「金は天下の回り物」の意味
「金は天下の回り物」という言葉がありますが、何を意味するのかご存じですか?「お金が回るってなんだろう?」と不思議に思った人もいるかもしれませんね。
実はこの言葉、人を励ます際や、気持ちを切り替える際に使うことができるんです。また、戒めの意味でも使えますので、使い方をマスターしておくのもいいでしょう。
本記事では「金は天下の回り物」について、意味や使い方などを調べました。まずは、意味を見ていきましょう。
辞書の意味
金は天下の回りもの
読み方:かねはてんかのまわりもの
金銭は一つ所にとどまっているものではなく、今持っている者もいつか失ったり、今ない者もいつか手に入れたりする。金は天下の回り持ち。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
金銭は、常に世の中を巡っているものであるという意味を表す「金は天下の回り物」。この言葉が示すのは、次の2つです。
1:今はお金がないとしても、そのうちに巡ってくるから心配はいらない
2:今はお金があるけれど、いつ失うかはわからないから、気をつけないといけない
「1」は励まし、「2」は戒めの意味合いになりますよね。どちらの意味になるかは、前後の文脈や会話の流れなどで判断することになります。
また、「お金を使っても、回り回ってまた帰ってくるものだから、貯め込まずに使おう」という意味で使うこともあります。自分に向けて使うのはいいですが、他人に対して使うと、誘導のようなニュアンスを含むことも。あまり親しくない人に向けて使う際は、注意が必要です。
由来
「金は天下の回り物」の由来は、はっきりとわかっていません。明治時代の後半に記された『日本俚諺大全』(1906〜08)に、「金(カネ)は天下(テンカ)の廻(マハ)り物(モノ)」として登場しますので、この頃には知られていたことになります。
「金は天下の回り物」を使ってみよう
「金は天下の回り物」の使い方を見ていきましょう。まずは、注意点を紹介します。
注意点
「金は天下の回り物」を使う際、注意したいのが書き間違いです。「回り物」を「回し者」「周り物」とするのは誤用。このような言葉は存在しません。書くときはもちろん、PC入力などで変換ミスがないようにしたいですね。
例文:励ましの意味で使う場合
ここからは具体的な使い方を見ていきましょう。最初に、励ましの意味合いで使うパターンを紹介します。
《例文》
・今はお金がなくても、金は天下の回り物というし、きっと心配はいらないよ
・フリーランスになったばかりでお金がないとき、先輩が「金は天下の回り物というから気にするな。とにかくスキルを磨け」と、よく励ましてくれた
・投資で失敗して、予想以上にお金がなくなってしまった。口座の残高を見ると落ち込んでしまうが、金は天下の回り物というし、また巡ってくると信じよう
「金は天下の回り物」は、他人だけでなく自分を励ます際にも使います。今はお金がない、あるいはお金を失ってしまったという場合も、気持ちを切り替えて前向きに進むことの大切さを教えてくれる言葉です。
例文:戒めで使う場合
「金は天下の回り物」を戒めで使うパターンを見ていきましょう。
《例文》
・去年より収入が上がったからといって、散財してはダメだよ。昔から、金は天下の回り物というから、気をつけないといけない
・お金を粗末に扱うと、いつのまにかなくなってしまうわよ。金は天下の回り物というからね
・大金を手にした知人だが、ギャンブルにハマり、あっという間に使い切ったそうだ。金は天下の回り物とはこのことだろう
今は裕福でお金の余裕があったとしても、気をつけないと貧乏になってしまうということを表す例文を紹介しました。収入が上がったり、臨時で大金を手にしたりすると、舞い上がって散財してしまいがち。そうならないよう、「金は天下の回り物」であると意識したいですね。
「金は天下の回り物」の類語は
「金は天下の回り物」には、複数の類語があります。今回は、「金は湧き物」「金銀は回り持ち」の2つをピックアップしました。一緒に意味を見ていきましょう。どちらの言葉も、「金は天下の回り物」の言い換え表現として使えます。
「金は湧き物」(かねはわきもの)
「金は湧き物」とは、金銭は思いがけなく手に入ることがあるから、なくてもくよくよすることはないという意味。「金は天下の回り物」と近い意味を表す言葉です。
《例文》父がリストラされたとき、母は「金は湧き物。きっとなんとかなる」と言って、不安な顔は一切しなかった。
「金銀は回り持ち」(きんぎんはまわりもち)
「金銀は回り持ち」は、「金は天下の回り物」と同義。「金銀」はお金を表すと考えてください。金銭は流通し、とどまることがないことを表す言葉です。
《例文》お金がないときほど「金銀は回り持ち」と考えて、明るく過ごすようにしたい
「金は天下の回り物」の対義語は
「金は天下の回り物」の対義語も見ていきましょう。「金は片行き」を紹介します。
「金は片行き」(かねはかたいき/かねはかたゆき)
とかく金銭は有る者には次々と集まり、無い者にはいっこうに集まらないという意味の「金は片行き」。「金は天下の回り物」と反対の意味を表すといえるでしょう。「金と子供は片回り」と表現することもあります。
《例文》世の中を見ていると、金は片行きだと感じる。金持ちにはお金が集まり、貧乏人にはお金が寄ってこない
「金は天下の回り物」を英語で
「金は天下の回り物」を英語で表す場合の表現を紹介します。
Money comes and goes.
直訳:お金は来たり去ったりします
「come and go」で「行ったり来たりする」という意味になります。主語を「money」にすることで、「金は天下の回り物」となりますよ。外国人と交流する際や、海外で使えそうですね。
最後に
「金は天下の回り物」について、意味や使い方、類語、対義語、英語表現をまとめました。「金は天下の回り物」は、励ましや戒めの意味で使うことが多いでしょう。お金がない人を励ます際や、お金の使い方について注意を促したい場合に、たとえとして用いられています。ただし、使い方によっては、誤解が生じてしまうということも。他人に向けてこの言葉を使う際は、注意を払うようにしてください。
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