目次Contents
この記事のサマリー
・「舌を巻く」には、感嘆すること・圧倒されて言葉を失うことという意味がある。
・類語には、「感心」、「目を見張る」、「脱帽」、「感嘆」などがある。
・英語では、“be filled with admiration for〜” や “be astounded at〜” が近い意味。
誰かの行動や才能に「思わず感心してしまう」… そんな瞬間、ありますよね。例えば、同僚のプレゼンが完璧だったときや、友人の気配りに感動したとき。そんな場面でぴったりなのが、「舌を巻く」という表現です。
一見すると古風に聞こえる言葉ですが、実は日本語の豊かな感情表現が凝縮された慣用句。この記事では、「舌を巻く」の意味と使い方、語源、そしてビジネスでも自然に使える例文を紹介します。
「舌を巻く」とは? 意味と使い方の基本をおさらい
まずは、「舌を巻く」という言葉の意味から押さえていきましょう。
意味1:驚くほど優れていて感心する
「舌を巻く」は、相手の技量や成果があまりにも優れていて、感心する・驚くという意味で使われます。辞書では次のように説明されていますよ。
舌(した)を巻(ま)・く
あまりにもすぐれていて、ひどく驚く。感嘆する。「妙技に―・く」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
例えば、「彼女の段取りのよさには舌を巻いた」というように、ポジティブな評価を込めた使い方が一般的です。
意味2:相手に圧倒されて言葉を失う
もうひとつの意味として、相手に言いこめられたり、威圧されたりして黙ってしまうという使い方もあります。
例えば『平家物語』には「しやうさいもおそれて舌をまき」とあり、権威におそれをなして言葉を失う様子を表しています。
こちらの意味については、「あまり馴染みがない」「初めて聞いた」という人も多いかもしれませんね。この機会に、この意味も押さえておきましょう。
「舌を巻く」はどんな場面で使える?
「舌を巻く」は、フォーマル・カジュアルのどちらにもなじむ便利な表現です。ビジネスシーンでは「舌を巻く成果をあげた」など、能力を高く評価する文脈に適しています。
一方、日常会話では「彼の料理の腕前には舌を巻いた」など、親しみを込めながら感心を表せます。

「舌を巻く」の使い方と例文集【ビジネス・日常別】
実際の文脈でどう使えば自然に響くのか? ビジネス、会話、SNSなどシーンごとに具体例を紹介します。
ビジネスシーンでの使い方
「舌を巻く」は、上司や同僚を評価するときに使うと好印象です。
例:「部下の成長スピードには、上司も舌を巻いた」
また、「取引先の新事業に舌を巻いた」といった使い方も、企業の評価を表すときに自然です。
日常会話・SNSでの使い方
カジュアルな場面では、驚きと感心をやわらかく伝える表現として使えます。「彼のセンスのよさには毎回舌を巻く」「あの店の接客に、思わず舌を巻いた!」など、SNSでも自然です。
日常会話でも「すごいね!」を言い換えたいときに変えたいときにぴったり。会話に知的な響きを加えたいときの一言として覚えておくと便利です。
誤用・注意点
「舌を巻く」は、「悪い驚き」の意味では使いません。例えば、「あまりの失敗続きに舌を巻いた」というのは適さないので注意しましょう。
あくまで「優れていて感心する」ポジティブな場面で使います。
「舌を巻く」の類語・言い換え表現
同じような意味を持つ表現を知っておくと、語彙力が一気に広がります。それぞれの言葉の微妙な違いや使い方も整理しましょう。
「感心」・「脱帽」
「感心する」は、相手の行動や成果に心を動かされること。「脱帽」は、相手の能力に敬意を示し、感服することを表す言い回しです。どちらも「舌を巻く」と同じく、優れたものに対する肯定的な驚きや感嘆を伝える言葉です。
ただし、「感心」は文脈によっては「呆れる」という逆説的な使い方をすることもあります。例えば「よくもそんな言い訳ができると、感心する」といった場合は、皮肉を込めた表現になるため注意が必要です。
例:「彼の冷静な判断力には脱帽した」
「目を見張る」・「言葉を呑む」
「目を見張る」は、思わず目を見開くほど驚くこと。一方「言葉を呑む」は、感動や衝撃で言葉を失うという意味を持ちます。
いずれも「舌を巻く」と同様に強い驚きを表しますが、ポジティブな驚きに限定されない点が異なります。例えば、「あまりの惨状に目を見張った」「信じられない展開に言葉を呑んだ」のように、ネガティブな状況でも使えるのが特徴です。
例:「彼女の成長に、誰もが目を見張った」

「驚嘆」・「感服」
「驚嘆」は、非常に素晴らしいものに驚き感心すること。「感服」は、心から感心をし、尊敬の念を抱いたときに使います。
例:「その的確な判断力と行動力には、ただただ感服するばかりだ」
英語で「舌を巻く」はどう言う?
「舌を巻く」と同じように「感心する」「驚嘆する」という気持ちを伝える言い回しは、英語にもいくつかあります。例えば、“be filled with admiration for”や“be astounded at”などが近い表現です。
例文:I was filled with admiration for her presentation.
(彼女のプレゼンには心から舌を巻いた。)
例文:Everyone was astounded at his quick decision-making.
(彼の判断の早さには誰もが舌を巻いた。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)

「舌を巻く」に関するFAQ
ここでは、「舌を巻く」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「舌を巻く」の意味は?
A. 2つあります。1つ目は感嘆すること。2つ目は圧倒されて言葉を失うことです。
Q2. 「舌を巻く」をビジネスで使っても失礼になりませんか?
A. 問題ありません。
ただし、「脱帽」や「感服」を使った方が相手に敬意を示せるでしょう。
Q3. NGな使い方は?
A. 「悪い驚き」にはあまり使いません。
あくまで「優れていて感心する」ポジティブな場面で使うのが一般的です。
最後に
「舌を巻く」は比喩で、「予想以上に優れていて、非常に驚く」ことを表します。会話のなかで使う機会は少ないかもしれませんが、日記やレビューなどで使うのはとってもおすすめです。「すごい!」や「びっくりした!」と言うよりもより感動したことが伝わるでしょう。
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