「随時」とは、2つの意味を持つ言葉
ホームページなどでよく見かける「随時受付中」という文言。この「随時」という言葉の意味がつかめず、考えてしまうことはありませんか? 「随時」と書いてあっても、具体的にいつ問い合わせをすればいいか、わかりませんよね。
「随時」は、あらゆるシーンで頻繁に登場する言葉です。意味や使い方を知らないと、相手に負担をかけるという可能性も。まずは意味や使い方を見ていきましょう。
「随時」の意味を辞書で確認
ずい‐じ【随時】読み方:ずいじ
1:適宜な時に行うさま。その時々。「随時巡回する」
2:日時に制限のないさま。好きな時にいつでも。「随時入院することができる」
《デジタル大辞典》(C)Shogakukan Inc.より引用
「随時」は、大別すると「適宜な時に行う」や「日数の制限がないさま」という2つの意味を持つことがわかりました。その違いについて知っておきましょう。
「随時」とはどう使う? 例文を紹介
ここからは「随時」の具体的な使い方を見ていきましょう。意味別に例文を使って紹介します。参考にしてくださいね。
「適宜な時に行う」の意味で使うには
《例文》
・「利用者が増えた場合は、随時巡回し、清掃を行う」
・「状況が変化したら、随時報告するように伝えた」
その場の状況に合わせて、必要だと判断した場合に行動することや、その時に応じて行動するような場合に、「随時」を使って表現します。
「日数に制限のないさま」の意味で使うには
《例文》
・「スクールに問い合わせたところ、随時見学可能という返答があった」
・「質問については随時受け付けますので、挙手でお知らせください」
・「このジムは福利厚生制度の提携先なので、随時利用できるようだ」
この場合の「随時」は、「あなたの好きなタイミングで対応や利用が可能」という意味になります。この2つの意味は、一見似ていますがニュアンスは異なるので、2つの違いを把握しておきたいですね。
「随時」と表記してあっても、注意すべきこと
「随時見学可能」や「随時問い合わせ可能」と表記されていると、自分の好きなタイミングで見学や問い合わせをしてよいということになります。だからといって、365日24時間いつでもOKというわけではありません。
「随時」と表記していたとしても、相手にも都合があります。見学や問い合わせは、営業時間内に行うというのがマナー。時間外に対応してくれなかったと怒るのはマナー違反であると心得ておきましょう。
「随時」と似た言葉、意味や違いを確認
ここからは、「随時」と似た言葉について見ていきましょう。ニュアンスの違いがあればそれを把握し、適切に使い分けてくださいね。
「適宜」
「状況によく合っていること」や「便宜に従うこと」などの意味を持つ「適宜」。「随時」と似ているように感じますが、「適宜」には、「自分の好きなタイミングで行う」というニュアンスはありません。「適宜」は、状況に見合った臨機応変な対応という意味合いになるため、その点が「随時」と異なります。
《例文》
・「顧客からの申し出があれば、適宜対応してください」
「都度」
「都度」は、「毎回」や「何かしらの物事が行われるたびごと」を表す言葉。「随時」よりその頻度は上がると把握しておきましょう。たとえば、「都度報告」と指示された場合は、毎回報告する、何かを行うたびに報告するという解釈になります。
《例文》
・「問題が発生したら、その都度解決に向けて話し合った」
「逐一」
「逐一」とは、「何から何まで」や「すべて」という意味を持ちます。たとえば「逐一報告」を指示されたら、起こったことをすべて報告しなければならないと考えましょう。また、要約して簡潔に報告するというよりは、「起こったことの詳細を事細かく、すべて」というニュアンスを含みます。
《例文》
・「慎重な対応が求められる案件と判断し、担当者に逐一報告するよう指示した」
「順次」
「順序に従い、物事を行う」という意味を持つ「順次」。目の前にある物事から順に対応するという意味合いになります。
《例文》
・「到着された方は順次着席し、持参書類の入った封筒を机の上に置いてください」
社会保険の「随時改定」って?
ここからは「随時改定」について紹介します。社会保険料によく使われる言葉ですが、改定が「随時」というのはどういう意味になるのでしょうか?
「随時改定」とは、保険料に関すること
昇給などの理由で給与に大きな変動が生じた場合、社会保険料の「随時改定」の手続きが必要になります。社会保険料とは、健康保険や厚生年金の保険料のこと。給与を元に算出される仕組みのため、給与額の変動に影響を受けます。
と言っても、残業代が発生したり、臨時手当の支給などで給与が増えたりというケースは、「随時改定」の手続きは不要。「随時改定」の手続きが必要になるのは、次の条件をすべて満たす場合です。
・昇(降)給などで、固定的賃金に変動があった時
・固定的賃金の変動月以後継続した3か月の間に支払われた報酬の平均月額を標準報酬月額等級区分にあてはめ、現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた時
・3か月とも報酬の支払基礎日数が17日以上ある時
つまり、「年1回の改定」と「給与の金額に大きな変動が生じた時」は、「随時改定」の手続きが必要になるということ。次のようなケースが生じた場合は、対象になる可能性があります。
・昇給もしくは降給
・日給から月給になるなど、給与体系の変更
・住宅手当や役付手当など、固定的な手当ての追加や、支給額変更
・基礎単価や歩合率の変更など
「随時改定」を忘れた場合、どうなる?
「随時改定」を忘れた場合、給与の変動が社会保険料に正しく反映されません。そうなると、社会保険料を多く負担している、もしくは不足が生じるということになりますので、注意が必要です。
「随時改定」が反映されていないと気づいたら、その時点で年金事務所や健康保険組合に問い合わせ、指示に従い手続きをしてください。場合によっては、従業員負担分が増えることになりますので、速やかな対応を心がけましょう。
出典:
日本年金機構 |随時改定(月額変更届)
全国健康保険協会|標準報酬月額の決め方 | こんな時に健保
最後に
いろいろなシーンで使われる「随時」は、「その時々」や「好きな時にいつでも」を表す言葉。「適宜」や「都度」とはニュアンスが異なりますので、違いについて把握しておきたいですね。
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