「虚々実々」と聞くとどんなイメージが思い浮かびますか? ビジネスでは「腹を読み合う」「駆け引きをする」という意味でも使われるため、意味や使い方を理解しておきたいですね。本記事では、類語や英語表現も合わせて解説します。
「虚々実々」の意味や読み方は?
「虚々実々」は、「きょきょじつじつ」と読みます。意味は、「相手の備えの堅いところを避け、すきをねらい、互いに計略や秘術の限りを尽くして戦うこと」。スポーツなどでよく用いられます。
また虚=嘘、実=真実という意味もあることから、商談などビジネスシーンでは、嘘と誠を取り混ぜながら「腹を読み合う」「駆け引きする」という意味合いで使われることが多いでしょう。ややニュアンスは異なりますが、策略や計略をめぐらすなど、手段を尽くすということでは共通しています。
辞書などを引くと、「虚虚実実」と表記されています。また、略して「虚実」とも表現しますよ。
使い方を例文でチェック!
ここでは、スポーツなど真剣勝負に対する例文とビジネスシーン等で使われる例文を紹介します。
1:「優勝候補同士、虚々実々の試合展開が楽しみだ」
どんなスポーツでも優勝候補同士の試合はワクワク、ドキドキしますね。互いに相手の得意や不得意を探り、策略を練り、「虚々実々」を尽くして試合に臨むことでしょう。
2:「格上に勝つとは! 虚々実々といえる見事な戦いぶりだったね」
まさかの勝利!「虚々実々」を使うことで、ガチンコ勝負というよりは、相手を研究し、策を練り、相手のすきを突きながらチャンスを待つような戦いぶりが連想できます。
3:「将棋では虚々実々の駆け引きが展開されます」
対局(将棋の対戦を行うこと)では、棋士は相手の心理や差し手、先の先までの展開を読んでいるといいます。まさに虚々実々という表現がふさわしいですね。
4:「今回の人事異動は虚々実々の結果らしいよ」
人事異動には、上層部の思惑や駆け引きが大きく関わることもあるようです。この例文は、それぞれが落としどころを探って決定した人事というイメージでしょうか。
5:「虚々実々の商談だったがなんとかまとまりました」
互いに腹の探り合いで難攻した商談が、ようやくまとまったという意味の例文です。
6:「政治家は虚々実々を使い分けるものだよ」
政治の世界は、計略と策略がはびこり、相手のすきを狙い、腹を探り合うという、虚々実々のすべてが凝縮している印象が強いですね。
7:「両者の虚々実々の応酬に思わず息をのんだ」
果たしてどの言葉が嘘で、どれが真実か。両者の白熱した議論の様子が伝わってきます。
類語や言い換え表現は?
「虚々実々」の類語に共通しているのは、計略を尽くす、駆け引きをするということ。代表的な言い換え表現は2つですが、どちらも「虚々実々」より人を操るという要素が強く、ネガティブな印象のある言葉といえます。
1:手練手管(てれんてくだ)
「人をだましてあやつる技巧・方法」のこと。手練(しゅれん)の一言で表すこともありますが、人をだますという同じような意味合いの言葉を重ねることで、意味を強調しています。
「彼女の手練手管に惑わされた」、のように男女間や恋愛感情において使われることが多いのは、語源が江戸時代の遊郭で、客をつなぎとめるためにあの手この手を使うという意味で使われたことにも関係しているのでしょう。
もちろん男女間だけではなく、「彼は手練手管を弄して出世した」「手練手管を使っても必ず成功したい」など、さまざまな場面で使うことができますが、いい印象の言葉とはいえないようです。
2:権謀術数(けんぼうじゅっすう)
「人をあざむく計略」のこと。権力闘争を描くドラマでは、「権謀術数渦巻く」などという表現がよく使われますよね。「計略の限りを尽くす」「駆け引きをする」という点で「虚々実々」と同じ意味です。
「〇〇部長は、権謀術数に長けた人物だよ」「勝ち抜くためには、権能術数を駆使する必要がある」など、きれごとだけでは済まない状況を表します。
英語表現は?
「虚々実々」は真剣勝負のときや、腹の探り合いに対して使われます。英語でも微妙な使い分けが必要ですが、ここではその代表的な表現を紹介しましょう。
政治や商売などで虚々実々の駆け引きをするという場合には、「wheel and deal」が使えます。
例文:He was wheeling and dealing around the globe.
(彼は世界中で虚虚実実の駆け引きをしていた)
最後に
「虚々実々」は、目的達成のために「計略の限りを尽くして戦う」という意味でした。スポーツやビジネスでも使われ、相手を研究し知力を尽くしての真剣勝負という意味では、ネガティブな印象はなくむしろ賞賛される場面も多いでしょう。
一方で、あまりにも虚と実を使い分ける人に対しては印象は悪いほうに傾き、使いこなすのが難しい言葉です。場面によって聞く人に誤解を与えないようにすることが大切ですので、適切に使えるよう、本記事を一つの参考にしてみてください。
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