「汚名」は返上? それとも挽回?
ドラマや小説などに登場することがある「汚名返上」。実生活やビジネスシーンでも使うことがあるかもしれません。似た言葉に「汚名挽回」がありますが、どちらを使うのが正しいのか、判断できずに困ることはありませんか?
本記事では「汚名返上」について、意味や使い方を紹介します。「汚名挽回」にも触れますので、チェックしてください。
「汚名返上」の意味
辞書で「汚名返上」を調べてみました。
【汚名返上】
読み方:おめいへんじょう
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
新たな成果を挙げて、悪い評判をしりぞけること。
「汚名」とは、悪い評判や不名誉な評判のこと。「返上」は、受け取ったものを返すことを表します。ついてしまった悪い評判があっても、努力でそれを退けることを表現する場合に用いる言葉です。
「汚名挽回」は誤用?
似た言葉である「汚名挽回」ですが、この言葉は誤りとする説があります。「挽回」は、失ったものを取り戻して、元の状態にすることの意。この意味だと、「悪い評判を取り戻す」ということになってしまいます。
しかし、辞書によっては、「元の良い状態に戻す」という意味があるとすることも。これだと「悪い評判をしりぞけて、元の良い状態に戻す」ことを示すため、間違いとは言えません。つまり、「汚名挽回」が誤用であるとは限らないのです。
こうしたことを踏まえると、ビジネスシーンやフォーマルな場では「汚名返上」を使う方が無難でしょう。
「汚名返上」の具体的な使い方
ここからは「汚名返上」の使い方を紹介します。例文を3つ挙げますので、参考にしてくださいね。
《例文1》負けっぱなしの弱小チームと言われているからこそ、この大会で汚名返上するぞ
「汚名返上」は「する」「できる」などをつけて使うことが多いでしょう。例文は、負けてばかりの弱小チームという「汚名」をなんとか返上しようとするさまを表しています。
《例文2》昨年酷評されて落ち込んだけど、今年は選考通過。汚名返上を果たせてホッとしている
「汚名返上」に「果たす」をつけて使うと、悪い評判を覆すことに成功したという意味になります。
例文は、昨年のリベンジを果たせたことを表した一文。努力の末に「汚名返上」ができて、安心しているさまを表しています。
《例文3》大きな失敗をした彼女はすさまじい努力を積み重ね、汚名を返上することができた
「汚名返上」は「汚名を返上」のように表現することもありますが、意味は同じ。使い方も大きくは変わりません。例文は、失敗のあと、大変な努力をして成功をつかんださまを表しています。
「汚名返上」に似た言葉
ここからは「汚名返上」に似た言葉を紹介します。言い換えの表現として把握しておくといいですね。それぞれの言葉の使い方も見ていきましょう。
「雪辱」
「雪辱」とは、何かしらの競技などで負けたことのある相手を破り、名誉を取り戻すことを意味する言葉。「せつじょく」と読みます。「雪辱を遂げる」「雪辱を果たす」のように使うことが多いでしょう。「汚名返上」と似た意味を持ちます。
《例文》次の試合で必ず雪辱を果たすと誓ったが、正直に言うと自信はない
「リベンジ」
英語の「revenge」がカタカナ語になり根付いた「リベンジ」は、競技で敗れた相手を打ち負かすことや、借りを返すことの意。「汚名返上」の言い換えとして使うことができるでしょう。ただし、報復や復讐という意味もありますので、その点は意識したいところ。使う際は、前後の言葉を工夫するなどして、注意を払いたいですね。
《例文》1学期はいい成績が取れなかったから、2学期はリベンジするぞ
「リターンマッチ」
プロボクシングなどで、タイトルを奪われた前チャンピオンが新チャンピオンに挑戦して行う試合のことを「リターンマッチ」と言います。一般的には雪辱戦と呼ばれることも。英語の「return match」がカタカナ語として浸透した表現です。シチュエーションを選びますが、「汚名返上」の言い換え表現として使うことができます。
《例文》リターンマッチまであと2週間、気を緩めることなく過ごそう
「臥薪嘗胆」
「臥薪嘗胆」は、目的を遂げるために苦心し、努力を重ねることを意味する言葉。「がしんしょうたん」と読みます。中国の書物『史記』が由来とされ、スピーチなどで使うことも。「復讐を心に誓う」というニュアンスを含むことがあります。
《例文》赤字が続いて閉店することになったが、臥薪嘗胆、学び直して再起するつもりだ
「名誉挽回」
何かしらの原因で失った名誉や尊厳、評判を取り戻すことを意味する「名誉挽回」は「めいよばんかい」と読みます。「汚名返上」と似た意味を持ちますが、「名誉挽回」は社会的評価や名誉の回復がメイン。「汚名返上」とは若干ニュアンスが異なります。
《例文》誤った報道により彼女の名誉は著しく傷つけられたが、彼女自信の力で名誉挽回を果たした
「汚名返上」の対義語は
「汚名返上」の対義語もチェックしていきましょう。「名誉毀損」「中傷」などが該当します。
「名誉毀損」
「名誉毀損」とは、公然と事実を指摘して人の名誉、すなわち社会的評価を傷つけることを表す言葉。「めいよきそん」と読みます。法律が関連する事柄で使うことが多いでしょう。他人の名誉や評価を傷つけますので、「汚名返上」とは反対の意味を表します。
《例文》彼が流した根拠のない話は、彼女に大きなダメージを与える明らかな名誉毀損だ
「中傷」
根拠のないことを言いふらして、他人の名誉を傷つけることを意味するのが「中傷」です。読み方は「ちゅうしょう」。
《例文》ライバル会社を中傷して蹴落とそうなんて、まともな会社のやることじゃない
最後に
「汚名返上」について紹介しました。新たな成果を挙げて、悪い評判をしりぞけることを意味する言葉ですが、「汚名挽回」と混同することも。「汚名挽回」を誤りとすることもあるため、ビジネスシーンでは「汚名返上」を使う方がいいでしょう。正誤があいまいな言葉を使うと、相手に意味が通じない、あるいは「言葉を正しく使えない人」と思われるかもしれません。それを踏まえて、言葉を適切に使いたいですね。
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