目次Contents
この記事のサマリー
・「所感」とは「心に感じたこと」を意味します。
・「感想」と「所感」との違いは、「所感」が文章語だという点です。
・「所感」は「感じたこと」、「所見」は「見て判断したこと(多くは専門的立場から)」を指します。
「所感」という言葉、ビジネス文書や報告書などで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか? 「感想」と似ているようで、少し改まった印象を持つこの語ですが、もともとは仏教語であったりします。
この記事では、「所感」の意味から、「感想」や「所見」との違い、そして実務での書き方までを丁寧に解説します。
「所感」とは何か? 意味を確認
まずは「所感」の意味を確認し、確かな土台を作ることから始めましょう。
語源・歴史的変遷から見る「所感」
「所感」という言葉には、現代の感覚では見落としがちな、仏教語としての深いルーツがあります。『日本国語大辞典』(小学館)によれば、「所感」は元々、前世の行為がその結果としてもたらすものを意味する仏教用語でした。
また、16世紀の文献では「取得すること」、「現物を得る」という意味で用いられた例もあります。
さらに、近代文学作品では現在に近い意味、すなわち「心に感じたこと」「感じるところ」として使われるようになりました。芥川龍之介が『手巾』で「今日の事件を材料にして、所感を書いて送る」と記しているように、「所感」は時代の中で変化を重ねながら、現代のビジネスシーンへと根付いてきたことがわかります。
現在使われている「所感」の意味を確認
現代日本語において「所感」は、どう定義されているのでしょうか? まずは、『デジタル大辞泉』(小学館)で確認しましょう。
しょ‐かん【所感】
1 事に触れて心に感じた事柄。感想。「―を述べる」「年頭―」
2 仏語。行為が結果としてもたらすもの。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
つまり、出来事や経験に触れたときに、自分の心に湧き起こった思いや印象のことを指します。現在、私たちがビジネス文書などで使うのは、「心に感じたこと」を意味する「所感」です。
主に、文章で使われる言葉になります。
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)

「所感」と「感想」や「所見」との違い
近い意味を持つ「感想」「所見」「見解」などとの違いを押さえておけば、齟齬を防ぐことができます。混同しやすい各語の使い分けを見ていきましょう。
「所感」と「感想」の違い
「所感」と「感想」は、いずれも「感じたこと」「思ったこと」という点で共通しています。大きな違いとしては、「所感」は文章語であるという点でしょう。
「所感」と「所見」・「見解」・「講評」との違い
「所見」「見解」「講評」といった言葉もよく使われます。これらの語との違いも理解しておくと、より適切に言葉を選べます。
所見
見た結果の判断や意見のこと。医師や上司など、ある程度の権限や専門的な視点を持つ人が使うことが多く、改まった場で使われます。
見解
ある問題に対しての「考え方や判断」。十分に考え、判断した結果まとめられたものをいいます。政府など公的機関の発表などで用いられることが多いでしょう。
講評
他者の成果物(レポート・プレゼン・作品など)に対して、指導的な立場から理由を挙げ批評することを指します。
つまり、「所感」は経験者自身の内面に湧いた感情・思考を述べる語であり、「所見」や「見解」は客観的・専門的視点からの評価や判断という違いがあります。
参考:『デジタル大辞泉』、『使い方の分かる 類語例解辞典』(ともに小学館)

実務で使う! 所感の書き方&構成テンプレート
ここからは、実際に「所感」を書く際の構成設計・思考プロセスを段階的に解説します。
所感記述の基本構成(PREP法+改善提案型)
「所感」を書くときにありがちな悩みが、「何から書けばいいのか分からない…」というもの。そこでおすすめしたいのが、PREP法を活用した書き方です。
PREPは、以下の4つの流れで文章を構成する方法です。
P(Point)=結論
R(Reason)=理由
E(Example)=具体例
P(Point)=まとめ・再確認
この構成を用いることで、読み手に伝わりやすく、かつロジカルな所感に仕上がります。例えば、研修を終えた後の所感なら以下のように展開できます。
「本研修を通じて、チーム全体での課題共有の重要性を再認識しました(Point)
特に、共通認識を持たずに各自が動いていたことで、作業効率が落ちる場面があったためです(Reason)
今回の演習では、初めて事前に目的共有した結果、円滑な進行が可能になりました(Example)
今後も日常業務において、タスクの背景や目的を丁寧に伝えることを意識していきたいと考えています(Point)」
さらにビジネスレポートでは、「そこから何を改善しようとしているのか」「今後の行動につながるのか」という視点を加えると、より価値ある所感になります。
シーン別テンプレートと例文集(報告書・日報・研修など)
「所感」を使うシーンはさまざま。以下に、よく使われる3つの場面別テンプレートと例文を紹介します。
【報告書・会議後レポート】
【テンプレート】
〇〇を通じて、△△を実感した。理由は××である。今後の業務においては□□を意識したい。
【例文】
本日の会議を通じて、情報共有のタイミングが業務の効率化に直結することを改めて実感しました。議題の進行がスムーズだった背景には、各自が事前に議題に目を通していたことがあると感じました。今後の資料提出時には、要点を明確にすることで会議全体の質向上に貢献したいと考えています。
【日報・週報】
【テンプレート】
今日(今週)対応した〇〇業務を通じて、△△を感じた。特に××の場面で□□に気づいた。
【例文】
本日の顧客対応業務を通じて、「相手の目的を汲み取ること」の重要性を再認識しました。特に、午後の電話対応ではお客様が求めることと表現が一致しておらず、丁寧に聞き取ることで意図を正しく把握できました。次回からは、質問の投げ方にも工夫を加えて対応したいと思います。
【研修・セミナー後の報告】
【テンプレート】
研修内容の中で最も印象的だったのは〇〇である。その理由は△△であり、今後の実務では□□に生かしたい。
【例文】
本日の研修では、「主体性を持って課題に向き合う姿勢」が繰り返し強調されていた点が印象に残りました。これまでの業務では指示を待つ姿勢になっていた場面が多く、今後は、自らタスクを提案・進行する意識を強く持ちたいと思います。チームの中での発言頻度も増やしていく予定です。
チェックリスト & NGパターン
所感を提出・共有する前に、以下のチェックリストを活用して、内容の質を確認してみてください。
所感作成チェックリスト
□ 結論が明確になっているか?
□ 感じた理由や背景が述べられているか?
□ 具体的な出来事・事例が含まれているか?
□ 今後の業務や行動につながる視点があるか?
□ 感情だけに偏っていないか?
NGパターン例
「楽しかったです」「勉強になりました」だけで終わってしまう → 内省や行動に結びつかないため、評価されにくい
「特にありません」→ 参加姿勢を疑われることもある
「所感として思いました」などの重複表現 → 冗長な印象を与える
「所感」は言葉選び以上に、「どう考え、どう動くか」が問われる場です。上記のポイントを意識するだけで、伝わる文章にぐっと近づけます。

「所感」に関するFAQ
ここでは、「所感」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1:「所感」とは、「感想」と同じ意味ですか?
A1:ほぼ同じ意味です。「所感」は主に文章語として使われています。
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)
Q2:「所感」と「所見」の違いがいまいち分かりません。
A2:「所感」は「感じたこと」、「所見」は「見て判断したこと(多くは専門的立場)」を表します。
Q3:NGな使い方ってありますか?
A3:「所感として思いました」「所感として感じました」は冗長なので避けましょう。
最後に
ビジネスで求められる「所感」は、単なる「感想」ではなく、経験から学び、次につなげるための「思考を伴う表現」でしょう。適切な構成で伝えることで、文章に説得力と知性が加わります。この記事が、今後の一助となれば幸いです。
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