目次Contents
この記事のサマリー
・「的を得た」は、「的確に要点をとらえる。要点をしっかりとおさえる」という意味。
・本来の言い方は「的を射る」。
・英語では“be right to the point”や“hit the nail on the head”などが相当。
ビジネスシーンで見聞きする「的を得た発言」という言葉。正しい表現なのか迷ったことはありませんか? 「的を射る」という言葉もありますが、どう違うのでしょう?
この記事では、辞書や調査結果をもとに、「的を得た」の意味と背景を、わかりやすく解説します。
「的を得た」とは? 意味・由来・歴史をひもとく
「的を得た」という表現は正しいの? それとも誤用なの? という疑問は根深いもの。まずは、この言葉の意味や背景について見ていきましょう。
「的を得た」は正しい? 誤用? 辞書による見解を紹介
「“的を得た”って、間違いなのかな?」と迷った経験がある人も多いのではないでしょうか?
結論から言うと、「的を得た」は辞書にも掲載されています。例えば『日本国語大辞典』(小学館)には、「的を得る=的確に要点をとらえる。要点をしっかりとおさえる」と明記されています。
1970年に出版された高橋和巳さんの小説『白く塗りたる墓』にも、「よし子の質問は実は的をえていた」という形で使われています。
一方で、『デジタル大辞泉』(小学館)では、「本来の言い方は『的を射る』である」と補足があり、文化庁の「国語に関する世論調査」でもこの点が問われています。例えば2003年の調査では「的を得る」が多数派(54.3%)だったのに対し、2012年には「的を射る」が多数派(52.4%)へと逆転しています。
このように、「的を得た」という言い回しはかつて誤用とされることもありましたが、現在では辞書でも記載のある表現となっており、時代とともに受容されてきた言葉であることがわかります。
参考:『日本国語大辞典』、『デジタル大辞泉』(ともに小学館)
「当を得る」との関係性
「当(とう)を得る」という言葉をご存じでしょうか? これは古くから使われている表現で、「理にかなっている」「要点を押さえている」といった意味を持ちます。
この「当を得る」が混同の発端になったと考えられます。もともと別の言葉である「的を射る」と、意味や構造が似ていたことで、「的を得る」へと変化していったのではないでしょうか。

どう使う?「的を得た」の使い方と注意点
言葉は時代とともに変化します。現在、「的を得た」はどのような文脈で使われているのか? その可否や注意点を実例とともに解説します。
ビジネスシーンでの使用例を紹介
日常会話だけでなく、ビジネスシーンでも「的を得た」という表現はよく見聞きします。例えばインタビューなどでは、「的を得た質問ですね」といった形で用いられ、相手の核心を突くような発言や問いかけに対して賞賛の意を込めて使われています。
「的を得た」を避けたほうがいいケースとは?
とはいえ、「的を得た」をどんな場面でも使っていいかというと、そうとは言い切れません。例えば、ビジネス文書や学術論文のように正確さが求められる場面では、本来の言い方である「的を射る」の方が推奨される傾向にあります。
理由として考えられることは、「的を得た」が誤用だと考える人が一定数いるため。たとえ意味が伝わったとしても、「この人、日本語の使い方が曖昧だな」と思われる可能性があるためです。
特に、役職者へのメールや、外部に提出する資料など、相手にきちんとした印象を与えたい場面では、「的を射る」を選んでおくのが無難です。
「的を得た」の類語・言い換え表現ガイド
使い方に迷ったとき、他の表現で言い換えられると便利ですね。ここでは、「的を得た」と近い意味を持つ言い換え表現を紹介します。
「核心を突いた」「的確な」
「的を得た」に似た言い回しには、「核心を突いた」「的確な」などが挙げられます。
「核心を突いた」は、対象の本質をズバリと指摘する言い方。議論や会議の場で、「その質問は核心を突いている」といった形で使われます。
一方、「的確な」は、広く一般的に使える表現。例えば「的確なアドバイス」や「的確な対応」など、ぴったりと当てはまり、間違いのないことを表します。
SNSでもスマートに! 使える気の利いた表現集
SNSやカジュアルな会話の中でも、「的を得た」に近い意味の表現をスマートに使えると好印象。
例えば、少しフランクに表現したい場合は「いいとこ突いてる!」「さすが、話が早いね」などの口語表現も有効です。

英語で「的を得た」をどう言う?
「的を得た」を英語表現するなら、“be right to the point”や“hit the nail (right) on the head”などが適しています。
また、「的を得た発言」と言いたい場合は、“a relevant remark”と表現します。
例:
Her comment was right to the point.(彼女の発言はまさに要点を突いていた。)
You really hit the nail on the head.(まさにその通りだね。)
That was a very relevant remark.(非常に的を得た発言だった。)
「的を得た発言」ができる人になるための言葉トレーニング
言葉の選び方ひとつで、伝わり方は変わります。ここでは、「的を得た」発言ができるようになるための習慣や思考術を提案します。
「言い換え力」を育てる|日常でできる訓練法
「この言葉、ちょっと強すぎるかな?」「もっと伝わりやすい表現はないかな?」と考える習慣が、的を得た発言への第一歩です。
おすすめは、日常的に「言い換えメモ」をつけること。例えば、SNSで見かけた印象的な言い回しや、上司や同僚のフィードバックの言葉などを、スマホにストックしておくと、自分の語彙の引き出しがぐっと広がります。
さらに、ニュースや記事を読んで要約してみるのも効果的。「どうすればこの内容を30秒で伝えられるか?」と意識することで、言葉の精度が鍛えられます。
会話で「ズレない発言」をするには?
「的を得た発言」とは、ただ正しい情報を言うだけではありません。相手の立場や気持ち、場面の空気を読み取った上で、「今、これを言うべき」という判断ができているということ。
例えば会議中に、議論がやや脱線気味になったとき。「それって、最初の目的から少しずれていませんか?」ではなく、「今のお話、とても興味深いですが、最初の議題に戻ってみるのもよさそうです」と切り出せば、角が立たずに軌道修正できるでしょう。
ズレない発言をするためには、言葉の内容だけでなく、相手の反応や流れを読む観察力も必要です。会話の中で、「どの言葉が伝わりやすかったか?」を振り返る習慣も、精度の高い言葉選びにつながります。
「一目置かれる言葉選び」をする人の思考習慣
的を得た発言をさらりとできる人には、共通した習慣があります。それは、「自分の考えを言語化するクセ」と「複数の視点で物事を見るクセ」です。
例えば、「あの発言はなぜ響いたのか?」「この一文の何が説得力を持たせているのか?」と、自分なりに言語分析をする人は、日々の言葉遣いにも磨きがかかります。
また、「私ならこう言う」「相手ならどう受け取るか」といった視点のスイッチが自然にできる人は、相手にとって心地よく、意図が的確に伝わる言葉を選ぶのが上手です。
日々のちょっとした気づきをメモしたり、発言に対してフィードバックを求めるクセをつけるだけで、言葉の精度は大きく変わっていきます。

「的を得た」に関するFAQ
ここでは、「的を得た」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「的を得た」は本当に間違いではないのですか?
A.辞書にも掲載されている表現で、誤りではありません。
ただし、本来の言い方は「的を射る」です。
Q3. 「的を得た」はどんな場面で使うと効果的ですか?
A. 「発言や意見が本質を突いている」「要点を的確に捉えている」と伝えたいときに使うと効果的です。
例えば、「的を得た指摘でした」「的を得たコメントだった」など、相手の発言を肯定的に評価する際にぴったりの表現です。
Q3. NGな使い方は? 気をつけるべきシーンはありますか?
A. 「的を得た」はいまだに「誤用だ」と考える人がいるため、公式文書・論文・目上の人への報告書などでは「的を射る」を使った方が無難です。
最後に
「的を得た」という言葉ひとつにも、背景には辞書の見解や歴史的変遷、使い方のゆれが存在します。言葉は生き物であり、日々変わっていくものです。
この記事を通して、言葉は「正しさ」だけでなく、「伝わり方」や「相手との関係性」も考慮して選ぶことが大切だと感じていただけたのではないでしょうか。
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