「英雄色を好む」の意味は?正しい使い方
ことわざは古い時代から伝えられたものが多く、現代にはあまりそぐわないと感じるものもあります。今回の「英雄色を好む」もそのひとつかもしれません。
意味と正しい使い方
「英雄色を好む」は、「偉業を成し遂げる男はエネルギッシュなので、女性関係でも積極的である」という意味の言葉です。「英雄」は能力・才能に恵まれた男性、「色」は女性を表します。「英雄、色(いろ)を好む」と区切るのが正しい読み方で、「英雄色(えいゆうしょく)を好む」と読むのは誤りです。
「英雄色を好む」のはっきりとした出典は定かではありません。ただ、1万円札でおなじみの福澤諭吉が1898年に出版した『福澤先生浮世談』の中で用いられていることから、少なくとも明治時代以降には日常語として広まっていたと考えられます。
なお、「英雄色を好む」は基本的に他人に対して使う言葉であり、自分から「英雄色を好むと言うように女性にだらしなくても仕方ない」などと使うのは正しくありません。
例文1
歴史上の人物には複数の女性と子どもをもうけたりと、「英雄色を好む」を体現する生き方が多い。
例文2
うちの社長が会社をここまで大きくできたのは、良くも悪くも「英雄色を好む」を地で行く人だったからかもしれないね。
例文3
「英雄色を好む」を気取って複数の女性をぞんざいに扱うのは政治家として命取りだぞ。
「英雄色を好む」の類義語
「英雄色を好む」の類義語には、男性の放埓(ほうらつ/お金や女性関係にだらしがない)ぶりを肯定する言葉が少なくありません。「英雄色を好む」の類語をチェックしていきましょう。
類語1「英傑(えいけつ)色を好む」
「英雄色を好む」とほぼ同じ意味の言葉です。「英傑」とは「能力や才能が人並はずれて優れている人物」を表す言葉。飛びぬけた才能を活かして機転を利かせられる人、という意味ですね。
英雄と英傑の違いは、評価するポイントです。英雄は「大きなピンチやターニングポイントを乗り越えて偉業を成し遂げる人」というニュアンスがあり、達成した偉業がより注目されます。一方、英傑の場合、飛び抜けた能力や才能のほうがクローズアップされます。
とはいえ、英雄も英傑も現代ではほとんど区別されないため、同じ意味で使っても問題ありません。
類語2「浮気は男の甲斐性」
こちらも男性のだらしない女性関係を肯定する言葉です。「甲斐性」とは男性の経済力や根性を表し、昔は「甲斐性のある男性=頼りがいがある」とされてきました。昭和から平成初期のテレビドラマでも、夫に浮気された女性に姑が「浮気は男の甲斐性だから仕方ないよ」と慰めるシーンがたびたび出てきます。「浮気は男の甲斐性」は男性の奔放ぶりを肯定するだけでなく、男性の遊びに不寛容な女性を戒める言葉としても使われていたのです。
令和の基準で考えると信じられませんが、これらの言葉が死語になりつつあるのは世の中として健全なのかもしれませんね。
類語3「艶福家(えんぷくか)」
「多くの女性から慕われ、愛されている男性」を表す言葉です。「艶」とは女性との色恋や情事を意味します。「英雄色を好む」が時として男性の奔放ぶりを揶揄(やゆ)する言葉であるのに対し、艶福家は「たくさんの女性から愛されるほど人徳のある男性」というニュアンスで使われます。
「英雄色を好む」の対義語はある?
「英雄色を好む」にはことわざとしての対義語はありませんが、「女性との遊びを好まない」というニュアンスであればいくつかの対義語が挙げられます。
一途
ひとりの女性を長い間思いつづけるという、何ともロマンティックで純粋な日本語です。恋愛だけでなく仕事や趣味でも、「一度心に決めた道を突き進む」様子を表す言葉として使われますよね。
堅物(かたぶつ)
頑固で融通が利かず、冗談ひとつ通じない人をからかう言葉です。このタイプの人は恋愛のような「軟派」なことには一切目もくれず、本来の仕事にただただ没頭します。趣味らしい趣味もなく、休みの日も仕事のことばかり考えて、はたから見ると「一体何を楽しみに生きているんだろう」と思ってしまう人かもしれませんね。
ストイック
英語では禁欲的という意味で、日本では「自分のやるべきことだけを黙々と続ける人」というニュアンスで使われます。プロ野球選手やアスリート、タレントなど、ひとつの世界でトップを極める人にはこのタイプが少なくありません。努力や真面目さを好む日本人にとっては相性が良いタイプと言えます。
時代にはそぐわないけれど、とても有名な言葉!
「英雄色を好む」というやや古い時代の言葉。令和の時代にはちょっとそぐわないかもしれませんが、聞き馴染みのある有名な言葉でもあります。時代とともに淘汰されていく言葉かもしれませんが、知識として、また過去の遺産としても覚えておくと良いかもしれませんね。
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コマツマヨ
WEBサイトライティングをメインに、インタビュー、コラムニスト、WEBディレクション、都内広報誌編集、文章セミナー講師など幅広く活動。