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「出精値引き」の読み方と意味
「出精値引き」という言葉をご存じですか? 建設業などに携っている方であれば、一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、この「出精値引き」によって経費を大幅に抑えられる場合があるのです。本記事では「出精値引き」に関して、意味や使わる場面、他の値引きとはどう違うのかを解説していきます。
「出精値引き」は、<しゅっせいねびき>と読み、意味は「経費の見積を出した側が、自らの努力によって値引きすること」。「出精値引き」は、企業側が顧客との関係維持を目的とした場合に用いられる事が多いです。また、「これ以上の値引きは難しいです」という意味合いを込めている場合もあります。
「出精値引き」はどんな時に使われる?
上述したように、「出精値引き」は、顧客との良好な関係を築くために、商品やサービスの質を下げずに行う、企業努力による儀礼的な値引き行為です。「頑張って値引きしました」とアピールする目的で使われます。
一般的に内訳などはなく、見積り全体から端数を丸めて切りの良い金額にする方法や、原価に関係なく、一部利益をサービスする方法などが企業によって様々です。採算がとれるギリギリのラインで行うため、一般的には高額な値引きになることはありません。
無理な「出精値引き」をしてしまうと、逆にサービスの質を下げてしまう可能性があり本末転倒。また、あまりに合理性に欠く大幅な値引きなどは、顧客側から「なぜ最初からその値段で取引しないの?」と信用問題につながる可能性もあるため、お互いのすり合わせや認識が大切になります。
他の値引きと何が違うの?
「出精値引き」は、普通の値引きとは何が違うのでしょうか。「出精値引き」が、取引先への誠意を示すものとして、採算ギリギリのところまで値引きをする企業努力に対し、一般的な値引きは、提携値引きや特別キャンペーン、品質劣化や納期遅延など諸事情によるものになります。
見積書にはどうやって記載するの?
「出精値引き」は、見積書にどのように記載するのでしょう。「そのまま記載して大丈夫?」と疑問に思う方もいるのでは? ここからは、見積書への記載方法などについて解説します。
見積書とは何か
見積書は、取引先に対し商品やサービスを提供する前に金額や数量、工程や納期などの取引条件を提示するための書類です。見積書を作成することで契約内容を明確にし、取引先との認識のズレを解消します。そうすることで、高額請求などの取引先とのトラブルを避けることができるのです。
見積りはあくまでも想定される費用なので、契約後の追加変更やまた不測の事態による追加請求などが発生する可能性も。それも踏まえ、取引先は見積書の内容を見て契約を進めるか検討をし、お互いに見積内容に合意すれば契約締結に進みます。
値引きを記載する時の注意点
「出精値引き」に関し、取引先との認識の齟齬を避けるためには、記載方法のポイントも押さえておきましょう。
「出精値引き」を見積りのうちに追加する場合は、きちんと明記をする必要があります。値引き後の金額をいきなり記載しては、値引き前の価格がわからなくなってしまうからです。値引きした情報をあえて伏せたいといった事情がない限り、値引きした金額は明記しておくことをおすすめします。
「出精値引き」の記載方法
見積書に値引きを示す場合は「▲」か「―」を使用することが一般的です。日頃から取引をしている相手であれば、勘違いが生じる懸念はほとんどありません。しかし、初回の取引の場合は、見慣れない見積書のため勘違いしてしまう可能性があります。
他の記号や色を変えたりする場合もありますが、特別な決まりがないよう限りは「▲」か「―」のいずれかで記載するようにしましょう。
また、何の値引きであるかがわかるように、「出精値引き」であることを明確に記載します。理由を明確に記載することで、お互いの認識の齟齬を極力減らすことが可能です。提携値引きやキャンペーン値引き、また諸事情による値引きの場合も同様に記載しましょう。
無理やりな値引き要求は法律違反になる可能性も…
「出精値引き」は、取引先との関係を築くために企業側の自発的な行為です。もし取引先側から「来年も取引するので○○万円まけてくれない?」と要求があった場合の割引は、「出精値引き」とはいいません。取引先側から過度な値引きを求められた場合は、もしかすると下請け法に違反している可能性があります。
実際に違法と判断されるケースは、明らかに非合理な値引き額であった場合です。ですが、見積書からはそれが違法かどうかの判断がつきにくい場合がほとんど。場合によっては、公正取引委員会が間に入るといったケースも実際にはあります。
最後に
「出精値引き」は、企業側の努力による値引きのことです。顧客との良好関係を築くために行われるものですが、値引きしてくれるからといって、取引先側から無理やり値引きを要求すれば、法に触れてしまうケースもありますので注意しましょう。
見積書には、「出精値引き」と明記することが一般的。取引先にとっては値引きされることは嬉しいことですが、何の値引きかを明記しておかないと、後で認識のズレによってトラブルに発展してしまう可能性もあります。良好な関係を築くための「出精値引き」が、逆に関係悪化につながらないよう、見積もりの段階でしっかりとお互い確認するようにしましょう。
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