「今際の際」って何? どう読む?
「今際の際」という言葉をご存じですか? あまり見聞きしない言葉なので、意味を知らないという方もいらっしゃると思います。「際」が二つ続くので、読み方もわからないかもしれません。
実は「今際の際」は、「死にぎわ」を意味する言葉。本記事では例文を交えながら、「今際の際」について使い方などを紹介します。
「今際の際」が表すのは「死にぎわ」
いまわ‐の‐きわ〔いまは‐きは〕【今▽際の際】
読み方:いまわのきわ
臨終の時。死にぎわ。「—に言い残す」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「今際」とは、もうこれ限りという時、つまり「死にぎわ」を意味します。「際」は、物事がそうなろうとするまさにそのときのこと。この世と別れる直前のときであることを表す言葉です。
読み方に注意
「今際の際」の読み方は、「いまわのきわ」。「今際」を「いまぎわ」、「際」を「さい」と読んでしまいがちですので、間違えないようにしたいですね。
「今際の際」はどんなふうに使う?
「今際の際」は、どのように使う言葉なのか見ていきましょう。まずは、「今際の際」を使う場面について紹介します。
「死」が関連するシーンで用いられる
「今際の際」は、人が生きている状態から、死んでいる状態に変わろうとしている瞬間を表す言葉です。そのため、臨終の時や、人が死にかかっているとき、死が目前に迫っているときなどに使うことが多いでしょう。
具体的な使い方を紹介
「今際の際」の例文を見ていきましょう。
《例文》
・祖父が今際の際に残してくれた言葉は、今も私の支えとなっています
・今際の際に後悔することがないよう、やりたいことをどんどんやっていきたい
・苦しい闘病生活を送っていた父だが、今際の際は安らかな顔を見せてくれた
・病院に到着したとき、すでに祖母は今際の際をさまよっている状況でした
・母が今際の際に伝えたのは、家族に対する感謝の気持ちだった
例文は、いずれも死の間際の様子を表しています。
会話で使う場合は?
「今際の際」を会話で使う場合を見ていきましょう。リビングで夫婦が話しています。
妻「お向かいのおばあちゃん、一昨日亡くなられたそうよ」
夫「最近姿を見かけないと思っていたら…。このあいだまで元気そうだったのに、わからないもんだな」
妻「検査のために入院されたんだけど、検査前に急に悪くなられて、そこからあっという間だったらしいわ。でも、ご家族は今際の際に間に合ったそうよ」
夫「そうだったのか。亡くなられたのは残念だが、ご家族が間に合ってよかった」
身近な人や、面識のある人が急に亡くなるというのは、めずらしいことではありません。その人が亡くなるとき、安らかだったことや、家族に看取られたことなどがわかると、どこか安堵するということも。会話例は、まさにそのことを話しています。
「今際の際」と似た言葉をチェック
ここからは「今際の際」と似た言葉を見ていきましょう。言い換えの表現として覚えておくのもいいですね。
「最期」
「最期」とは、命の終わるときや死にぎわを表す言葉。「さいご」と読みます。「今際の際」と同じ意味を持ちますので、言い換えの表現として使うことができるでしょう。
《例文》叔母の最期を看取ることができて、ホッとしています
なお、物事の一番終わりを意味する「最後」とは意味が異なります。誤って使うと、意味が通じないことがありますので、書き間違えや入力ミスに注意したいですね。
「今際の刻み」
「今際の刻み」は、「今際の際」と同義語。使い方も同じと考えていいでしょう。読み方は「いまわのきざみ」。
《例文》彼は波瀾万丈の人生を送ったが、今際の刻みは穏やかだったそうだ
「死にかけ」
もう少しで死にそうなことを表すのが「死にかけ」。この言葉も「今際の際」と近い意味を表すといえます。「死に掛け」「死に懸け」のように書くことがあります。
《例文》死にかけている子猫を見つけた日から1年、今ではすっかり元気になり、家族の一員です
「死に目」
死にぎわや臨終を意味する「死に目」も、「今際の際」と同じ意味を持ちます。「死に目にあえない」のように使う言葉です。
《例文》親の死に目にあえなかったことが、今も心残りだ
「今際の際」を英語で表すと?
「今際の際」を英語で表す場合、どのような表現になるのでしょうか? 2つ紹介します。
「verge of death」
「verge of death」は、生死の境を意味する英語。
《例文》My Father is living on the verge of death.
→私の父は生死の境にいる
「dying moments」
「dying moments」とは、今際の際を表す英語。
《例文》The patient in this room is in his dying moments.
→この部屋にいる患者は、今際の際にいます
「死」に関連する慣用句
ここからは、「今際の際」のような「死」に関連する慣用句を紹介します。
「死人に口無し」
「死人に口無し」とは、死んだ人は無実の罪を着せられても釈明することができないことや、死んだ人を証人に立てようとしても不可能であることを意味する慣用句。読み方は「しにんにくちなし」。ドラマや映画などのセリフに登場することがあります。
「死んでの長者より生きての貧乏」
死んで金持ちになるよりは、貧乏でも生きているほうが幸せであるということを意味するのが「死んでの長者より生きての貧乏」です。「しんでのちょうじゃよりいきてのびんぼう」と読みます。
「九死に一生を得る」
ほとんど命が助かりそうもないところを、かろうじて助かることを意味します。読み方は「きゅうしにいっしょうをえる」。大事故を逃れたり、災害に巻き込まれたが助かったりした場合に用いられる表現です。
「人は死して名を留む」
人は死後にもその偉業によって名を後世に残すという意味。読み方は「ひとはししてなをとどむ」。立派なことをすることで、死んでも名前が残ることを表す慣用句です。
「生き身は死に身」
この世に生きているものは、必ず死ぬものであるということ。「いきみはしにみ」と読みます。誰もが避けられないのが「死」であることを表しています。
最後に
「今際の際」について、意味や読み方、使い方、似た言葉などをまとめました。死が目前に迫っているときを表す言葉のため、日常で頻繁に使うことはないかもしれません。しかし、意味や使い方は把握しておきたいですね。似ている表現には「最期」「死にかけ」「死に目」などがあります。「今際の際」を言い換えたい場合に使うことができるでしょう。
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