客様、後輩などに本音を語ってもらうことで、相手との信頼関係が深まることもあります。相手に「この人には、安心してなんでも話せるな」と感じてもらえることで、仕事がスムーズに進んだり、商談が決まりやすくなるなどのメリットもあるでしょう。
以下にカタルシスの活用法を2つ紹介します。
1:顧客の悩みを聞き、距離を縮める
顧客やクライアントとの距離を縮めたい時には、なるべく聞き手に回ってみてください。相手の悩みや心配事、不安に感じていることを聞き出すことで、「この人は、私に真摯に向き合ってくれている」と好感を抱きやすくなります。
また、なかなか心を開いてくれない顧客に対しては、「同じ年代のお客様だと、〇〇について悩まれている方が多いですが、〜様はいかがですか?」と聞いてみることで、相手の悩みや本音を引き出すことができるでしょう。
2:悩みに寄り添った商品を提供する
相手の話を引き出し、パーソナリティを理解することで、より相手の要望に合った商品を進めることができるはず。例えば、相手の好みに合うであろう洋服を勧めたつもりが、「結構です」と断られた場合。
「お客様とお話ししていて、こちらの色みはお好みかなと思ったのですが…、何か気になる点などございますか?」などと聞いてみることで、「色合いは好きだけど、出産後に体型が変わったので、袖が短くて二の腕が見えるのが気になる…」などの本音を引き出せることも。
「それなら、こちらの少し袖が長いタイプのシャツはいかがですか?」などと、別の商品を紹介することもできるでしょう。お客様の悩みに寄り添った商品を提案することで、商品の購入につなげられたらいいですね。
ストレスを解消する方法
毎日仕事が忙しく、ストレスが溜まって心の中がモヤモヤしている人も多いはず。心の中に溜まったネガティブな感情をすっきりさせたい! というときにはどのようにしたらいいのでしょうか。
日常生活の中に取り入れやすい方法を3つ紹介します。
1:親しい友人や家族に話を聞いてもらう
喋ることが、一番気分がすっきりするという人も多いでしょう。仕事でモヤモヤすることがあり、友人や家族に電話をして話を聞いてもらったら、気持ちが落ち着いたというのはよくあるケースですよね。
自分の考えや思っていることを口に出すことで、自分の悩みが客観視でき、アドバイスをもらって、問題が解決することもあるでしょう。1人で悩んでいるよりも、早く気分が元に戻り、解決策が思い浮かぶというメリットもあります。
しかし、いくら親しい相手とはいえ、夜中にいきなり電話をかけたり、一方的に何時間も愚痴を言うのは考えもの。「今、時間大丈夫?」などと相手への配慮を忘れないようにしましょう。
2:絵を描いたり、写真を撮るなど自己表現をする
人に自分の悩みを打ち明けたり、話したりするのが苦手な人は、自分なりのストレス発散法を見つけておくといいですね。心の中がモヤモヤしている時に、ペンを持ってイラストを描いたり、自分の体験を漫画にしてみたり、休日に外に出て気になった風景を写真に撮ると、気分が癒されていくのを感じるでしょう。
作品を通じて、自分の本音や世界観を知ってもらえるきっかけにもなるため、コミュニケーションツールとしても活用できますね。
3:映画を見たり、小説を読んだりする
アートや文化的なものに興味はあるけれど、自分で何かを作るのはハードルが高いという人は、自分が共感できる映画を見たり、漫画や小説を読むことがおすすめです。漫画の主人公に「わかる!」と共感したり、共感できるフレーズを見つけることで、言語化できなかった心の中のモヤモヤがすっきりするかもしれません。
また、舞台やミュージカル、ライブなど、生の人間が演じるものを見に行くことで、前向きなエネルギーがもらえて、「また頑張ろう!」と思えるきっかけになるかもしれませんね。
最後に
「カタルシス」とは、心の中に溜まったネガティブな感情を解放することで、気持ちがすっきりと浄化されること。言葉自体はあまり使う機会はありませんが、意外と身近な現象といえますね。自分にとってのストレス発散法を見つけて、前向きになれるといいですね。
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