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ビジネスシーンでも使う「ボトムアップ」とは
ビジネスシーンでよく見聞きする「ボトムアップ」。管理方式に関する言葉ですが、意味はよくわからないという人もいるでしょう。「トップダウン」とともに用いることが多いので、それぞれの意味や違いを見ていきましょう。後半では、ボトムアップを実施するポイントも紹介します。
意味
「ボトムアップ」について辞書で調べました。
【bottom up】読み方:ぼとむあっぷ
『デジタル大辞泉』(小学館より引用)
下からの意見を吸い上げて全体をまとめていく管理方式。←→トップダウン
「ボトム」は英語の「bottom」が由来のカタカナ語。下部や底を意味します。「アップ」は上がることや、上げることの意。直訳では「底上げをする」という意味です。
ビジネスシーンのボトムアップは、下部(現場や従業員)からの意見を吸い上げ、それをもとにして経営層が意思決定を行うことを指します。ボトムアップは、現場や従業員の声を生かして意思決定が行える管理方式です。
ボトムアップがもたらすメリットは
管理方式をボトムアップにすると、さまざまなメリットがあるといわれます。その魅力を見ていきましょう。
現場の意見を反映しやすい
ボトムアップがもたらす大きなメリットといえるのが、現場の意見を反映しながら意思決定ができることです。お客様や取引先にもっとも近い現場から出る意見は、重要な意味を持つことが多いもの。商品やサービスをよりよくするには、現場の意見は欠かせません。
また、ボトムアップは現場の意見を重視するため、現場の状況を把握しやすくします。小さな変化に気づきやすくなり、大きなトラブルを回避することもできるでしょう。
従業員の意欲がアップし、成長につながることも
ボトムアップが、従業員の意欲向上につながるケースもあります。自分の意見が意思決定に影響すると感じると、従業員は自ら問題意識を持つようになり、相応の準備をするでしょう。主体的に動く従業員が増えると、現場はもちろん、組織全体の士気が上がり、組織の活性化につながりやすくなります。
離職率の低下
「自分の意見を聞いてもらえた」「自分の出したアイデアが採用された」のような実感があると、従業員の組織に対する信頼度は上がります。また、愛社精神が高まり、離職率低下につながることもあるでしょう。
ボトムアップにはデメリットもある?
メリットが多いと感じるボトムアップですが、当然ながらデメリットもあります。ここからは、ボトムアップのデメリットを見ていきましょう。
意思決定のスピードが落ちる
大きなデメリットになりやすいのが、意思決定のスピードが落ちることです。下部から吸い上げた意見を収集し、精査して決定するというプロセスには、相応の時間がかかるもの。即断というわけにはいかないケースも多いでしょう。
意思決定のスピードが落ちると、競合他社に遅れをとってしまったり、ビジネスチャンスを摑み損ねてしまう可能性があります。特に、スピードが必要な事案への対応は難しくなるでしょう。
全体像の把握が難しい
従業員から出る意見は、所属部署の視点にのみ立って考えているものが多くなります。その選択が他部署にどのような影響を及ぼすのか、把握できていないことが多いでしょう。ボトムアップは、全体像の把握を難しくさせる傾向があります。
従業員の質向上がないと難しい
ボトムアップを実施するには、知識や経験が豊富で、主体性の高い従業員が必要です。しかし、そのような従業員はそれほど多くないという組織も多いでしょう。また、積極的に意見を出さない従業員もいるはずです。
主体性の高い従業員の割合が多ければ、ボトムアップはうまく機能するでしょう。しかし、なかなか意見が出ないとなると、ボトムアップのメリットを生かせなくなります。ボトムアップは、従業員の質によるところが大きいといえるでしょう。
大規模な変革がしにくい
従業員視点での意見が多くなると、どうしても意見が偏ってしまいがち。組織を俯瞰した意見ではないことが多いので、大規模な変革がしにくくなります。また、多くの意見を生かそうとして、無難な意見にまとまってしまうということもあるでしょう。
「トップダウン」も知っておこう
ボトムアップとセットで使われることもある「トップダウン」についても見ていきましょう。まずは意味を紹介します。
意味
【top-down】読み方:とっぷだうん
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
企業経営などで、組織の上層部が意思決定をし、その実行を下部組織に指示する管理方式。
「トップダウン」は、経営陣などの上層部が意思決定したことをもとに、下部が動くという管理方法です。上層部が決定したことを組織全体に伝えて実施するため、スピーディーに行動できるという特徴を持ちます。
ボトムアップとの違い
上層部のみで意思決定を行うトップダウンは、組織全体の方針が統一しやすくなります。また、方針の一貫性を保ちやすいという面もあるでしょう。従業員は上層部の決定に従って動くことになりますので、組織全体にブレが生じにくいとされます。上層部と従業員が意思統一できれば、組織一丸となって動くこともできるでしょう。
一方で、強引なトップダウンは、従業員の意欲を削いでしまうということもあります。指示待ち人間が増える可能性も否定できません。
ボトムアップを実施するポイントは?
ここからは、ボトムアップを実施するポイントを紹介します。次のことを意識しながら、ボトムアップを進めたいですね。
・意見が出やすい環境をつくる
ボトムアップには、現場や従業員の意見が必要不可欠です。意見が出やすい環境づくりは必須といえるでしょう。
・効率性を重視した仕組みづくり
従業員の意見を吸い上げ、精査するには時間と手間がかかります。それを踏まえて、効率性を重視した仕組みづくりをする必要があるでしょう。
・マネジメント人材の配置
ボトムアップでは、上層部と従業員の両方に理解があり、マネジメントできる人材が必要です。全体像を把握しながら、上層部とも現場ともコミュニケーションをとれる人材を配置しなければなりません。
最後に
現場の意見や声を吸い上げ、組織の意思決定に生かしながら全体をまとめる「ボトムアップ」。ボトムアップを採用して高い実績を上げている企業は多くあります。ボトムアップの導入で迷う場合は、成功事例を参考にするといいですね。
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